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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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ちゅうぶらりん。

 恋なんてしていない、……そのはず、だったのに。

 有里紗ちゃんのこと、どうしても気になって、その表情が一つ変わっただけで、ドキドキしたり、落ち込んだり。有里紗ちゃんは今までと変わらないはずなのに、うちの気持ちだけ、おかしくなっていく。思いっきり走ってるときに、脚が空回りして転んで、……走り方をそこで忘れたみたいだ。今まではちゃんと走れてたのに。

 『恋』してるってこと、気づきたくなかった。気づいてしまったらもう、止まれないから。うちの中に芽生えてしまった、ドロドロに心ごと溶かしてく気持ちが。

 有里紗ちゃん、もう寝ちゃったんだ。今日も疲れたもんね。まだ明かりはついたままなのに、起きる気配もないや。

 消しにいかないとな、ベッドからドアの近くにあるスイッチに行こうとしただけなのに、……私の足は、勝手に有里紗ちゃんのほうに吸い寄せられていく。

 やっぱり、綺麗だな。この前、寝込みにちゅーしちゃったときと同じ顔を見て、心臓をきゅって掴まれたような感じになる。……どうしよう、そのまんま、あの時みたいで、胸の奥がズキズキしてる。思い出しちゃうよ、あのときのほっぺの柔らかさも、肌の香りも。


「んぅ……、しの、せんぱい……っ」


 いつもみたいなはつらつとした声じゃなくて、ゆったりとした、甘い声。心ごと鷲掴みにされて、ちゅーしたいって衝動が、どうにもできないくらい強くなる。

 ごめんね、有里紗ちゃん。大好きなのに、……大好きだから、傷つけちゃう。おかしいよね、嫌いになってもいいから……身勝手なお願いだけど、……許して。

 あの時はほっぺに抑えられたけど、もう、無理だよ、止まんないよ、……好きすぎて。

 どうしようもないくらい、有里紗ちゃんに恋してる。こんな気持ちなんて、知りたくなかった。そしたら、こんな衝動なんてなくて、ルームメイトで、一番の親友でいられたはずだったんだから。……少なくとも、ちゅーしたくなって、こんなに心が乱れることはなかったんだから。


「……ないで、ください……」


 最初の声ははっきり聞こえなくて、……でも、「そんなことしないで」と、懇願の声が頭に響いて、慌てて顔を離す。拒否されてるのにちゅーなんてしたら、それこそ、有里紗ちゃんを傷つけてしまうから。

 もう、寝て忘れたい。抱いてしまった気持ちも衝動も。電気を消して、ベッドに寝転がっても、眠気なんて全然やってきてくれない。普段なら、疲れてそんなの考える間もなく眠れるのに。


「ごめんね、有里紗ちゃん」


 一人心地につぶやいた言葉は、誰にも届かないままふわふわと漂う。

 有里紗ちゃんのこと、離したくない。でも、きっと、近づいたら壊してしまう。どこにも居場所を見つけられない今のうちみたいにこの気持ちは私の中をふらふらと漂っていく。

 



  

「さわやかな青春の恋」とは何だったのか5000兆回くらい問い詰めたい

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