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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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そわそわ。

 更衣室から出て、有里紗ちゃんは、また館内マップを見たまま歩く。「危ないよ」なんて言ってまた手を組むと、「ひゃっ」と小さな悲鳴を上げられる。さっきもしたんだから、ちょっとくらいは慣れてよ、恋人どうしの距離感に。うちも、まだ慣れてるって言いきれないけど。


「あの、せ、先輩……っ」

「なぁに?」

「あの、いっぱい楽しんだらでもいいっすけど……、お、泳ぐ練習、付き合ってもらえないっすか?」

「うんっ、いいよ?じゃあ、うちのにも、付き合ってほしいな?」


 『付き合う』って言うだけでも、なんとなくどっかに引っかかったような感じ。実際、お付き合いしてるわけだけど、……まだ、やっぱり慣れないや、うちも。だって、一昨日の夜だもんね。うちらの関係が、特別なものになったのは。日焼けしてないとこの肌が、ほんのり赤くなってるのは、気のせいかな。


「い、いいっすよ……」

「じゃあ、決まりだね。でも、はしゃいじゃったら疲れちゃうし、最初にしない?」

「そ、そうっすね、プールの後って、けっこう疲れちゃいますもん」

「ホントにね、次が数学とかだったら絶対寝ちゃうもん」


 プールの後って、お腹も減るし、すっごく眠くなる。有里紗ちゃんで疲れちゃうなら、うちはもうぐったりしちゃうのも仕方ないよね。


「それ、自慢げに言うことじゃないっすよ?」

「そうだけどさぁ……、あ、準備運動しなきゃだね」


 シャワーのすぐ隣の、広い空間で足を止める。プールだと、水の抵抗も大きいから足もつりやすいみたいだし、そうなったらしばらくは走れないことになる。うちだって、新人戦は近いし、……有里紗ちゃんは、もうすぐ駅伝の大会だってある。しかも、一年生なのにいきなり大事な一番手を任されて。一緒にデートして、何もしてないのに楽しくて、そんな時間がそんな理由で飛ぶのは嫌だし、……何より、前に、どこまでも飛んでいけるような走ってるとこが、一番好きなとこなのに。それを、うちとデートしたせいで見れなくなっちゃうのは、嫌。

 

「分かってるっすよ、お互い、大会近いですもんね」

「デートの時間減っちゃうかもだけど、そっちのほうが大事だもんね」

「……そ、そうっすよね」


 それくらいの気持ちは、一緒だろうって思ってたのに、有里紗ちゃんの言葉は、まだ歯切れが悪い。……もしかして、うちとデートするほうが、ずっとよかった?怒りたいような気もするけど、それ以上に楽しみでいてくれるのは、嬉しい、かも。

 角っこに少し並んで立って、なんとなく、何も言わないまま準備体操してるとこを横目で見る。見られてないはずなのに、念入りに、うちと、ほとんどおんなじタイミングで。

 それだけで、なんかくすぐったい。さりげなく目をそらしたのは、漂うふわふわした雰囲気に、気づいちゃったから。


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