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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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わかちあって。

「今日の先輩、様子変ですよ?練習しすぎて変になっちゃいましたか?」

「そんなにやわじゃないって、大丈夫だよ~っ」

「そうかもしれないっすけど……、あんな先輩なんて、見たことないですから」

「まあ、まだ出会って半年も経ってないじゃん、知らないとこなんて、いっぱいあるよ」


 一緒の空間で生きてきたから、有里紗ちゃんのことは大体のことはわかってるつもりでいる。実は、ぬいぐるみが好きで、たまに自分で縫ってたり、一度考え込んでしまうと、なかなか抜け出せないくらいに周りのことに気を配ってたり。普段は見せない一面を、見せてもらえて、なんだか特別って感じはする。でも、きっと、誰かのこと、完全にわかるなんて、できないんだろうな。いくらうちと有里紗ちゃんが仲良くなったって、それは変わらない。


「そうかも、しれないっすね……」

「まあ、これから知ってけばいいんだよー」


 らしくないことを言ったように思えて、笑ってごまかす。考えるのは、どうしてもうちには向いてない。いつだって、真っ直ぐに走るくらいしかできないんだから。それなら、考えて足を鈍らせるよりも、何も考えずに突っ走りたいな。


「やっぱり、今日の先輩、らしくないかも」

「えー?そうかなぁ……」


 確かに、最近はいろいろと考えてばっかりだから、うちらしくないといえばそうなのかも?珍しく物思いにふけってたのがいけないのかもしれない。不意に、左腕を掴まれる。こんなに力強いのなんて、雪乃ちゃんと話してたときに有里紗ちゃんが嫉妬してくれたときくらい。


「先輩?どこ行くんすか?」

「ほえ?どういうこと……?ってああー!」

「もう、さすがに帰ってくる部屋間違えないでくださいよーっ」

「ごめんごめん、考え事しすぎちゃってさ」


 三階にうちらの部屋があって、もうそこまで上りきってたのに、なぜかまだ上ろうとしてたみたい。本当に、今日のうちは、どうにかしちゃってるのかな。

 

「何考えたらそうなっちゃうんすか?」

「なんでもないよ、疲れちゃったし、早く寝ちゃお?」

「そうっすね、今のままいられても困りますもん」

「もー、さすがにそれはひどいよぉ」


 冗談だってわかってるから、一緒に笑える。まだ、わからないことだらけだけど、それでも、知ったことだっていっぱいある。有里紗ちゃんが部屋の鍵を開けて、今からは、二人だけの部屋に楽しさを閉じ込められる。

 

「ただいま、有里紗ちゃん」

「おかえりなさい、先輩、……でも、あたしもただいまですね」

「そうだね、じゃあうちも、おかえり」


 自然とほころぶ顔に、うちも笑顔になれる。二人きりって考えるだけで、胸の中が熱くなる。

 玄関にずっといるのもおかしいし、部屋に入って、それぞれのベッドで寝転がる。今日は、ちょっと疲れちゃったな。脚に来るじわじわと何かが入ってくような感じに、改めて今日の疲れを実感する。


「その……志乃先輩?」

「どうしたの?」


 座り直すような物音と一緒に、やけに硬い雰囲気の声。何か、あったのかな。ちょこっとだけ身構えるように応える。


「寝る支度済ませたら、マッサージ、しあいっこしませんか?」


 その声は、ただの提案のはずなのに、進んでいくにつれて消えそうになっていた。

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