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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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まよいながら。

有里紗ちゃんお誕生日おめでとうなのです。

「いっぱい食べたねぇ……、デートするって考えたら、ご飯足りなくってぇ」

「もー……、勉強会で宿題進まなかったらなしなんですよ?」

「分かってるよ、でも、有里紗ちゃんだって楽しみにしてるんでしょ?」

「そ、それはそうですけど……っ」


 楽しみなら、そう言えばいいのに。照れ屋さんなのは、相変わらずなんだな。本当に、かわいいな、有里紗ちゃんは。うちよりもしっかりしてて、背も高いし、スタイルもいいのに。

 

「えへへ、そんなに楽しみなら、頑張らなきゃだね」

「そうですよ、というかあたしより先輩のほうが頑張ってくださいよっ」


 その声は半分聞かないふりをして、片づけてから足早に部屋に戻る。気持ちばっかり逸って、体を追い越していってしまう。うちだって、走るのは速いのにな。それよりも、ずっと。

 恋人らしいことなんて、よく分からないし、進みかたも全然知らない。走りたいのに、走り方を知らない赤ちゃんみたいに、もどかしい。

 交代で身支度を済ませてる間に、クローゼットとにらめっこして、そんなにない私服のレパートリーに頭を抱える。とっておきの服なんて持ってるわけないし。


「んー……、先輩?」

「ああ、有里紗ちゃん、もう洗面所空いたんだ」


 動揺をごまかせなくて、思いっきり出した水で顔を冷やす。有里紗ちゃんだって、悩んじゃってたらいいんだ。思わず、力がこもってしまう。

 洗顔も歯磨きも済ませても、有里紗ちゃんはまだ着替えを済ませてなかった。まるで、うちがそうだったみたいに、クローゼットの前で、服を鏡の前であててはまたしまって。

 

「有里紗ちゃん、何してるの?」

「わあっ、べ、別にいいじゃないですかっ!」

「困っちゃうよねー、普段私服なんて着ないし」


 週に1回くらいは休みがあるけれど、そのときだってTシャツにハーフパンツかなんかで、全然悩むことなんてなかったし。


「そ、そうですよねっ」

「うちもまだ決まらないんだー、やっぱり悩むよね」


 でも、それだけが理由じゃないのくらいは、わかってる。だって、うちがそうなんだもん。

 好きな人とする、初めてのデート。オンナノコらしいってわけじゃないうちだって、聞いただけで、心臓の奥がきゅってする。甘くて、ちょっとだけ酸っぱい、まだ知らない世界。

 ほっとしたような有里紗ちゃんの顔をみて、一緒なんだなって私までほっとため息。おんなじ気持ちでいるって、なんか嬉しいよね。それが好きな人とだったら、なおさら。


「……あたしもっすよ、だって、こういう風にお出かけなんてしないですから」


 うちが話すとたしなめてくるくせに、やっぱり有里紗ちゃんも楽しみなんじゃない。わかってたけど、こうやって思ってるとこが見えちゃうだけで、からかっちゃいたくなるよ。


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