表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/54

こがれるこころ。

のぼせそうになるくらい熱くなって、お風呂から上がる。


「ごめん、のぼせそうだから先上がるね」

「じゃあ、あたしも上がるっすよ」


一人で上がろうとしてたのに、有里紗ちゃんもついてきてくれる。それはうれしいけれど、今の私だと心がおかしくなりそうな気がする。

何だろう、この胸のドキドキは。今まで感じたことのない気持ちに、自分のことなのにわけがわかんなくなる。

脱衣所に戻ると、これからお風呂に入る人たちでうちらが入ったときよりもにぎわってきていた。いそいそと着替えて、置いてある自販機で二人でスポーツドリンクを買う。キンキンに冷えた飲み物は、火照った体の奥に染みこんでいく。


「はー、お風呂上がりはやっぱりこれだよねーっ」

「そうっすねー、たまらないっすよー」


有里紗ちゃんのことを考えすぎて、溶けかけていた頭も急に冷やされて痛いほどになる。でも、それがたまらなく気持ちいい。

まだ夜の9時ぐらいだけど、お風呂に入ったせいか、体はもう寝る準備に入りかけていた。


「これ飲んだら、もう寝ちゃう?」

「あー、明日も朝から練習ですもんねー」

「えっ、そっちもなんだ……」

「もう夏休みだっていうのに、辛いですよねー」

「だねー」


やっぱり、眠気には勝てないし、早いけど寝ちゃおうかな。


「じゃあ、もう部屋戻って寝よっか」

「そうっすね」


二人の部屋に着いてすぐに窓を開けて、扇風機を全開にしておく。

備え付けの洗面台で、順番に洗顔と歯磨きをする。有里紗ちゃんがそうしてる間に、スマホと目覚まし時計のアラームを入れておく。


「あっそうだ、脚、マッサージする約束でしたね」

「そうだったっ」

「じゃあ、あたしからしますよ、うつぶせになってくれますか?」

「うん、じゃあ、お願いね?」


ベッドの上にうつ伏せになって、有里紗ちゃんがそうしてるうちの足元に座る。


「じゃあ、いきますよ?」


有里紗ちゃんが脚を揉む度に、重くて気持ちのいい刺激が入る。ふくらはぎから太ももに徐々に上がっていく有里紗ちゃんの手に、漏れる声を抑えられなくなっていく。


「どうっすか、先輩」

「ふぅ……、すっごく気持ちいいよ?」

「へへ、それならよかったっす」


無邪気に笑い声を漏らすのが、たまらなくかわいい、……なんて冷えたはずの頭が、またとろけそうになって。


「じゃあ、今度うちがやるから」

「えへ、それじゃ、よろしくお願いするっす」


うちが寝てたとこに有里紗ちゃんがおんなじようにうつぶせになって、有里紗ちゃんの足の前に座る。

それにしても、脚、綺麗だな。太もものちょっとむっちりしたとこも、ふくらはぎに付いた筋肉で、ほどよく膨らんでるとこも。それにそのラインも引き締まってて、日焼け止対策もきっちりしてるからか、羨ましいくらい白くて。


「先輩?してくれないんですか?」

「う、うわ、ごめん!」


脚に見とれてたとか、絶対に言えない。慌ててやって、有里紗ちゃんに怪我させても大変だし、ゆっくり丁寧に。

むにむにとして、すぐ跳ね返ってくる筋肉質な脚に、さっきとは違った意味で羨ましいって思う。まだ1年だっていうのに駅伝大会のメンバーに選ばれるっていうんだから。


「有里紗ちゃん、どう?」

「すっごく、気持ちいいっす……」

「よかった、ありがとね」


しばらく有里紗ちゃんの脚を堪能していると、有里紗ちゃんの顔が、枕に突っ伏している。


「どうしたの?」


呼んでみてもなんも返事がなくて、緩いテンポの吐息だけが聞こえる。もう、寝ちゃったんだな。でも、有里紗ちゃんのベッドまで運ぶのはできないし、有里紗ちゃんを起こすのだって抵抗がある。

寝返りを打たせて、窒息しないようにして、その無防備な寝顔を間近に見つめる。

ちょっと猫目で、目を閉じてても二重のままの瞼。それだけ見るとおとなしそうな感じにも見えるけど、中身は明るくて優しい人で。

有里紗ちゃん、かわいい、ちゅーしたい。……考えの隙間に現れた気持ちに、自分でも動揺してしまう。でも、なんでこんな顔近づけちゃってるんだろう、ほのかに薫る甘いにおいが、だんだんと濃くなっていく。


……ちゅ。


唇に触れた感覚に、はっと気づく。有里紗ちゃんの顔を見直すと、白くてぷにぷにしたほっぺに、ちょっとだけ濡れた跡ができていて、慌てて寝間着替わりにしてるTシャツで拭う。

有里紗ちゃんのほっぺに、ちゅーしちゃった。そのことに、どうしようもなく顔の奥が熱くなって。

震える瞼にも、吐息混じりに漏れる声にもビクビクしてしまう。うちがしたこと、気づかれてないよね。

慌てて電気を消して、有里紗ちゃんのベッドに寝転がる。ドキドキで熱くなった頬に手を当てて、ばふばふと足が動くのを止められなくなる。

有里紗ちゃんにこんなにドキドキしちゃうのも、ちゅーしちゃったのも、理由なんてわからない。……わかりたくない。

でも、これまでの『親友』には、どうあがいたって戻れない。それだけは、なぜか胸の奥でズシリと心に乗っかっていた。

ようやく1話ラストの意味深発言のフラグを回収できた。

ほっぺちゅーだけでどぎまぎする志乃ちゃんかわいい(違

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ