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輝く星に伸ばす手を。  作者: しっちぃ


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わたしのほし。

「今日も暑いっすね、志乃先輩」

「ほんとだね、有里紗ちゃん」


 後ろから声をかけてきたのは、部で作ったらしいシャツを着て、タオルを首にかけた有里紗ちゃん。騒いでるセミの声を切り裂くような明るい声に、思わず笑顔になる。

 違う専門ではあるけれど同じ陸上系の部活だからか話題にはなっていたみたいで、お互い名前は知ってたけど、仲良くなったのは、同室になった今年の春から。一緒の時間を過ごしてきて、有里紗ちゃんのいろんなことが分かった。底抜けに明るいとこも、でも意外に女の子らしいとこがあるのも。

 

「じゃあ、早く帰って、食堂行こっか」

「そうっすね、もうお腹ペコペコっすよ」

「うちもー、練習きっついもんね」


 もう夕方だっていうのに、日はまだ明るいし暑い。お風呂に先に入るのもいいけれど、お腹が空いてたまらない。まだ開いたばかりの食堂には、運動部の子たちの色とりどりのシャツがちらほらと見えるくらいでまだ空いている。もう夏休みだけど、ほとんどの子が寮に入ってるせいかそんなのも気づかなくなる。

 二人で隣同士の席のとこに荷物を置いて、食券を買いに行く。今日は何があるのかは、まだ見てなかったけど、うちと有里紗ちゃんは、大体いつもおんなじのになる。


「あ、今日のA定食カルビの焼肉じゃないっすか!」

「えー、ホントだ、やったー!」


 年甲斐もなく、そんなことではしゃいでしまう。練習でくたくたになった日は、ガッツリとしたものが食べたくなる。そんなとこも、二人ともおんなじで。

 結局、いつも二人で食べるときには、いつも同じ晩ごはんになる。お昼は、学年も部活も違うから、なかなか会えないけれど。

 二人で並んでごはんを取って、一緒に手を合わせて食べる。お腹が空いてしょうがなかったから、そこから先は何も見えなくなる。


「はー、もうお腹いっぱいだよー」

「ホントっすねぇ……」


 夢中でご飯をほおばってたのに、食べ終わった瞬間に力が抜ける。

 練習のあとのごはんは、おいしくて大体こんな感じになる。おいしくて、幸せ。

 有里紗ちゃんのほうを見ると、うちと同じように背もたれに体を預けてた。


「ねえ、汗いっぱいかいたしお風呂でさっぱりしよ?」

「いいっすね、さっすが志乃先輩!」


 うちと有里紗ちゃんて、けっこう似たもの同士かも。だからかな、こんなに気が合うのは。

 年も一個だけ違うし、まだ同じ部屋で暮らすようになってから半年も経ってないけど、ずっと近くにいた親友みたいに思える。今のままの関係でも、『親友』とはいえるのかもしれないけれど。

 こうやって、二人でずっと親友でいたいと思ってた。……あの時までは。

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