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⑨27分21秒~29分30秒

 

 俺は、かつては互いに命を掛け、死闘を繰り広げてきた敵である魔王の協力を得て、大魔王の前にたどり着いたのだった。


 身長3メートルくらいの大柄な老人が、玉座に鎮座している。


「なんだ貴様ら──」


 間違いない。

 魔王の城で鳴り響いた、あの大魔王の声そのものだ。


 俺は、敵を確認した次の瞬間、大魔王に斬り込んでいた。

 のんびりと大魔王の話を聞いてやる時間などない。

 どうせ、自分がどのくらい強いやつかを自慢して聞かされるだけに違いないのだから。


 たぶんまだ状況を飲み込めていない大魔王の体を、勇者の剣が刺し貫く。


「ぬうっ!」


 さすがは大魔王。

 一度の斬撃では仕留められない。


 だが、世界を破壊するほどの強さに近づいている俺だ。

 今では、1秒間に140回程の攻撃が可能だ。


「でやあああああ────っ!」


 俺は、大魔王をバラバラになるまで斬り刻んだ。


 その間、約2秒。


 勇者の剣で一撃で、魔王を仕留めたことを考えると、魔王なら300体近くを殺害できる量の攻撃を大魔王に与えたことになる。

 無事ですむわけがない。


「やったか!」


 俺は、自分に言い聞かせるように言った。

 何故だか、これで大魔王を倒したのだという実感が沸かなかったからだ。


「なにっ?」


 そして俺の予感は正しい。


 地面にばらまかれた大魔王の肉体は、一つ一つが震えだしたかと思うと、膨張し、姿を禍々しく変えながら融合していく。


 大魔王は、俺の目の前で異形の巨大な怪物と化した。


 それはこの世界で最も邪悪な生命体であろうと確信できる姿。

 不気味で、醜悪な、魔性の部位の寄せ集めでしかない化け物ではあるが、グロテスクさも頂点にまで極まれば、ある種の神々しさを宿すようになるものだと感じられた。


 まさに、ラスボス。


 俺は、勇者の剣を投げ捨てた。


 戦意を喪失した訳ではない。

 気が狂ったのでもない。


 すでに俺の肉体そのものの強さが、勇者の剣に(まさ)っているのが感覚的に分かったからだ。

 素手で戦った方が、俺は強い。


「いくぜ!」


 俺は、手当たり次第、ラスボスのパーツを掴んでは引きちぎり、そこらへんに飛ばす。

 並みの戦士では傷一つ刻めないラスボスだが、俺には柔らかい焼きたてのパンのように意図(いと)容易(たや)く引き裂くことができる。


「うらああああ──!」


 がむしゃらにラスボスを蹂躙する俺だが、それを嘲笑うかのように、ラスボスの細切れになったパーツはじっとりと再生し、やがてまた一つの個体を形成することを目指して繋がっていく。


 これでは埒が明かない。


 そう思い始めた俺の目に、ある現象が映った。

 それを確めるのに、3秒。


 間違いない。あるラスボスの部分だけ、他よりも再生が早い。

 つまりそれが本体だ。


 俺は、野獣のようにそれに取りつくと、掴み、裂いて、また掴み、そして裂く。


 そして俺は手にしていた。

 赤黒く脈打つ、拳くらいの大きさの結晶体を。


 これが、ラスボスの心臓(コア)だ。


 俺は、躊躇(ためら)わず、そいつを握り潰す。


 結晶体は俺の手の中で粉々になり、同時に、周囲の空気を重くしていた邪悪な気配からくる重圧(プレッシャー)さえも粉々に飛散したように感じられた。


 あたりに散らばっていた、ラスボスであったものは再生する力を失うと、そのすべてが灰と化した。


 終わったんだ。


 俺は、戦いの終わりを確信した。


 残り時間は30秒。


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