はれるこころ。
1か月半ぶりとか相当サボってんな。
シャンプーを済ませてから、横目に、有里紗ちゃんが最初いた椅子に座り直すのが見える。
今までだったら、……なんて考えるの、もう何回目だろう、意味なんてないのに。だって、有里紗ちゃんとうちの関係は、大きく変わってしまったんだから。
『友達』と『恋人』の間は、うちらはあっという間に過ぎていっちゃったけど、思い返せばものすごく長いような気がする。もしかしたら、まだ、完全にはなってないのかもしれないけれど、それでも、これまでよりはぎゅっと近づいた。
「明日休みだし、一緒におでかけしない?」
「いいっすけど、ちゃんと宿題片づけてからっすよ?いっつもギリギリまでやらないって由紀先輩も言ってましたし」
有里紗ちゃんとは今年同じ部屋になったばかりだし、それまでに何か話をしたわけじゃないし、一体どうして分かったんだろう。実際そうだけど、せっかく……、デートの約束できたと思ったのに。
「えーっ、わざわざそんなの聞いたの!?」
「由紀先輩から教えてくれたんすよ、勉強会するから連れてきてって」
「それなら直接言ってくれればいいのにーっ」
うちが由紀ちゃんと仲良くなったのは、中学に入ったときにクラスが一緒だったとき。それから、よくうちのことを気にかけてくれるようになったんだっけ。定期テストの前に毎回勉強を教えてくれるのは嬉しいけど、ちょっとはうちだってできる……はずだから、たまには放っておいてくれてもいいのに。
「あたしだけ置いてくのも悪いからって、誘ってくれたんすよ、あたしと同じ学年の子も呼んでるみたいだし。……それに、志乃先輩にもちゃんと連絡入れたって言ってましたよ?」
「あっ、……今日携帯見てなかったからわかんなかったや」
「それじゃ、あとで連絡しといてくださいね?あたしも一緒に行きますから」
「わ、わかってるよぉ……」
拗ねてるとか、そういうわけじゃないし、有里紗ちゃんが、うちのこと考えて言ってくれてるのもわかってるけど、……それでも、心の中のモヤモヤは、なかなか晴れてくれない。
「じゃあ頑張って午前で終わらせたら、午後から一緒にプール行かない?」
「……もう、ちゃんと終わらせたら、ですよ?」
「やったっ!一緒にがんばろうね!」
そう一緒に隣を向くと、なぜか赤くなって、うつむいてる有里紗ちゃんが見えて。……やっぱり、かわいいな、それに……、有里紗ちゃんも、一緒に出掛けるの我慢してたんだなって、心の中がぱあって一気に晴れる。おんなじ気持ちってだけで、なんか嬉しくなるのは、何でだろう。
「もう、みんないるんだから静かにしてくださいよ……っ」
「ご、ごめん……」
「とりあえず早くシャワー終わらせないと、風邪引いちゃいますよ?」
「うん、わかってる」
なんだかもどかしいけど、満たされてくような、不思議な感じ。
これが「好き」っていうことなのかな。初めてだから、まだあんまりわからないけれど。