④11分01秒~15分00秒
神殿に着いた。
俺たちは中に進む。
参拝のためにか訪れた人々が、和やかな顔をしながら行き交う。
そこら辺にいた人に話し掛けることにした。
「破邪の紋章はどこに」
「それでしたら、あちらの封印の門の先にある封印の間に封印されています。残念ですが、見ることはできませんよ」
「そうか」
紋章は手に入れに来たのであって、ただ見たいわけではない。
封印の門と呼ばれたそれは、見るからに魔法が掛けられていそうな複雑な紋様がついている大きな金属製の門だ。
俺は、封印の門まで進み、そこにいた係りの人らしき人物に頼むことにした。
「俺は勇者だ」
勇者の剣を見せてやった。
これは何よりの、俺が勇者であることを証明する物証なのだ。
「破邪の紋章を取りに来た。ここを開けてくれ」
「はあ。ですが、ここを開くには5つの封印石を集めないといけません。ほら、門のここに窪みがあるでしょう。ここに封印石を差し込むのです」
確かに、男が言うとおり、それっぽい感じになっている。
「それを出してくれ。今すぐに」
「何を言われます。世界各地に散らばった封印石を集めることこそ、勇者に与えられた使命。それを果たすことで、勇者は魔王を倒すほどの強さにまで成長できるのですよ」
男はわかっていない。
俺は、こうしている間にも確実に強くなっているのだ。
たぶんそろそろ人類最強ラインあたりを突破したのではないだろうか。
使命とか試練とか、そんなのなしで俺は成長できる。
もう数分で魔王も倒せるようになるのは、事前に女神からも聞かされていることだ。
だが強さはあっても、時間がないのが俺の弱点だ。
世界中から石を集めてくる系のミッションは断固として拒否あるのみだ。
ここは強行突破しかない。
「うらぁ!」
俺は、ありったけの力を込めて、勇者の剣を使い、封印の門を攻撃した。
剣からは波動と電撃が巻き起こり、斬撃と合わせて門を襲う。
だが、門にも剣にも、何のダメージもなく、巻き起こった衝撃波によってまわりにいた人々が、ちょっと吹き飛んだだけの結果に終わった。
さすがに封印の門といったところか。
名に恥じなく、ちゃんと封印している。
ここであまり時間を費やしていては、はたして魔王と決着をつけるところまで、30分以内に行けるのか怪しくなる。
どうすればいい?
「何をするんですかっ。封印の門を破壊するなんて、例え真の勇者でも無理なことですよ」
吹き飛んだ係りの人が、向こうから片足を引きずりながら抗議してくる。
悪いことをしてしまった。
だが、俺は彼の言葉に光明を見出だした。
「そうだな。封印の門は破壊できない」
俺は真横に3メートルほど動く。
「うらぁ!」
俺の渾身の攻撃で、神殿の壁は吹き飛ぶ。
封印の間に繋がる入り口が開いた。
「普通の壁なら破壊できる。少し考えたら分かりそうなことだったな」
「これが勇者のやることかよ」
バートンが飽きれ顔で言う。
村娘は口に両手を当てて目を見開いている。
俺の圧倒的な勇者パワーに驚いているのか、神聖な建造物の壁をぶち抜くという罰当たりな行為に驚いているのか、どちらかは分からないが。
俺は中に入り、そこに飾ってあった破邪の紋章を手に入れた。
あとは魔王に立ち向かうのみである。
残り時間はあと15分。
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