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おさえられない。

今夜から星花3弾始まるかもってのにこの体たらく。

 暑い夜、なかなか寝付けなくて、水を飲もうとベッドから降りる。

 確か、冷蔵庫に麦茶があったはず。有里紗ちゃんを起こさないように、豆電球の薄明りだけが照らす中、手探りで冷蔵庫を見つけて、普段使ってるコップにお茶を入れる。

 一気に飲み干して、それでも体の熱は冷えてくれない。有里紗ちゃんに浮かされて、溶けちゃいそうな頭も。


 また、有里紗ちゃんのベッドの前まで来てしまう。闇にも慣れた目は、ほのかに白いその顔が見えてしまう。うちよりも一個年下のはずなのに、背も高くて、胸だって大きいし、ずっと大人っぽくて。長く伸ばした髪も、さらさらしてて綺麗で。……気が付いたら、『恋』する気持ちでいっぱいになっていた。


 おかしいよね、『友達』だったのに。そのままの関係で、ずっといたのに。

 ずっと『好き』だったけど、こんな風に心を乱されるものじゃなかったのに。


 ごめんね、止まれないよ。有里紗ちゃんのこと傷つけちゃうの、分かってるのに。

 『好き』なのに、……いや、『好き』になりすぎてしまったせい。

 

「有里紗ちゃん……、好き」


 唇にするのはこらえられたけど、唇を有里紗ちゃんに触れさせてしまうのは止められなかった。今度は、普段隠れてて、きれいに見えたおでこに。

 それだけで、心臓がきゅうって痛くなる。鼓動が激しくなるのも、体が火照っていくのも。初めて、有里紗ちゃんのほっぺにちゅーしてしまったときと一緒。


 こんなに苦しいだけなのに、どうしてしたくなっちゃうんだろう。有里紗ちゃんのこと傷つけて、うちも、その度に乱されていくのに。


「……おやすみ」


 その声だけ残して、慌ててベッドに潜り込もうとして。


「あ、……志乃先輩も、寝るとこだったんですね?」


 その声に、思わず体が凍り付く。一瞬で冷えた頭に、体中が冷や汗でびしょびしょになる。 

 

「うん、ちょっと熱くて眠れなくて、お茶飲んできたとこなんだ」

「あたしも、これからそうしようとしてたとこっすよ」


 でも、絶対気づいてるよね、うちがちゅーしたこと。

 

「今日暑いもんね」

「そうっすねぇ、こんなに暑いと嫌になっちゃいますよ」


 否定の言葉に、どうしたって胸を撃ち抜かれそうになる。嫌われてもおかしくないことを、してしまった自覚があるせい。

 さっきお茶を飲んだばっかりなのに、もう喉がからから。もう一杯欲しくなるけど、これから寝るとこって言っちゃったし怪しまれちゃわないかな。


「うちも、もう一杯飲むから」


 そう言って、さっき置いたコップにまた注ぐ。せめてもの罪滅ぼしにと、有里紗ちゃんの分も。


「ありがとうございます、先輩」


 そんな風に言わないでよ、私が有里紗ちゃんを傷つけちゃってるのに。


「ううん、いいの」


 そう言ってごまかすことしかできない。謝るには、まだ勇気が足らなくて。




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