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片倉トーリの日常なる非日常  作者: 十ノ口八幸
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不条理と条理の日常~少年~終ー公国ダクセンイクチド

索敵展開して周辺に動くものはない。

向かうのは地平の向こう側。

安心して動くものはなくとも警戒し過ぎるというのはないだろう。

切っ掛けは突如というのもあり得るのだから。

慎重に移動して幾日目で漸く目的地へと着いた。

だが、其所には誰もいなかった。

そして。()()()()()()

見えて認識して理解できたのは荒野に存在している一つの朽ちかけた木が鎮座し寂れ悲しみが湧いてきた。

悲しみに落ちかけると突如の痛みで我に返りポケットに忍ばせていた物を取り出して見ると形状が変化し突起が生えて点滅していた。

どうやら沈み、混んで落ちて堕ち尽くして一帯と同化していたかもしれない。

何故なら。

今は全てが暴かれていたのだから。

皮膚を撫でる重い流れ。鼻に纏わり付く風。一歩を踏み出すのに躊躇われる周囲には絡め取られた生物の成れの果て。の更なる先。

器である体だけではなく不可視の内容物さえも栄養源にされ陵辱する最悪の光景。

枯れ掛けたように見えていた木。それは本来の姿を晒して大木を

現し空を埋めつくす色とりどりの葉に覆われた枝が降り注ぐ太陽の光を独占するように遮っている。

その影響は地面を見れば判る。

水気も一切なく。硬く枯れ果てた地面を覆いつくす大木の根。

枝葉の影響は大きく大地を隠す程の広大な影を造りだし一層の闇をもたらそうとしているかのような恐怖。の類いはなかった。

変わりに呆れ返る気分が両手に漲る。

ふはぁ。と声に出しながら一歩を踏み潰し二歩を踏み抜くと亀裂と崩落が広がり地を通り越して諸共に落ちていく。

大木は笑っているかのようにさざめいていた。

下らなさすぎて吐きたい気分になる。


落ちること数分。

背後から強風が身体を包み速度が止まると同時に足が着いた。

どうやら到着したようだが見えるとしたら暗闇しかなく。

と背後から開く音と。

「これは驚いた。生きたものが落ちてくるとは。何百ぶりであろうか。」

「ええ。ですがこれは。ふふ面白い線が絡んでますね。」

振り返らない。振り返れば何か絶望する。と直感が警鐘する。

近付く足音は一人分。

「それにしても上の装置は機能していないのか。」

「それはないでしょ。早朝に点検したばかりですからね。」

「なら、まさかっ。」

「ええ、現れましたよ予言の存在が。」

「おぉお。ついにこの時がきたのだな。ならば。」

「これで我々も永久を生きることが出来ますね。では捕縛してください。」

全身が見えない何かに絡められ巻き取られて指すら動かせなくなった。

「危害は、今。加える事はない。安心してください。我々の大事な方なので。では行きましょう。」

見えない力か何かか意識とは無関係に足が動く。

驚きと鼓動が早鐘を打つことに動揺し脱出を試みようとして止められた。

「無理に動こうとすると食い込み肉体がバラバラになりますよ。」

と。

言葉が真実かは判らない。だが素直に従う。

そうしないと完全確実に絞め殺されるだろう。

全身の力を抜いてありのままを受け入れ連れていかれるのだった。


拘束されて連れてこられたのは広場にしては狭い区画。

存在するのは高すぎる台。

そして数えられない死んだ目をしていた人々。

希望を諦めきった表情である。

二人は台に登り人々を見下した。

「遂にこの時が来たれり。予言の碑文に導かれし存在が我々の道を指し示すため神託を持って顕れたもうたのだ。」

轟音。

「え、え、うえ。何。何々何よ。」

混乱した。

そういう何かを掛けられた訳ではないが、理解出来ないままに連れられこの広場にある台の前に固定され立たされて所謂、神様の遣いとされた。

嬉しいわけはないが、その神様という対象が敬愛し尊敬し畏怖し、そして全てを捧げると誓った神様でないのは不服と不満がある。

あるにはあるけどこの状況で否定したら命は無い。

なので推移を見守ることとした。

「この轟音が何よりの証明である。さあ。同士諸君。かの愚者共に我ら神の天罰を代行するのだっ。」

更る轟く音が走り染みる。

呆気に取られるとはこの事なのか。と見ていた。

「では我らが代行者よ。神の言葉を我々に聞かせくださいませ。」

聞かせてくださいませ。と言われても混乱に困惑に混濁する。

何を根拠に神とやらの遣いとされたのか。この際脇に置いても理解できない。

なら教えにある言葉を拝借し自分の言葉を混ぜて話してみよう。

そうして口を開こうとして声が出なかった。

音として短く出るが言葉の羅列としては成立せず。嫌な汗が流れていく。

「どうしました。代行者。はっ。まさか今はまだ言葉を託す時期ではないと仰るのか。」

困惑しながら適当に相槌を打っておく。

「なら仕方なし。」

信者達に向かい抑揚を付けて話し、解散となった。

何気に危機を回避した。


ある部屋にて座らされた椅子に縛られたように立ち上がれない。でも頭は自由に動かせる。

それと先程の様に言葉を出せなくなるというのも無く、今は自由に喋ることが出来る。

「そ、それで一体何なんですか貴殿方は。何をさせようというのですか。」

「お前が何者かは知らぬ。が、しかし我々の求める品を有していたことは正に僥倖と言うべきであろう。」

何の話をしているのだろうか。と呆気にしていると。

「お前が何を目的にこの場所へ来たのかはこの際どうでも良いのだ。我々の極地。そうこれを運んできたのだからな。」

「それは、おぃおい。」

一人が持っていたのは。この地点へ向かうために渡された宝石。

先程の言葉の意味が理解できていなかったが目的とはこの宝石だと分かったが、これは向かう直前に渡された正体不明の何か。それを大事そうに見せてきて。

笑った。

でもその色は元の色から離れ変色していた。

宝石が生きているように内側を何かが這っているように点滅するかのように変わり、最期は濃い茶色になって止まった。

「おぉ。これは正に我々に幸在らんという神の思し召しである。この色は近く世界を統べよという天恵である。」

彼は心で突っ込んだ。

そんな事は絶対にあり得ない。

心酔する神が絶対に許すはずがないのだから。

でどこの人達の崇拝する神とはなんなんだろう。 という考えをして見守っている。

「さあこれより永きに渡り苦しめた者達を我等が神の元へと誘う計画を。開始する。これは聖域戦争である。」

轟く声に共鳴するように同時多発的に世界中で反政勢力が反旗を翻した。

他の部屋と継っていたのか部屋自体が聴こえてくる轟音で震えていた。


違う場所。

異なる時間。

異質な存在達。

その姿は正に怪物。

伝説に語られる異形な者達は目の前で成された事を理解しながら恐れて一歩を踏み出した。

それは世界の転換点と呼ばれる出来事。

その序章に過ぎなかった。

この先。幾年もの間に記録や記憶に刻まれるであろう災害にして事件。

又は事故。

人の記憶に生物の記憶。

そして土地の記録に世界の記録。 永遠に刻まれるであろう。最高の誉れ。

歓喜し狂気し嘲笑する。

彼等彼女等の永遠の笑いが絶えない事を世界が記憶し記録する。

それが本懐にして本望。

肉体は失えば終わりだが。記憶や記録は簡単には消せない。

そうして残された物を依り代にして何度も世界に顕現し創り変える。

自分の望むままに。


だけどしかしである。

その序章は始まる前には終わっていた。

各地にて潜ませていた潜伏者達は笑い蔑み嘲り。屈辱を掲げて怪物達を扇動して村町街国を蹂躙するよう進行させる手筈であった。

のにだ。

誰かは冷め。誰かは笑い。誰かは咽び泣き。そして誰かは見ようとも聞こうともせず眠り続けていた。

「ぁあああ。それぞ正に自分達の夢の結実なのだ。」

「はっはははは。そうだっ。これが俺達の妄想を現実にする力の一部。さぁ愉しもうじゃぁないかっ。」

「でも遅々として愚鈍だよね。思ったより時間を食べるかも知れない。」

「良いんじゃないかな。もう戻れないんだし。後は成るようにしか成らないからね。」

「違いなく正しい。なので。一押しとして放ってみたよ。」

指差す方向に白く光を走らせ柱が形成され内側から巨大な影が出て来ようとしていた。

「んええか、完成していたのおぅ。」

「うん。無人起動進化装置。その名も《次元曲滅体》。」

「んぅほっ。何か漲ってきたよぅ。」

「おいおい。早いて。」

「え、待って何。あれ。」

その言葉に誘導されて示された方向に目を向けると空から何かが落ちてくるというより降臨するかの様に先程の柱より強い光を周辺に走らせながら降り立っていく。

観察していた者達は瞬間に全身を貫き刻み燃え盛るような感覚の中で生を渇望し現実へと戻された。

全員の全身が悲鳴という絶叫たる警告を放つ。

逡巡など論外。全員が理解してその場を離れ直後に元いた場所という空間が()()()()()()()()()

誰かが言葉を発するより早くに認識外からの追撃が周囲を蹂躙していく。

「おいおいっ。何がどうなっている。計画外は全て処理したんだろう。」

「そのはずです。我々のリストにも漏れはなく。全て完了済みと成ってます。それに現場へは全員が直に見回っていますから確実です。」

「なら何だあれは。聞いてないぞ。」

「もしかして。」

と希望を持って向いても。

「し、知らないよ。あんなの。だって曲滅次元体は製作するにも時間と資金を幾ら費やしたんだと思うのさ。」

「ならあれは。一体。」

とこれまで一切無視か無関心それか明後日の方向を見ていて様々を貫いていた者が起きていた。

「なぁお前らは何を掴んだと考えて思い違いをしていたんだ。」

振り向くは知っていて知らない存在。認識は齟齬にして歪まされていた。

「なぁ誰だとは聞くなよ。今はこの本当につまらない計画の破綻を見届ける事を寛容して次に繋がるとは思わない事だ。蹂躙した。だから何だっ。これは双方に突き刺し紛れ込ませた結果を見届ける為だけの観察。戻れないだとかふざけてるよな。ならこれからを見てみろよ。観察者気取りよ。」

そして指差す方向は後に現れた知らない存在が場の全てを無に帰する行動を起こしていた事実を受け入れざるを得なかった。

「なぁ何をもって自身が世界の中心として存在し動かしていたと認識した。なにが自分を求めていると思考した。なぁ現実を知ろうか。高々数百の歳を重ねただけの存在だろうがよ。」

一時的にでも引くことを空気で促していたけど全員から攻撃をされたので反撃していた。

結果を全員が呻きながら地面に倒れ見ていたのは背後。その者の存在を無視してもお釣りが来る存在が近づいていた。

皆が小さく感嘆に感涙し感激し咽び見ていた。

自分達が敬い畏怖しながら羨望した存在。

『神』たるものの根元にして根源を持った存在の世界に対しての顕現である成就。

だが、その背後の存在である神に対して。

「おいおいおい。少しは自重しろよ。この場に御わすだろう方々とやらはお前含めた複数を崇拝している無能共々。なら仮に。だ。いや違うな。借りにも神とやらなのだから威厳と虚栄を貼り付けて現れる事を少しは努力しろ。抗えよな。この舞台は安くて臭すぎてたまらんよ。我慢してでも役に成り切ろうか。ぁあ゛。」

瞬時に全員が意識外にて肉体を動かして襲撃を再開させる。

しかし先刻と同様に地面にて肉体が横たわっていた。

「なぁあれを『神』として。そして神が存在したとして、それが人より強いと誰が決めて定めた。神とは畏怖し敬い羨望を向けられて初めて《個の力》というものを行使できる只の装置。なら撲滅殲滅、それと消滅を現されてしまえば自身の立ち位置は、理解するだろう。現れて早々に何だが。役不足過ぎて甚だしいぞ。おいっ。」

拒否したい。違う否定だ。

全てに対しての何かに対しての否定だ。

しかし目の前の現実は全てを肯定していた。し尽くしていた。

現れた神は世界の理そのもの。何者で何物であり得る存在に対して認識外の何かは簡単にそして簡潔に神を腕の一振りで世界から除滅させてしまった。

その表情に感情はなく。たった一つの作業を終えたというもの。

悲しみとか怒りとか。そんなものでも。なかった。

嬉しさ楽しさ。それでもない。

そう冷めた視線を向けて人形の様に神を世界から消していた。

それを知ったのは自分のみ。何故なら。

誰かが叫んでいた。

心が有りながらこの場に非ず。なら現在、見ているこの光景は何なのか。

理解して。

認識外がナニモノでもなくこの世界にとっての完治も根治も不可能な病巣。

それが目の前で存在している。ナニカ。

ならば遣ることは一つ。病巣の物理的摘出。

でも、意識は覚醒状態であっても肉体が動かなかった。

そしてその視点での時点で無色になり自分という自我が溶け消えていた事に気付いて絶叫すら赦されず。

最後に残った感覚で他も同様な事象で世界を閉じられていたと知った事が最後だった。


「『なぁ簡単が終わると思ってたのか。単純に終幕は有り得なぁい。これは取り立て。お前達に連なる存在が過去という古代に奪った者を一片も残さず返して貰う。拒否権なんて無いし許されない。赦す事さえさせない。そもそもの話、だ。存在をアレに課したように割いて刻んで磨り潰して尚も細々としてその内に取り込み、感情さえも糧として同化させたならそれらは全て同様に犯し尽くして尽くし終えて絶望しながら失望して消える状況を噛み締めながら終わりなき永遠をアレの糧として彷徨い終わらせない終われないよなっ。お前達は過去も現在も未来も全てに塗れながら自分の仕出かした行いの結果を見続ける事だ。何かの切っ掛けで表にでる可能は無くは無いが。簡単には行かないだろう。ではサヨウナラ』」


遠くから悲鳴と絶叫が絶望と希望を混ぜ失望と信頼を拒絶して同時に聞こえていた。


誰も知らない光の強い場所に串刺しにされたこの国の最高権力者達。

その筆頭は更に酷い損壊であり見るのも憚られる。

残ったその他の瞳に命は失せて久しく。それで異ながら肉体に朽ち果ては見受けられないという矛盾を表現している。

だが一様にして全ての表情は狂気と恐怖を合わせた様でその瞬間で時を止めていたのだった。

世界へ宣戦して一手で決着をと長年の計画を発動し、直後に現れた不可解すぎる存在は全ての根を絶やすように蹂躙し、そして食していた。

長年の経験から危険と判断しその場を逃げるようにして最高権力者達の判断を仰ごうと本塔の深部へ到着し扉を緊急のため諸々を省略し入室すると先の光景が表れていた。

「お、到着ご苦労さま。いやぁ。本当に御膜を破るのnI苦労したぞ。御礼を言っておく。あれで簡単に破れたかNa。まあ他にも仕込みをしていたが、計画は最終段階へ移ろうか。あ、俺か僕か私か何かは知らなくてもこの先はないから教えない。」

焦りも在ったのだろう。

常ならこの様な事は容易に対処していた。

だが目の前の存在が手にしていた品に目を奪われ絡む力の糸を断ち切ることが出来ず。この世界最後の光景は。全てを壊し潰した存在の()()()()()()だった。


「『さて、面倒な呪とやらは微かに在る。まあ大分薄れてきたけど。ではこれにて最終段階への手続き的な何かは終わった。それと同時に始動もした。後は勝手に動いて狂って変わって進んで弾けて元の鞘とやらに治まるだろう。はは長かった。いや永かったと言うほうが正しいのだろうかね。笑えねえわ。』」

手にしていた茶色く細い骨に対して物質の力を込めて砕くとナニカ以外の命で無い空間で何処からか甲高く短い音が一瞬鳴り響き、そのナニカは確かに口端を上げると全てを無かった事にするように灰へと完結させて姿を消した。

「『そんじゃあ総仕上げの準備と行こうか。なあ(サキワレ)。』」

先程より短い音が鳴り灰が流れて何処かへと消えていった。

そうして一つの国は。

いや。

一つの地点は空も大地も全てが世界に対して初めから存在して居なかったよう造り変えられ収縮していた。

そう地下を拠点とする者達の対抗たる存在も同様に。


消滅地点から離れた荒野と山岳の中間に何時も何があろうと風を拒む場所が在る。

その場所は無風だからと言って安全ではなく。逆に風が無いということは動く力が略無いということ。即ち停滞しているのだ。

故に。

この地に生息しているのは小さな虫かそれを餌にする岩肌を背負う動物の様な生物。

そしてその何も無い。吹くはずのない風が瞬間であっても吹いたのだ。無論、その近辺に居た虫や生物は根こそぎ吹き飛ばされ切り刻まれていた。

風が吹きすさぶ事で周辺の環境は激変し止んだ時には草木すら生えない荒野に似た大地が出来上がっていた。

そして再びの風は優しく吹き込み一点で渦を造り出してその中心から一人の少年が現れた。

そして止んだ風と同時に地面へと足を着地させるとバランスを崩して座り込むように倒れて周囲を見回す。

「ん。」

遠くから何かの音が聞こえ立ち上がりと同時に走って向った。

そしてその先には。

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