ねむれぬよる。
布団にもぐっても、ドキドキも頭のもやもやも収まらない。
そういえば、これ、有里紗ちゃんがいっつも使ってるのなんだ、……有里紗ちゃんにぎゅってされたら、こんなにおいなのかな。なんて、もっと頭の奥がグルグルして、わけがわからなくなりそう。
そりゃ、うちだって、有里紗ちゃんのことは、好きだけど。……その『好き』って言葉で、胸がズキンと痛む。
走った後ってわけじゃないのに、息が苦しくなる。
さっきのことを思い出した恥ずかしさに、自然に足をぱたぱたと動かしてしまう。
私、どうすればいいんだろう、有理紗ちゃんに、気づかれてないかな。さっき、ちゅーしちゃったこと。
「うぅ……っ」
ばたばた、ばたばた。溢れそうになる気持ちの行き場を、無理やりつくる。こんなふうにしてないと、有理紗ちゃんを傷つけそうな気がして。
無理やりちゅーするのが、駄目なことなんて分かってるよ。それなのに、どうして、そうしたくなっちゃうのかな。わかってるけど、分かりたくない。有里紗ちゃんのこと、好きだから。それ以上はもう、考えたくない。そんなのだけじゃ、絶対表せての、わかってるけど。――これ以上のことを考えたら。今までの友達のままじゃいられないから。
もっと近づきたいのも、こっそりじゃなくて、有里紗ちゃんと、ちゃんとちゅーしたい。くちびると、くちびるで。
こんな気持ちに、今までみたいな『友達』の関係なら、絶対起こらないようなこと。もっと先に行きたいって気持ちに、フタをしようとして、……できるわけがない。今だって、こんなにドキドキしてるのに。
分かってるよ、これが恋だってこと。でも、こんな気持ち、有里紗ちゃんに言えるわけないよ。ずっと、大事な『親友』だったから。この気持ちを伝えたら、このほっこりする、幸せで、何より大事な関係を壊してしまう。
「有里紗ちゃん……、ごめんね?」
寝てる間にちゅーしちゃったことも、有里紗ちゃんに、恋しちゃったことも。
もう、過去には戻れない。この気持ちも、寝込みに、ほっぺにちゅーしたのも。もう前に遡ってなかったことにするなんてできない。
せめて、有里紗ちゃんが気づかなかったらいいな。そしたら、私が有里紗ちゃんを傷つけたこと、有里紗ちゃんは知らないままでいられるから。それはきっと、ずるい考えなのも、分かってるけど、止められない。
このまま気持ちを伝えて、もっと深い関係になるか、それとも、嫌われて遠ざかるか。それしかもうないんだ。きっと、もう前までと同じような態度はとれないから。今だって、こんなにドキドキしてるのに。
携帯を見ると。もう日付もとっくに過ぎている。もう、あんまり眠れないや。
有里紗ちゃんのことをずっと考えたまま、頭がどんどん重くなっていく。
ほぼ2か月ぶりじゃないですかー