いちばんを。
「うーん……、有里紗ちゃんは、どっちがいいと思う?」
なんとか二つまでは絞れたけれど、もうこれ以上は考えてられない。ベッドに、二種類のトップスを広げる。下はネイビーのキュロットに決めたから、それもついでに。
片っぽはオレンジの、ちょこっとだけふりふりしたブラウスで、もう片っぽは、白地に英語でいろいろプリントされてるパーカー。
「そうっすねぇ……色はオレンジのほうが先輩ぽいっすけど、似合うのはパーカーじゃないですかね……」
「そうなんだよねぇ……、やっぱ、こっちにしよっか、ありがとね」
そうと決まれば、早速脱ごうとして、もじもじとした声でそれを止められる。うちといる時には、いつもの自信にあふれた声は、どこに行っちゃうんだろうな。
「その……あたしも迷ってるんですよね……だから、選んでくれますか?」
「いいよ、……有里紗ちゃんも、一緒なんだね、ドキドキしちゃうの」
「そりゃそうっすよ、あたしにだって初めての、で、デート、なんですから」
ぷるぷると震えながら、最後なんてほとんどかすれかけた言葉。せっかくだから、一番かわいいって思えるのがいいもんね。それが分からないほど、有里紗ちゃんの事が好きじゃないわけじゃない。
「それで、選んだのってある?」
「はい、これなんすけど……」
ベッドに置かれてるのを見ると、うちと結構よく似た服が並んでる。お互いのクローゼットなんてあんまり見るものじゃないし、まともに見たのなんて有里紗ちゃんが寮に入ってきたときに、荷物の整理を手伝ったときだけじゃなかったかな。
「うーん……、うちもファッションとかあんまりわかんないけど、いいの?」
「いいですよ、先輩が一番かわいいって思うのにしてください」
「えー?……センスあるかもわかんないし、有里紗ちゃんってもともとかわいいもん」
「そ、そういうんじゃなくてっ!」
ぽふん、なんてかわいい音が聞こえてきそうなくらい、一瞬で真っ赤になる顔。
そんな顔されたら、困っちゃうよ。一番かわいいとこ、見たいって思うから。
手あたり次第に、体の前に服を当てさせる。パズルのピースを探しにいくみたいに。こんなんでもじもじしてたら、デートの時間が短くなっちゃう。時間は、待ってはくれないんだから。
「あ、これかわいいっ!」
はまったピースは、さわやかな白のチュニックに、膝丈くらいのジーパン。半信半疑って感じの顔で、渡した服を受け取る。
「そ、そうっすか……?先輩が言うなら……」
「こういうの持ってたんだね、すっごくいいよっ」
「じゃあ、急いで着替えなきゃね、もう由輝ちゃん待ってるし」
「えっ、もうそんな時間ですか!?」
楽しいこと考えてると、時間なんてあっという間に過ぎちゃう。こうして二人でいるだけで、なんだか元気がみなぎってくる。
急かされてるはずなのに、何でだろう、これも気持ちいいや。ふわふわとした感覚を噛みしめながら、寝間着にしてたシャツを一気に脱いだ。




