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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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すすんでく。

 がやがやとした食堂から出ると、人気も大分少なくなる。洗濯ものを取りにきたのか、ランドリー室に入っていく子たちを少し見かけただけ。言いたいような、言いたくないような。揺れ動く気持ちに、足が止まりそうになる。


「どうしたんすか?ぼーっとして」

「明日のこと、ちょっと考えてたの」

「先輩勉強苦手ですもんねー、授業中いっつも寝てるって由輝先輩が言ってましたよ?」

「仕方ないじゃん、だって、朝練で疲れちゃうんだもん……」


 うちだって起きようとはがんばってるけれど、授業でじっとしてると、どうしたって眠くなっちゃう。由輝ちゃんも、よく寝ないでいられるよなぁ……、うちと違って長い距離をいっつも走ってるから、体力もいっぱいあるのかな。隣から、ため息の音が聞こえる。


「明日の勉強会、いつ終わるんでしょうねぇ……」

「うぅ……、考えさせないでよぉ……」


 明日、早く終わったら、有里紗ちゃんとプール行こうって言ってたのに。うちのせいでできなくなったら、失望、しちゃうよね。


「あたしだって、先輩とプール行きたいんですから」

「わかってるよ、……うちだってがんばるもん」


 デートって言っていいのかもわからないけれど、ちょっとでも二人でいたい。有里紗ちゃんも、思ってることは同じみたい。もしかしたら、うちよりもずっとそう思ってるのかもしれない。お風呂のときにも、雪乃ちゃんと話してると、すぐ焼きもちやいてたんだから。あの時の有里紗ちゃん、かわいかったな。思い出すと、ほっぺが緩むのを抑えられない。

 

「どうしたんすか、そんなににやけて」

「ううん、何でもないよ」


 有里紗ちゃんのかわいかったとこ、思い出しちゃった。なんて言ったら、顔を真っ赤にしちゃうんだろうな。「ななな何言ってるんすか先輩!?」なんて、大慌てして。

 いたずら心は、出さないでおこうかな。お風呂上がりのときみたいに、二人っきりのほうが、もっとかわいくなるから。


「えー?教えてくださいよーっ」

「へっへー、どうしよっかなー?」

「いいじゃないっすかー、別に減るもんじゃないんですし」

「やっぱ内緒にしちゃおっかなー、ここじゃ言うのもあれだし」


 隣を見上げると、つんとして、唇を尖らせる横顔が見える。こんな表情、滅多に見ないな、うちが宿題を忘れて、呆れ返ってたときくらいしか。

 こつん、と、足が何かにつっかえて、慌てて逆の足と手で持ち直す。いつの間に、階段まで来てたんだ。有里紗ちゃんと二人だと、あっという間に時間が過ぎていく。


「もー、大丈夫っすか?こんなとこでこけるなんて」

「うん、大丈夫だって」


 二人のこと以外、忘れちゃいそうになるような時間。『恋人』になったことを意識したら、もっと増えたような気がする。

 でも、……嫌なわけないよ、むしろ、もっと、味わっていたいような。



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