ぬくもりを。
……ふぅ、これでいい、よね?
着替えを済ませると、鏡の前で何度も回ってスタイルを見てみる。自然にうんうんとうなずけて、やっぱり選んでもらってよかったなって思う。
「どうかな、有里紗ちゃん」
「おおー、大分似合ってるんじゃないっすか?」
「ありがと、有里紗ちゃんのおかげだねっ」
気持ちは、どうしたって高まってくる。抱きつこうとして、それは慌てて剥がされる。すらりと伸びた小麦色の肌に、白が際立つ。結構きつめの顔なのに、こんなに清楚な感じのも似合うんだ。
「じゃあ、……あたしは、どうですか?」
「うん、すっごく似合ってるよっ」
「それじゃあ、これは……志乃先輩のおかげですね」
照れながら返す有里紗ちゃんが、無性にかわいい。このままぎゅってしたくなるのを、抑えられなくなりそうなくらい。
「ありがとーっ、なんか、全然こういうとこ見ないから、何かドキドキしちゃうねっ」
「も、もう……、そんなことよりそろそろ行きますよ?由輝先輩も待ってるんですから」
「うん、わかってるよぉ」
照れ隠しもあるだろうけど、大分服で悩んだせいでもうすぐ約束の時間になっちゃってるのは本当だ。どうせ、プリントの類なんて鞄に突っ込んだままだし、そのまま持っていけば大丈夫だよね。そんなことになってるのが大丈夫じゃないっていうのは、見て見ぬふり。
談話室までは、ほんのちょっと。たどり着くと、もう由輝ちゃんは待っていた。
「二人とも遅かったなー、どうしたの、そんなにめかして」
「え、……これ終わったら、二人でプール行こうかって話してたんだよね~」
「せ、先輩!?何いきなり言ってるんすか!?」
いきなり焦ったような声が隣から聞こえて、少しだけむくれる。別に、友達同士でも行かないことはないのに、そんなに大げさな反応したら、うちが由輝ちゃんの立場にいたってわかっちゃうよ。こんなにおめかししたのが、『特別』なんだろうなって。
「あらあら?いきなりデートなんて、大胆ねぇ?」
「も、もう、由輝ちゃん!?」
「いいねぇ、青春って感じで、……とりあえず中入っちゃお」
相変わらずにやにやしたまま、すたすたと談話室に入っていってしまう。ぽかんとしたまま、自然と隣にいる目を合わせる。
やっぱり、気づかれちゃったな。というか、こんなにヒントあげちゃったら、誰だって気づいちゃうよ。
でも、なんかくすぐったいだけで、……嫌だとは、全然思わないの。うちと有里紗ちゃんが、他の人とは違う関係だって、見せびらかしたいわけじゃないけど、気づいてもらえると、なんか嬉しい。
気が付いたら、有里紗ちゃんに手を差し出していて、ゆっくりと温もりが触れる。
手を繋ぐ必要なんてないけれど、それでもこうしてるだけで胸の中が甘いよ。




