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片倉トーリの日常なる非日常  作者: 十ノ口八幸
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不条理と条理の日常〜青年〜始まりの出来事ー施設ー

町の近くに転送されたという事を二人が理解し、持っていた物が脈動して何かあるのだと即座に納得した。


しかし知っている町でない事が二人の足を鈍らせた。

数年の間に一人は書物による知識。

一人は現地へ赴いての視察を兼ねた仕事。

世界の様々な歴史や文化に知り触れ世界の国に内包する町や村を全て把握した筈だったが。

この町は二人共に知識や経験でも知らなかった。

知らない事は命を危ぶむことである。

なので二人の行動は速く別々に行動しようとして同じ門へと同時に到着し同時に通行証を提出した。


二人共に牢に入れられた。

見せた通行証に問題は無かったが手錠され裁判無しの処刑が決まったのだ。


考えた。何が間違ったのか。

何を間違ったのか。

そう考えを幾つも巡らせていると突如、牢から出され幾つかの質問に答えて二人は釈放された。

没収されていた荷物も返され居住許可書なるものも持たされて理由も解らずに後にした。

二人は飲食店に入って適当な席に座り注文してから同時にため息を吐いた。

目を合わせると何方ともなく薄ら笑いを浮かべてまた息を吐いた。

荷物を足元。

テーブルの下に置いて水を少し飲んでこれからの方針を話し合った。


方針は決まった。

最初に町の散策。

調査して全体を把握すること。

細かな事は後にして大まかには知っておこうと言うことで別れて行動していく。


町の大まかな概略図を見つけて頭に叩き込んでいる。

暫くしてから目的地を絞り向かおうとして後ろに誰かが立っていることに気づいた。

振り返る前に痛みがあり、そして頭に何かを当てられ。

動くと殺す。動かなくても殺し尽くす。そして質問に答えられなかった場合も殺し消す。では質問だ。統合施設に用があるのか。

という難題を突きつけられ動かず動き投げられた質問には形を残して逃げた。

その鮮やかさに相手は動くことを忘れたように止まり気付くと辺りは薄暗くなっていた。


一方。

店に入っては色々と物色しながら店員に質問していた。町の成り立ちから始まり。名物。名所。名品。そして現在の統治者。全てを変わりなく質問していった。

結果。

幾つかの差異が見られ許容範囲の内にあるのだが、一つだけ逸脱している部分があったので合流してから考えることとして最後にとある施設へと足を運んだ。

その施設には町の様々な品が納められ展示されていた。

住人は入館無料らしいので一応として足を運んだのだ。

しかし、拒絶された。

居住許可書を見せても更に表情を崩して警備を呼ばれたので諦めて出ていった。

仕方なく宿に戻る事にした。


宿には険しい表情の相方が何かの紙を持っていた。

首を何度も捻りながら唸って呟いていた。

近づいて椅子を引いて座っても気づかずに何かを呟き続けていた。

呼びかけて気づいたのにまた紙に目を移した。

イラッとしたが何かを机の上に出してきた。のだが取ってみても表裏に何も書かれていない古紙。

何かの意味があるのだろうと考えるに至り仕舞っておく。

天井を見ながら息を一つ。

すると店員が注文を取りに来たので名物を頼んだ。

料理を待つ間に色々と聞いてたが反応はなく。

持ってこられた料理を一人で黙々と食べていく。


思ったより美味しくお替りを頼んで食べつつ相手を見てみる。まだ何かを言いながら唸っていた。

飲み物のお替りを頼んで注いでもらいながらこの先をどうするかを考えてみる。

目的を設定し直さなげれば迷子になるだろう。

「て、居たのか。」

いきなり言葉を掛けられ喉に詰まりかけたが何とか飲み込んで答えた。

軽い問答をして。そして其々の情報合わせを行い、食事を再開して暫くは雑談に興じていた。

「それでこれからどうする。」

「一度戻って合流だな。」

頷いてから二人は店員を呼んで勘定し店を出た。といっても二階へ上がるだけなのだが。

行動が分かれる。

一人は再び外へ一人はカウンターへ向かった。

外が暗いとはいえ建物からの明かりが十分にあるため少し情報収集をする。

一人はカウンターの椅子に座り飲み直していた。


外に出て看板を調べていく。

意味は無い。

ある時に芽生えた趣味である。

国や町。村によって看板の違いに気づいて気付くと看板マニアになっていた。

形も材質も文字の癖も製作者によって違いがあり面白い。

本心を言えたら。貰って飾りたい。

しかし看板は大きく旅で持つにも邪魔なので見ているだけ。

時折市に出ている場合もあるが稀である。

下手に所持して証明できなかった場合は罪に問われ収監される場合もある。

看板はそれ程に軽くはなく、一つの証明書のような役割を持っていた。

それが大店であるなら尚更で、証明書不所持の場合はその場での確認と減点。

偽造文書の場合は連行又は拘束の上に詰め所での取調べ。

裁判を経て刑に服する。


そんな事を考えながら歩いていると前から人の集団が道幅を埋めるように歩いてきていた。

隅に寄るスペースもなく脇道への道も無い。

なら。


一息ついて眼下を見る。

先程向かってきていた集団は何事もなく進んでいたが最後尾の数人が止まった。

何かを探しているのだろうか。仕切りに周囲を見ていた。

悪寒が走ったので身を隠した。


先を歩いていた集団の最後尾の独りが振り返り、どうしたのかと聞いてきた。

止まった一人が上を向いていたので見上げるも黒に染まった空に街灯の光がぼやけて見え高い建物の先が良く見えないだけで何もなかった。

「いえ。何もありません。明日の事で少し緊張しているのかもしれません。」

「はは。そうかい。まぁなんだ。今から気を張っても明日に疲労が残るだけだ。今は楽しもう。」

見あげていた顔を正面に戻して軽く言葉を返して集団に合流し町の喧騒へと馴染んでいった。


一息つきたいが、つけない。

向けられる空気の流れが自分を探していると認識できているから。

僅かな不信を察知すれば襲う迄はなくとも詰問はあるだろう。

気配を同化し雰囲気を偽り呼吸を変えて移動して見る。

察知する空気は自分をすり抜け目の前の物体に接触して戻っていった。

止まって空気の流れを透過する。


距離を離して随分と経つ。

気づくと町の端にある屋上に居た。

低い壁の向こう側には彷徨く影。

しかし入ってくる気配はない。

振り返り違和感を覚えた。

何がどうか。と聞かれたら答えられないが何かが可笑しいと直感が囁いている。

気になるなら放置せず調べ尽くして満足な答えを出しなさい。

それが他者に取っての不都合であろうとも。

と昔言われた気がしないでもない。

気になるなら迷わず行く。

呼吸を整えて足に力を溜めて解き放つ。


屋上伝いに移動したので思っていたより時間は掛からなかった。

今は違和感の感じていた建物の前にある屋上に隠れながら見ていた。

何も起こらなかったが諦めて帰ろうとし不意に足音を殺して向かってくる気配を感じた。

感じられる気配は一人だがその纏う空気は重く鬼気迫る気配を発していた。

息を殺し気配を馴染ませ注意を散漫にして通り過ぎるのを待っていると目の前の建物の前で止まった。

気配は周囲を警戒していると認識できている。

大丈夫。

そう言い聞かせるように呼吸を安定させる。

次第に気配は小さく遠くなり消えていった。

安定した呼吸に変化が現れた。

最初は普通であるのに荒くなり呼吸の仕方を忘れたように出来なくなっていく。

所謂過呼吸というものだろう。

それだけではないのも理解している。

なので目の前がぼやけて気を失いかける前に影が現れ見ていた。

落ちるような気分だが完全には落ちない。

だが体に触れるもの。

そして縛られる。

運ばれ乱雑に叩きつけられる感覚と痺れか何かの影響か声が出せない。

痛覚は普通にある。

だが呼吸は出来ても声は出せない。

混乱の中で狭い視界に何かの足が近づいてくる。

目の前で止まると頭上から響くような声がする。

直接頭に語りかけている。ではなく感覚が狂っている影響だろうと何となく理解した。

意識の朧気な状態で幾つかの質問を投げかけられた。

それに動く範囲で首を動かしていく。

そして最後の質問とされた事に対しては大声で否定したかった。

本当に関係なかったから。

しかし首を振っても信じてもらえず挙句には蹴りが見事に鳩尾に入り苦しい息が一層に苦しくなり限界を超えて動かすことが出来なくなった。

これが最後なのかと虚しくなった。


体の凝りを解すように屈伸運動をし続けている。

記憶は飛んでいるが身体に残された疲労は現実を直視するに充分で。町に来て一月経過していた。

知っていた。

意識は朧げであったが終始覚えていた。

あの後に何が起こったかを。

そして身体が無傷で済んだ理由を。

鳩尾に入れられた一撃の後、更に追加されることを覚悟していたが無かった。

もうそれどころでは無くなってしまったからに他ならない。

突如四方から乱入者達が入ってきて放置されその場所を乱入者達に制圧された。

リーダーらしき者は厳重に拘束され自死できないように徹底的に動きを封じられていた。

乱入者の一人がリーダーを調べ終え此方へと近づいて中腰になりながら質問してきた。

何者か。

目的は。

規則を知らないのか。

他にも質問されたが全てに答えることが出来ず、とはいえ意識が疎らで真っ当な返答など出来なかった。というのが正しい。

何も答えられずにいると呆れたように息を吐き出し誰かに指示を出して外へと運び込まれた。

その後は医療施設の玄関へ落とされて放置。

関係者が来た時に多少の事があったがそのまま入院となり思いの外、心身共に疲弊していたのか半月程を余儀なくされ退院した後も慣らすために半月使って現在へ至った。

最初の存在が何か。

乱入者達が何かについては調べようにも手掛かりもなく途方に暮れるしか無かったが。

あの時の位置を思い出しながら壁伝いに進むと目的の建物は瓦礫の山と化しており簡単に分からないようにされていた。

仕方なく隣の建物の屋上へ。

違和感は無かった。

あの違和感はないが。

記憶と遠目に見える現実は。

何もなく。

違いがなかった。

違和感の正体が何か。

それはもう過ぎた事なので別にして。

屋上を後にしながら次の事を考えている。

と、あれは。と言葉にして失策だと後悔した。

小声なのに。

遠いのに。

喧騒なのに。

耳聡く聞き分けて人混みを掻き分けて向かってきたのは。

町の住人。

名前は覚えてないが幹部だという事だけ思い出した。

少し警戒していたが杞憂とやらに終わった。

声を掛けたのは心配と、ある会議に出席してもらいたいと言うことを伝えて人混みの中へと消えていった。


調べたい事は無くなり時間を持て余してしまいそうなので幾つかの店で雑談をして宿へ帰った。


相方が帰ってこなかった。

何故か。


しかしこの時。事態は何かでは面白く。

何かは不満。

何かによると好都合な部分もあり不都合な事もある。

そんな状況に置かれていた。

始まりは。

相棒かもしれない存在の昏睡。

外へ行く背中を見送りながら酒を嗜んでいた。

勿論。情報収集に抜かりはない。

しかし数刻後。

思いも寄らない事態が起きていた。

駆け込み息を整える事もせず店内を探していた。

目標を見つけて駆け寄ったのが自分。

そして相棒かもしれない存在が意識不明で運ばれた。

今すぐにこの場所へ行けっ。といわれ渡された紙には簡単な地図が描かれていた。

慌てず。

軽く酔っていたといえのもあるが歩いて目的地へ向かった。


入ると患者の一人が医師を呼びかけ部屋から出てくると手招きして部屋へ入った。

ベッドには相棒かもしれない存在か眠っていた。

何があったのか聞いてみると。

玄関先で倒れていたという。

頬を叩いたり軽く揺さぶったりしても起きる気配はなく危険と判断し急いで処置をした。

その後に施設内に者に聞いてみると関係者が居るというので探してもらい。この状況となる。

幾つかの質問をして。

そして。医師からは原因不明で手の施しようがない。という返答。

ならこうなった原因を突き止める為に奔走し何とかある建物まで辿り着いた。


建物はもぬけの殻だった。

しかし人が居た気配はあった。

床には見えない足の跡。

見える範囲でも複数は居た。

そしてその中心に一人足の側面を向けているのが。これが相棒かもしれない存在だろう。と検討をつけて。

足の動きを追っていると複数が少数を襲撃した様で。

少数を圧倒したのだろう。一人に対して何か調べていたのか一つの足跡は暫く動かなかった。

終わると倒れていた相棒かもしれない存在に近づき多分、中腰になって何かを話したのだろう。そしてその最後に相棒かもしれない存在を担いだかの方法でこの建物を出ていった。

と此処まで当たっているのだろう。

何故なら。

「ああ。隠れるなら殺意は馴染ませるか紛れ込ませるかした方ご賢明だと思うが。」

背後に気配が現れた。

遠く、対処のしようも無かったので無視をしていたが、不用意すぎだろうと思いながら質問して。

返答は肩から腰に掛けての鋭い痛みだった。

倒れはしない。

なので振り向きと同時に腕を振り抜いた。

空振りに終わったが。

相手も数歩退いて構え直していた。

質問することにした。

「お前達は何者だ。答えられないのか。俺はお前達が高位の関係者だと考えている。それか近しい何か。おっと。これ以上の事をしようとするなら世界を相手取る気がはあると判断して戦争突入もあり得るだろう。」

攻撃を載せようとした構えを途中で解いた。

「この場を理解して侵入したと思っていたがそちらも何者だ。答えよ。」

言葉巧みに躱す。という選択もあったが傷も深く危険なので素直に身の安全を保障する変わりに現行の身分を明かした。

その証明も見せた。

直後に笑われ怒りを向けられ襲われそして目の前の全てが薙ぎ払われた。

誰かは言うだろう。

神の御業。と。

限界だが意識を保つだけでその場に倒れた。血は流れ床を汚し視界は次第に暗く重く霞んでいく。

だが何時まで経っても意識は途切れず。

確信を持って起きると背中の傷も床の汚れも無くなっていた。

そして襲撃していた者達は壁に預けるようにして無傷の状態で気絶していた。

全身が震え天を仰ごうとして第三者が現れ生け捕りにされた。

その第三者の正体が何者かを知らなければ良かったと後悔することになろうとは思いもしなかった。

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