はれないくもは。
やることもないし、電車の中だとあんまりおしゃべりもできない。由輝ちゃんたち、今どうしてるかな。メッセージのアプリを開いて、由輝ちゃんとのトークを開く。前に見た時と変わらないところに、「果歩ちゃんはどうしてる?」なんて送ってみる。しばらく待つと、短い返信が来る。『相変わらず果歩が暴れて大変だわ』なんて、文字だけでも困ってるのが見て取れる。
果歩ちゃんって体格もいいし、体力だって溢れるくらいあるからなぁ。いっつも面倒みてる様子は大変そうだけど、由輝ちゃんも、なんかきらきらしてて楽しそうなのが、ちょっとだけ不思議。
「果歩ちゃん、相変わらずみたい」
「確かに、由輝先輩に教えてもらってるとき、いっつもいますよねぇ」
「幼馴染だからけっこう慣れてるみたいだけど、大変そうだよね」
うちと比べたら頭1つ分くらい背が高いし、スタミナだって無尽蔵だし。寝てるとき以外はいつも動き回ってるイメージしかない。そんなのを抑え続けるのって、大変だろうな。もしうちだったら、……なんか一緒にはしゃいじゃいそうだけど。
「ほんっと、あの先輩スタミナも瞬発力もすごかったですもんね……」
「あ、そっか、有里紗ちゃんは種目一緒だったんだっけ」
「それで一緒にやってたんすけど、あたしもうちょっとで周回遅れにされそうだったんすよー……」
1学年違うって言っても、有里紗ちゃんだって相当早い方なのに。改めてそのとんでもなさに気付く。それで、今いるバレー部でも、入ってすぐレギュラーになっちゃうし、スポーツのことになったら、本当に底が知れないや。
「ほんっと、抑えるの大変そうだねぇ……」
「それ考えると、由輝先輩もほんっと凄い人ですよねぇ……」
「うん、ほんとすっごいよ、背だってけっこう違うのに」
いつもお疲れ、なんてメッセージを返して、また、ひっそりと二人で話に花を咲かせる。ここにいない二人のことだけで、いくらでも話がふくらみそう。駅に着くまでには、お話済ませておかなきゃ。
「どうやってるんですかねぇ、果歩先輩相手だとじゃじゃ馬慣らしみたいな感じになりそうですけど」
「暴れ馬って感じだもんねぇ、落ち着いてるとこ見たことないもん」
ついたままの画面には、もうメッセージが返ってきてた。『おうよ☆』なんて、声すら聞こえそうなくらい。
『相変わらず頼もしいなー』なんて送ったら、その前にもう1件来てたのに気づく。『じゃあ志乃も有里紗に頼られる先輩にならないとな』って。それは……、そうだけど。
「先輩、言われちゃってますね」
「うわぁっ!?み、見ないでよぉ……」
電車なのも忘れて、思いっきり悲鳴をあげてしまう。周りに会釈で謝って、スマホを隠す。……うちがセンパイらしくないのなんて、分かってるよ、最初から。そこまで言わなくたって、いいのに。そしたら、どうすればいいの。心の中に沸いたもやもやは、ほっぺを膨らませて、むぅう、って唸らせる。




