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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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わかってく。

 一度弾けた気持ちは、簡単には収まらない。さっきまでもやもやしてた心の空が、嘘みたいに晴れたせい。心の中、ふわふわに甘い。……さっきまで、嫉妬したいなことしてたの、本当にホントのことだっけ。

 

「先輩、本当に突っ走ってばっかなんすから」

「そういううちが好きって言ってたじゃん」

「そ、そこまでは言ってないっすよ!?」


 もやもやが晴れると、心にもすこし余裕が出てくる。泳ぐのだって、こういう風に、すいすいできてらよかったんだけどな。走るのだったら結構速いほうだけど、膝を曲げないで蹴るって言われても全然わかんないし。今度行くとこだったら、ウォータースライダーとか流れるプールとかで泳げなくても楽しめるし、……有里紗ちゃんが泳げるんだったら、教えてもらうのもいいかも、なんて。


「えー、そうだっけ?」

「そうっすよ……」


 開いたドアから飛び出す勢いで出て、そのまま階段を駆け上がる。上りきったとこで、息が切れる。急かされたまま飛び出しちゃうの、ホント、うちらしいけど。たまには、頼れるセンパイらしくいたいのに。


「ごめん、ちょっと休む……」

「もう、そんな焦るからっすよ?」

「うぅ……、ごめん……」

「別に、駄目なんて言ってないっすから、行きますよ?」


 さっきまでとは逆に、うちのほうが有里紗ちゃんに引っ張られる。頼られたいのに、頼ってばっか。もやもやで頭のなかぐるぐるになりかけて、また、とらわれかけて。


「わかったから、ちょっと待って……っ」

「先輩が急がなきゃって言ってたんじゃないすか、もう……」


 でも、そこから引っ張り出してくれるのも、有里紗ちゃんしかいない。引っ張る手が止まる。呆れたような声が、優しい響きになる。


「ごめんって……」

「いいっすよ、待ちますから。……先輩と一緒じゃなきゃ、楽しめないんですし」

「ほんとっ!?えっへへぇ、もう元気出ちゃった」


 空っぽだった心の中に、明るくてきらきらしたのが入ってくる。今すぐ、ぴょんぴょん飛び出しちゃいそうで、それはちょっとやめる。また、動けなくなっちゃったら、楽しめなくなっちゃう。それは、嫌だな。せっかく、はじめてのデート、なんだから。

 代わりに、思いっきりぎゅって抱きついて、思ったより、顔が近づく。少し汗ばんでるせいか、吸い付くような肌。胸の奥、きゅうって締め付けられる。


「わぁっ、先輩、熱いっすよぉ……っ」

「ごめんって、じゃあ行こ行こ?」

「はいはい、……」


 何か、有里紗ちゃんが小声で言ったような気がする。「どうしたの?」って訊いてみても。「な、何でもないっすよ」って、なんでもなくない声が返ってくる。

 でも、もう、大丈夫だから。耳まで真っ赤になった顔も、合わせてくれない目線も、……うちのことで、頭がいっぱいになっちゃってるってことなのは、わかっちゃったから。

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