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いたむむね。

ゆうちえにうつつを抜かしてました。

「「お疲れ様でしたーっ」」


 長い練習の後、慌ててクーラーボックスから何かを取り出すのをぼうっと見る。

 やたらと大きなビニール袋に、溢れそうになるくらいのお菓子が透けて見える。まあ、プレゼントといえば、こういうものだよね。私がみんなの誕生日にあげたときもそうだったし。


「あ、そうだ、志乃、お誕生日おめでとー!」

「ありがとー、みんな」


 照れくさくなって、真っ赤になってうつむく。みんなが誕生日の歌をうたってくれるのをよそに、頭の中はいろいろなものでごちゃまぜになる。

 その歌が終わった途端に、慌ててその場を去る。


「ごめん、お腹すいちゃったし、お菓子しまってくるね?またね!」

「はいはい、おつかれー」


 その声を遠くに聞いて、かさかさと袋を鳴らして部屋に戻る。寮監さんに聞くと鍵はもう渡されていて、部屋のドアを開けるともう有里紗ちゃんは帰ってきていた。


「おかえりなさい、先輩、……そんな焦らなくていいのに」

「ただいまー、ちょっとお菓子もらってきちゃって、しまわなきゃいけなかったから」


 有里紗ちゃんの顔、また見ちゃったせいで、忘れかけてた気持ちがまた蘇ってきてしまう。

 単純なおかげで、今日はなんとかごまかせただけかもしれない。じゃあ、明日もそうできるかなんて言われたら、そんな保障はどこにもない。

 こんなに近くにいるのに、……近くにいられるから、苦しい。この前みたいに、自分の欲望が簡単にぶつけられちゃうから。


「そういえば、今日先輩のお誕生日だったっすね、あたしも、買ってきたんですよ」

「わー、ありがとー!」


 渡してくれたのは、うちの好きなチョコ菓子で、「17歳も全力で頑張ってください!」なんて、有里紗ちゃんらしい丸っこい字で書かれている。

 十七歳か、……なんだか、中途半端な歳。有里紗ちゃんへの気持ちも、ぴったり収まってはくれなくて。

 

「嫌でしたか?」

「ううん、そんなことないよ?ありがとね、有里紗ちゃん」

「それならよかったっす……、どういたしまして」


 その微妙な顔を、別なふうにとらえられてしまう。慌てて顔を明るくして、冷蔵庫にもらったお菓子を詰め込む。スポーツドリンクや湿布やらでただでさえ溢れそうになってる部屋の冷蔵庫に入れるのは、きっちり整理しても大変だった。

 無理して笑ってるの、有里紗ちゃんは分かっちゃってるんだろうな。笑ってごまかしてるけど、ほんとは傷ついてるの、うちでもわかるんだから。

 やめてよ、そんな風に笑わないでと。うちが傷つけたはずなのに、こっちまで泣きそうになるから。






まーたうちの子がこじらせてしまうのか

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