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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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あおいそら。

 スリッパをつっかけて廊下に出ていく。寮の外履きと内履きが分かれてるの、普段は旅館っぽくていいなって思うけど、疲れたときとかは、ちょっとだけめんどくさくなる。

 有里紗ちゃんが鍵を寮監さんに預けてくれてるのを横目に、サンダルに履き替える。こういうのはあたしに任せてって言われちゃってるし、うちもそのほうが安心できちゃうのが、なんかセンパイとして情けないというかなんというか。


「もー、待ってくださいよ先輩ーっ」

「大丈夫だよ、一緒に行くのに、置いてくわけないでしょ?」


 ぱたぱたとした足音を鳴らしながら、すぐ横で有里紗ちゃんが追い付く気配。うちだって、置いてくほど薄情じゃないよ、もう。


「んもう、びっくりしたじゃないっすか……」

「ごめんって、早く行きたくなっちゃって」

「それはわかりますけど……、やっぱ先輩は先輩っすよね」


 並んで歩いて、玄関を出た瞬間の熱気に思わず立ち止まる。廊下の何倍もの熱気と、肌を容赦なく焼く日の光が襲い掛かってくる。普段から部活で外に出てるから慣れてないわけじゃないけど、気が引けないってわけじゃない。


「あぁ~、もう相変わらず暑いねぇ」

「プール入れば涼しくなるっすよ、きっと」

「走るよりずっと気持ちいいんだろうなぁ、待ちきれないよー」


 背負ったプールバッグが、ごそごそと揺れる音。楽しみすぎて、スキップしちゃいそう。熱い空気も、多分うちらから出てるほうがよっぽどアツアツだ。

 とりあえず、学園前駅まで行って、そっから電車で20分くらい。そっから歩いて10分くらいにある『空の宮ウォーターパーク』が、うちらの今日の行き先。普通のレースとかしそうなのとかの他にも、ウォータースライダーとか流れるプールとかがあって、他にも温泉もあるようなけっこう大きな場所で、半日くらいじゃ頑張んないと遊びきれないくらい。……あいにく、うちは部活で忙しいし、そもそもあんまり泳げないから行こうなんて思ってなかったけど、ちょっと気になってたところにデートする機会ができたのはけっこう嬉しい。


「そりゃぁ、水って冷たいじゃないっすか、プールのときって、涼しくていいっすよね」

「水の中って気持ちいいけど疲れちゃうから、その後の授業寝ちゃうんだけどね……」

「んもう、相変わらず先輩は……」

「しょうがないじゃん、うちがスタミナないの知ってるでしょ?」


 呆れられながら、駅まで歩く数分は、いつの間にか過ぎていた。楽しい時間は、本当に一瞬で過ぎていっちゃう。思いっきり走ったって、その前にばてちゃうのに、それよりもずっと、早く感じるくらいに。


「それはそうっすけど……」

「だからしょうがないんだよ、寝ちゃうのは」

「諦めないでくださいよ、それくらい……」


 いつの間にか、駅の階段まで着いてた。昼下がり、あんまり人はいない。そりゃそうだ、遊びに行くなら朝からのほうがいいし、帰るにはまだ早すぎる。中途半端な時間、……まだ、うちらも、『恋人同士』としては、なんか中途半端、なのかも。

 まだ、雲は晴れない、それでも、蒸し暑いくらいには、ほかほかなつながり。……うちって、贅沢なのかな、こんなに幸せなはずなのに、物足りないなんて。

 電車に乗り込むと、冷房の効いた空気が包んでくれる。考えすぎてどうにかなっちゃってそうな頭も、冷えてくれたらいいのに。

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