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片倉トーリの日常なる非日常  作者: 十ノ口八幸
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不条理と条理の日常~少年~夏の転災

この世界の夏は三季の中で最も厄介で乱れの季節とも言われている。

各季節の寒暖差は激しく特に夏は極端を極めている。

短時間など易しい方だ。夏季は瞬き一回の間に気温は数百を越えて変化する事もある。

その一瞬一瞬で何れだけの命が散らされていくのか。

それ程に、この世界の夏は面倒で厄介なのである。

現在。各国に敷かれた複数の地点にありながらその観測は夏の間は意味を失う。

何せ先の通りであり、1日での変化は他の季節より膨大であり建設された書庫は半日で収まりきらない情報を蓄積させる。

過去には各国が書庫を拡大しても追い付かず取捨選択をして持ちこたえたという事もある。

しかし現在は中央と呼ばれる書庫にて一括管理されており全ての季節の細かな情報を集めているために季節を問わずその情報が研究の糧となっている。

だが夏はその比ではない。

莫大な量が瞬きという短時間で変移してしまうために中央から分岐させた分庫を各国が増設設置を余儀なくされたのだ。

集約したとしても過去の繰り返しと誰かは気づいたであろう。

管理も各国が担うが量を捌けるのは微々たるものであり今回の会議もその書庫を主題にしたものとなるだろうと各国上層部は考えていた。


しかし考えられる以上に状況は深刻。

始まりは大陸北北西に位置する中規模の国。の末端という簡素な地理的には差程重要でもない場所。ので更に外れに位置する地点。

事象は突然に起こったと後に知られる。

その場所には村があり、人口もそれ程多くはないが平穏で長閑な暮らしを営んでいた。

が突然その村の中心で崩落が発生した。前触れも理由も解らないまま崩落は進み村含めた一部が消えた。

崩落というより消滅の方が正しいのかも知れないが。

何が原因なのかは解らない状況で更に起こったのは森林の消滅と付随する魔物消滅。

原因調査のために各地へ派遣された際に村含めた土地の消滅が確認されたのだ。

陸地の消滅との因果関係も調査中である。

実は主な調査は森林消滅であったのだがその過程で陸地と地図の差違が認められ国の上層部に確認を依頼するとその差違が確実となり更なる調査を行い。結果に全員が 絶望を通り越して諦めかけたのだが誰かの言葉を契機に奮い立ち対策を考案していった。

しかし少しずつ大陸は小さくなっている。という結果は更に暗闇の底へと叩き落とされるようでも皆が持ちこたえた。

調査は継続され、このままだと将来的には陸地どころか世界すら消えていくという。

間違いだろうと考え何度も計算をし直しても結果は覆らず同じであった。


その始まりは全ての因果をもって結ばれている。

その事実は認めざるおえず、しかし秘匿した。

賢明な判断だろう。

もし仮に一部であっても公表すると混乱等を誘発しそれに乗じた画策により更なる世界が混乱していっただろう。

そうして研究者全員が口を閉ざし情報だけは各国上層部が握る事となった。

つい最近の事である。


会議の場所は秘匿されている。関係者であろうとその地点を知らされるのは当日の直前。誰にも知られないように方法も秘匿されている。


とある日。様々な生服を着た子供達が村に集まっていた。

不安な表情をする子供達。その中で一切の不安を物ともしない子供達がいた。

点在する学園の各学年から選ばれた上級クラス。

Sクラスの生徒達である。

特に上級生達には余裕すら見られる。

学園生活は集団生活。

個々の力が大きいからと驕りは破滅を呼び込む。それを上級生は嫌というほど味わってきた。

がその1つが消滅した。

では次点のクラスが上がるのか。と言うことはない。

その学年のクラスは卒業まで空室となる。

森と同時に魔物達の消滅を目の前で直に見たのだ。

精神を病んで気力を失いSクラスは解散した。

その原因と考えられる生徒二人も組み込まれていたが、当人達は知らないの一点張りで原因も理由さえも答えない。

業を煮やした教師陣の画策によりSクラスの強制召集に踏み切ったのだ。

当初、子供達を守るためにノラリクラリと躱していたが、言葉を濁し避け姿を眩まして態度すら悪かったことで逆鱗にふれて国の召集を容認したのだ。

非難されたが上手く丸め込んで納得させた。

その手腕があれば教師陣も同じ様に出来たものを二人は一切の説明も言い訳も保身すらせずに逃げたのだ。

逃げ続けた答えがこの強制召集という理不尽な連帯責任。

クラス全員から非難の視線を向けられたが約束を取り付けて納得をしてもらった。はず。だと。思いたい二人である。

では召集されたのは何の意味を持っているのだろうか。

簡単である。

二人が起因と考えられる森林、魔物の消滅。それも地域的な小さな現象ではなく、世界規模での森林消失事件。ともいうべきその現象の発端と世界は見ていた。

だがそれだけの理由で地図から街1つ国の一部が消えたという原因へは繋がらない。

故に召集を掛けたのだ。

その様な思惑を知らずか。

各学園クラス毎に用意されたテントに向けられている意識に件の二人が擁するSクラスは肩身が狭かった。のだが二人は気にすることなく空中に画面を表示し説明含めた画面が進行していく。

終わると二人は補足説明をしながら部分的に省いたが真実を話した。

でも誰一人として理解されることはない。

全ての原因と思われる者のような存在は誰も知らないし見ていない。

上級生は云わずもがなであるが同学年であり同クラスの子達は更に怪しさと苛立ちを混ぜ合わせた視線を向けていた。

同じように見たと思いはするが、二人以外がその存在を目撃していないし、本当に存在したとして目的が解らないのだ。

もし仮に世界を征服するのなら土地を消す行為が矛盾する。魔王の復活を望むなら魔物達の消滅も意図が読めない上に無意味な行いだと言えよう。

神々の使徒。という意見もあったのだがこれも魔物を消す行為は理解するが陸地の消滅が矛盾する。

答えが出ないまま依頼者の代理を名乗る人物もからの召集が掛かった。

皆がテントを出ると嫌な視線を向けられている事に気づく。しかし無視して整列した。

何気に豪奢な衣服に身を包んだ細身の人物が足下に数台の拡声器を設置した簡易の台座に昇って軽く咳払いをする。

「我が主の召集に集まってくれて感謝する。今回の依頼は知っている通り世界に蔓延している異変調査。及び原因の究明。それと調査に掛かった費用は全て自己負担となる旨を事前に通達していたにも関わらずこれだけ集まってくれたことに謝意を。そして此方からは一切の金銭を出さないと再び心得てもらいたい。勿論、不満はあるだろうが懐事情が心許ないのだ。こうして依頼を出すだけでも我が領地には大きな痛手である理解してくれたまえ。では各地への采配は此方で決めさせてもらった。幾つもの資料を集めて出した采配だ。ではお願いする。」

簡単に納得はできないだろう。誰も何も喋らずそのまま各地へと転送されていく。

だがその中で一組。二人が所属する一年Sクラス。

全員が転送装置に乗っていて起動させても何も起こらず。もしかしたらと二人が降りると直後に装置は起動し二人以外を目的の地へと転送した。

小さな笑いを二人がする。

代理である者は素知らぬ顔でもう移動の準備に入っていた。

抗議するために近づこうと考えたが諦めた。

周囲に陣取る兵士に邪魔をされる事は見えているし、時間を無駄にすることもない。

なので二人はその場を離れて学園へ戻ることにした。


二人が道なき地点を進んでいる。

このまま学園へ戻ったとして何があるのだろうか。

罵声。憐憫。非難。考えられる事は全て向けられるだろう。

普通に考えたら逃亡と変わりなく。反論したとして誰が耳を傾けるとは思えない。

だが二人は一応として反証のための準備はしていた。

していたが、無意味だろうと認識していたし大変な事になるだろうとも判っていた。

そうして道なき地点の終着地点でとある存在が待っていた。

笑いながら手助けを申し出ても二人は信用せずその横を通り抜けようとして。

「死にたくないだろ。」

という言葉で言い知れない恐怖を覚え話を聞くことにした。

聞くだけの積もりであった。

「簡単な話だよ。これから君達をとある場所まで転送するが、その場所では全てを敵として認識した方が良いだろう。しかしその者達は相手にせず、何とかしなさい。身の安全は保証しないが君達二人なら難なくできるだろ。そうだ命を奪うというのは避けなさい。確実に問題となるから。その目的の場所へは此が教えてくれる。どんな事であっても信じて進みなさい。信じなければ、まあ普通に、判るよね。それでしてもらいたいのはね。」

契約を交わし物を受け取りそして装置も無しに転送される。

「あ、そうそう、学園は暫くしたら無くなるからそのつもりで行動するように。あと、これは処分しとくよ。意味が無くなるだろうから。」

反論返答しようにも転送は始まっており、言葉を出すよりも転送され目的地へ到着した。


二人が転送されたのはヘオガリスと呼ばれる掃き溜めのような場所だった。

世界中の不浄を集めたような場所であり国からも見放された治外法権地点。

様々な犯罪が横行するため、様々な種の人が堕ちてくる。

二人に取っての幸いは中心部から離れていて敵意の渦中で逃げ回ると言うことをしないで済んだくらいだろう。

二人共まさか生きている内に来ることになるとは予想していなかったのだが。

が二人が現れた場所、的には問題なかったが。状況が不味い事になってた。

二人の足下に人が倒れて、肩と足首を綺麗に踏み砕いていた。

これを弁明出来るならして欲しいと二人は思う。他者から見たら二人が暴行し負傷させ愉悦に浸っているように見えなくもない。

更に幸いなのは誰も居ないことである。

状況が飲み込めない二人だけども不味いと言うのは理解して、その人から降りた。

嫌な汗が流れているが二人共考えて負傷した部分を治癒させてから適当な建物の中へ隠して逃げた。

面倒になるし、煩わしさは敵である。

考えるまでもなく逃げ一択。


暫く逃げ続けて気がついた。迷った。

目的地へ向かいたいのだが地理に詳しくなく逃げに徹していたために方向すら判らず迷っていた。

ただ歩いてるだけで視線が刺さる。

余所者だと見抜かれているのだろうが、しかし手を出すか出さざるかを考えあぐねているようで近づいてくる事はない。

二人は視線を合わせずに歩く。周囲への警戒を怠らずに。

だが何時までも二人で行動するにも限界がある。だから別れて目的地へ向かうことにした。

ように見せかけて袋小路で釣れた住民を問答無用で地面へと叩き伏せた。

二人の目的はこの制圧ではない。

質問は1つ。その場所を聞き出してから住民を気絶させてまた適当な建物の中へと隠した後も同じ事を繰り返し、確信を得てから教えられた場所へと向かった。


一人は嘆きながら。一人は笑いながら其々が一人一人を相手に汗をかく事なく倒していく。勿論、手加減をしてるから殺しまでは行かないが二人は共通して表情に対して涼しげである。

それは住民達にしてみれば怪物に写ったろう。だから再現なく襲ってくる。切りがない程に。

始まったことを嘆いていたとしても過ぎた時間は戻らない。

兎に角も、住民を生かさず殺さず追うという行動をさせないために二人は相手をし続けていた。

そう向かう場所に近づいていたが比例して襲ってくる人達も多くなり少しずつ辟易しながら近づいていた。


屍のように動かない住民を山にして片付けを終わらせ時間を忘却したのかと錯覚するほどに麻痺していた感覚を戻し一人だけ残した住民から住民の山を示し詳細な場所を聞き出して気絶させ山の中に加えた。

何故か清々しい表情の二人がその場を後にして少しすると警備隊が到着した。


目的地に到着したのは良かったのだ、が問題1つ。

「なあ。この場所で合ってるよな。」

「ええ、合ってます。渡された物もこの場所で反応を示しましたから。」

「な、らな、ん、で。何もないんじゃあああぁ。」

「それは、知りませんよ。これに従って来たんであって何か在るだろうと想像しますよ普通は。」

「かっ、騙されたっ。」

《嫌否、合致してるよ。合ってるし在ったよ。過去に。現在はもうないのだが、さて次に行ってみようか。何。直ぐ近くだから安心しなさい。では出発。》

「うぐっ。」

「うえっ。」

眩暈と吐き気が同時に襲い足が縺れるように立っていられなくなり限界が来て倒れようとして。

「あたっ。」

「ぎふぉっ。」

と変な声と共に何かに打つかった。


二人が転送されたのはヘガリオス。

先のヘオガリスと似てはいる。

此方は比較的マシかと聞かれると否定する。

何故なら犯罪率は似たり寄ったりで秀でているのは致死率が全ての国を合わせても足りない程である。

その理由は。


噎せる二人は急いで防毒面を着用する。

気づいたら荷物に入っていた。

「いつつ、ここは。濁りきった空気と垂れ流される未処理の液体。」

「さらには地面が全部、鉄板に覆われている。はは最も危険で最も命に対して軽い街。」

二人が同時に名前を挙げる。

「はっ、そうだよな。危険地区に近づくな。どんな理由だろうと。てのが小さい頃から云われてたよな。」

「うん。そうだね。でもさ。その忠告を蔑ろにしてこの前の街とこの街に来てしまったよね。何が在るんだろう。」

「それは、その品が示した先に、在るのか。」

「さあ、行ってみないと判りませんよ。」

「だな。」

品が示したのは建物。

「でもこの中に入れとかじゃないよな。通り越して先に続いてるだろう。」

「まあ、そうですよね。」

案の定。建物を壊して中を覗くと示しは続いていた。

何処まで続いているのか少しの不安と不思議な期待が混ぜられて進みは遅く、それを原因として住民を退けたりしながら、やっとの事で到着した。


前には重い扉と幾重にも重ね掛けされた力が二人を阻んでいた。

示されていたのはこの場所。疑いはない。

「どうやってこの中に入るよ。」

「さぁ、知りませんよ。僕達はコレを頼りに来ただけですからね。ですがまあ何とかなると思いませんか。」

「へっ、違いねえな。だがな世界はそう単純でもないと思うぞ。」

「ふふ。それが世界の不条理。ですが、それを越えるのが僕達という、存在、でしょ。」

「だな。」

「では越えましょう。」

持っていた品を握り締めて思い切り直上へ投げた。

一定の高さに達すると此までより強い光を発してそのまま地面に音もなく落ちた。

『おい。何も変わってないぞ。』

『そうですか。』

『なんだよ。』

『気づいてませんか、それともわざとらしく言ってますか。』

『そうか、響いてるように聞こえていたけど気のせいにするのはダメか。』

『ではどうしてこの状態なのかを調べますか。』

『必要ないだろ。ほらアレを見てみろ。』

指差した方向には向かって来ているであろう集団があり得ない体勢で止まっていた。

『見るからに時間の停止。ですか。』

『だな。不可能な力と言われる停止。それも世界全てに対しての行使となれば、それはもう人の領域を壊している。』

『不可侵にして神聖な領域ですか。ですけど過去に居ましたよねそれを可能とした人としての存在が。』

『ああ、そうだな。居たけどよ、現在(いま)の時代には行きすぎた力だよ。』

『ですがこれは僕達の預かり知らないものです。』

『だなこれを利用して入れということか。』

『時間を止めたとしても効力が止まったとは言いきれませんよ。それでも行きますか。』

『おう。行くしかないだろ。俺達に選択の権利はない。進むしかない。』

決意して二人は建物のへと近づいて、通ることができた。

安堵して気を抜いてしまった。

止まっていた時間が突然動きだし警報が鳴り響いた。

困惑しながら二人は走った。目的地とは別の方向へと。


二人が走って逃げた先は。


袋小路と思われたが二つの分かれ道。

迷うことなく二人は分かれて走り続けた。迷いは命を失うことと理解していたからである。

更に走った二人は、イライラしていた。

逃げに徹していた事には外交問題になると聞かされているが納得できていない。

だから。

二人は同時に差違なく壁を壊して破片を追っ手に投げ当てた。

勿論。全力で。

それは当然の結果に行き着くが気にせず二人は逃げては投げ当てを繰り返して数を減らしながら其々目的地へと到着した。

最後の一人になるまで。


二人は同時に目的地へと到着した。其々に追っ手一人を伴って。

呼び止められたのも同時で振り返らずに背中で返答した。

問いに対して一人は見下し。一人は素直に返答した。

憤怒と安堵。

さて二人は全身に行き渡らせた力を一点に集めて投擲し、相手を倒した。

これにて街の住民ほとんどを倒してしまったが二人は後の事など微塵も考えていなかった。


光の終着点には大きな、街に似つかわしくない大木が鎮座していた。根本には小さな祠が設置されており街に比べて綺麗に整備されていた。

一人は笑い一人は呆れて同時に祠を壊した。

瞬間に二人の姿は街から消滅した。

『転送確定。目的地を指定。《ガリガレオス中央》』


二人は縛られていた。当たり前である。

ガリガレオス。

希望の国と言われる民主国家でありながら王政を残している不思議な国。

国と言われるが大国の中にある大きな街である。

しかし大国は不干渉であり街1つで国家という体裁を整えていた。

その中央。首都と呼ぶには吾平がありそうだが広大な土地の本当に中央に位置する場所に二人は転送され、また人を踏み倒した。

衆人環視の中で。それもガリガレオスの最高幹部の子供達。そう『達』なのである。

二人は同時に複数人を踏み倒し重症にしていた。

当然、二人はその場で拘束連行軟禁され、現在に至るということだ。

怒りを向けられた目を其々に感じていたのだが。

一人は笑って一人は蔑んだ。

時間もないのにこの状況は不味いよなぁ。と二人は考えていた。だが簡単に脱出はできそうもない。

この監視は厳重で拘束を解けたとしても何人を相手にしなければならないのか。

命を奪うという選択は除外しても動けなくするだけでも苦労することは二つの町で思い知った。

脱出できたとしても追っ手は必ず来る。妨害工作をしたとしてもその辺りが限界だろう。

疲弊して気力も無くなって最後は処刑台。

二人は小さく悲鳴を出した。

心にジクジクと穴が広がっていく。

絶望を拒絶して現実を忘れたくなる。

だがそうも行かないのが現実である。


何の手だてもなく裁判が始まった。

が、裁判と言っても、形だけであり処刑は決まっている。

何故なら動かしようのない証明があるのだ。否定しようとしても言い訳にもならない時間の引き延ばし。

そうして二人は其々に云い渡されたのは予想通りの処刑であった。


二人は何故か嘆きを示した。

小さな子供のように暴れて暴れて、その場に居た誰もがその様子を引いて見ていた。

そう二人とは距離が離れたのだ。

つまりは。

二人は動きを止めてまた何処かに隠していた品を床に落とした。すると二人の接触していた部分の床だけに穴が開き二人を同時に落として消えた。

落下速度を考えると普通に危険だが二人は焦らず状況を流れに任せた。

任せて全身を強打しながら流され排水口から吐き出されて汚泥と共に下流へと。

二人は重要参考人。簡単に逃がしたとなれば威信と沽券に関わるために秘密裏に捜索隊を組織し行われていくが、捜索は難航し二人は見つからないのだ。

流れに流され1日。

二人は現在、地下で迷っていた。

光源もなく闇しかない空間では下手な行動が命取りとはいえ、じっとしていても埒が明かないのは明白であり行動を起こして丸1日迷い続けていた。

「はーまったく。何をしているのかな。君と貴様とかは。」

それは唐突に表れた。だから二人は腰を抜かしてしまった。

「あれ程、忠告してたの、まあどうでもいいですね。では、この先に穴を造ったので入って、その先に目的地へと続くかもしれない道筋があるだろう。」

「いや、行かないよ。」

「何故ですか。」

「お前さんはなんだ。俺達の依頼主とは違うだろ。」

「おや、どうしてそうおもうげっ」

「まあ心で見下して話してたからな。媚びへつらうなんてのは反吐だっつうの。」

「このゆけっぷっぎ。」

「たく、人を模したならましなものを造れよな。」

「おやおや。なんだ。看破したんだ。結構な出来だから騙されてそのまま連行されるまでを想像してたけど。まあ存外に経験は嘘をつかないのかな。」

「はっ。俺達がこれまで幾つの苦難を越えてきたと。」

「まあ、そうさなぁ。ざっと二桁行くかどうかだろうかな。さて、品を出しなさい。」

「それで次は何処へ飛ばすんだ。」

「いえ、これで終わりですよ。と言っても最後の場所へ向かってもらうのですが。その場には佇む巨駆が居るので、それに向かって全力で手加減無しで投げつけなさい。それで君達への依頼は達成ですよ。そうそう、間違っても外さないように。」

最後の転送に包まれて二人は消えた。

後に残った一人。

「あぁあ。流れに乗るだけで抗うこともないのか。馬鹿だな本当に。自己で考え行動することこそが自身を導く物を。」

静けさに侵食される。

「くかっかか、何てな。そんな大層なことを述べても意味ないな。さて。目的はもう幾つか。」

消えて何も残らなかった。

殴り気絶させられた失敗作。

模造とも呼べない其もまた後も残さず消えていた。


最後の転送先。

リグラインズ・ドリマルア

人以外の生物が生息する楽園。

人は踏み入れられず人は住めず人は最後に壊れて地の糧とならず土地から追放され尊厳すら踏みにじられる。

故に人以外の楽園である。

二人はその端に転送された。

と思っていたら目的地の前。

そして不可解が1つ。

人が。本来なら生息不能な地である場所に人が生きていた。それも生活すらしていたのだ。

驚きと恐怖に二人はその場を逃げた。

それもこれまで以上に全力全開全速で。


逃げてばかりだなと二人は考えていた。この場所に来てまでどうして逃げに徹しているのだろう。

ふむ。と二人は思考で同時に唸って、ああ。と思い至って逃げを強制停止させてから反転と同時に地面と空気を其々に思い切り蹴り裂いた。

突然の行動である。

その見える攻撃であれ見えないまでも感知できる攻撃は目の前全てを弾いて裂いた。

それも上空含めて。

無傷なものは皆無に等しく。

残っていたのは範囲外に存在していたもの。しかしその圧倒的なまでの範囲は只の一回であっても影響は甚大である。


僅かに残された者の腕を壊し絶望を縫い込んで放置して漸く目的地までたどり着いた。

目的地には大きな柱が二本。

其々から太い蔦が交差しながら頂点で一本の太い巨木を造り上げていた。

さて、その巨木が変哲もないならこの場所へと導かれなかったろう。

二人は迷うことなく全力で投げつけた。

巨木に触れた物は壊れ弾けて黒と白を伴って覆い尽くすと成長と枯渇を繰り返すように天を貫く巨駆へと成長し崩れ去ると嫌な何かを放ちながら何処かへと消え去った。

その一連を見ていた二人は動けず成り行きを見るしかなく。終ると同時に忘れていた呼吸を再開させた。

世界は一時的に停止していたという錯覚を認識していた。

これで依頼は全て完了させた。

はずだった。

『ふふふふははは。よもやだな。』

前触れもなく現れたのは二人の依頼人。名もなき存在。

『よく壊してくれた。さてどうしてくれようか。』

「おいおい。投げろと言ったのはアンタだろ。俺達は従ったまでだ。変な謂れは勘弁願いたいな。」

『いやはや、コレ程に速いとは驚きを隠せない。さてだ。君達がしたことの重大性を理解していない、と見えるが。』

「待ってください。僕達は指示に従いここまで来ました。無闇に命を奪わず負傷に留めました。渡された品に従ってきて投げろと云われたから投げたのであって他意も故意もありませんよ。」

『その様な指示は出していないし、勝手にお前達が仕出かしたことだ。故に、償ってもらう。その全てをもって。』

「い、嫌だ。こんなところで訳も判らないのに終わるなんて絶対に嫌だっっっ。」

『諦めよ。手助けするものは皆無だ。』

「そうかよ。ならお前が死ねっ。」

『無駄と理解できぬか。愚かな。』

不意である攻撃は始まりさえ拒絶されて直上に身体を飛ばされ地面へと叩きつけて数度の打ち付けと追加の風の打撃により人形のように転がり動かなくなった。

『私の加護を甘くみたのか。やはり愚かであるな。さて、その全てを我が主に提げる誉れを噛み締めてその生を終らせてあげよう。』

「ぐっ、うぐっかはっ。息、がかはっ。」

『ふふ。悲しみは前菜、絶望はメイン、渇望はデザート。さあ捧げるのです。』

「い、いや、だふがぶぁ。」

瞬間に全身の力が抜けて倒れて動かなくなった。

『くく。くはははは。さあ、貴方にそう貴方様に捧げますよ。贄を。これで一歩進めますねぇ。』

満足し振り返りと同時に一歩を出して地面に触れる前に姿を消した。

僅かな時間で姿を現し動かない二人に指先を触れると。

「かはっ。」

「はっ。」

「やあ。」

「お、お前。なん。んん。」

「まあ喋るな。全部知ってるから。」

「おいっ、何なんだよお前は。素直に従っくか。」

「だから喋るなて。なあ何を見ていた。少しボロが出てただろ隠す気が無いのか。主に捧げるて吐き気がするな。あれは消えかけていた者に追い縋る情けない信奉者だよ。俺とは一切合切関係ない。はずなのだが、どう思うよ。」

「どうて知るかっバカッ。」

「お、お前は、それを判っていて。どうして逃がした。」

「ん。逃がす。俺が。何故。どうして。ホワイッ。笑えねえよ。」

「なあ、何の障害もなく、消えたよな。」

「そうだな満足して帰ったんだろ。帰った先は、んっふふ目的地とは別だろうけど。」

「な、じゃあ俺達が死ぬ事は。くはっ。」

「あるよ。在りまくりだよ。だってよ滅多に出来ない死という体験という希少で貴重な経験をできた。世界中の人間で何れだけが死から生き返れるかな。それを二人共に経験できたことは先の人生の糧になるだろう。多分な。」

「この、ぐっ。」

「無理に動かない方が良いと言ったでしょうに。命を少しの時間だけ失っていたんだ。その時間から一気に命を吹き返したんだから身体に多少の齟齬があるだろう。だから無理矢理に動かさず安静にしておけ。さてこれにて君達への依頼は完遂された。此方の目的も目標も完了したし、おまけも付いてきたから満足。そうだ。これを挙げよう。報酬の1つだ。」

二人の前に其々置かれたのは中瓶。

「小分けにするのが面倒だからこれを一本で渡すよ。中身は完全回復薬。たしかハイポーションだっけか。違ったか。まあ良いか。これを挙げる。それとこれ万能薬。エリクサーだったか。売るも使うも譲渡するも好きにしてね。」

二人はハイポーションを掴んで一気に飲み干した。

「ぶえっ不味い。」

「薬は不味いもの。旨いものだと飲み過ぎるからな。まあこれは例外だけど。じゃあお別れだ。」

「待て。」

「何だ」

「が、学園は一体。」

「ふふ。さあね。それじゃあ本当に今回最後の転送だ。まぁ報酬の1つとしてのサービスだよ。バイバイ。」

姿を消して残された二人。傷や疲労は治っている。治っているが起き上がる気分になれない。

「なあ。」

「何ですか。」

「帰るか。」

「そうですね。チケットもありますし。」

報酬だろう。帰還までのチケットを握りしめさせられていた。


2日後。

二人の姿は港に在った。

動けない二人に成す術なく転送の力に包まれその場から見知らぬ土地へと転送された先は何処かの村。突然現れた二人に対して不思議な事に親切にしてくれ現在地を教えてもらい、二人は驚きながらも1日だけ休養のために泊まり翌日には待ち合い場所へと向かい公共機関を乗り継いで港まで来た。此処から沿岸部を沿うように向かい側に擁する港まで帰っていく。

二人は不安だったが。船に乗り込み暫くの船旅を楽しんだ。


港に到着して早々に学園行きへの定期便へ乗り込んで向かった。

時間は少し掛かったがどうにか無事に到着し急いで学園へと走った。

門が見えても速度を落とさず走りに走って。

「皆大丈夫かっっ。」

と叫ぶと冷たい視線が二人に向けられた。

学園は通常運行されていた。

疑問符が頭に沸く暇もなく理事長と呼び出しと連行を同時に知らされて学園長室へと連れていかれた。

混乱する二人に向けられるは更なる冷徹な視線。

重苦しい空気の中で第一声を放ったのは他の誰でもない学園長であった。


「君達は今まで何をしていたのかね。正直に答えなさい。」

粘り気のある空気の中で二人は正直に話した。

その間。誰も口を挟まず静かに聞いていた。

「これが一応の顛末です。」

「それは自信をもって言えるのか。」

二人は力強く返答した。

「そうか。現在、君達には擬義が掛けられている。その理由として、敵前逃亡。周囲への迷惑行為。代理人に対しての暴言。等々たが。更に挙げたら切りがない。もし二人の言葉を信じるなら虚偽報告として進呈した生徒達には厳罰だが、確たる証明もされている。対して君達にはそれらを証明できる。物的な物を持ち合わせていない。なら彼らを信じるしかないだろう。」

反論しようにも用意していた物は取り上げられてしまい。反論のための資料を作る時間もなかったためこうして手ぶらで臨んでいる。言葉ではどう言い繕ったところで証明はできず、更に知らない事までおまけとして付随している。

自棄に成り掛けて反論してそして最後に学園が無くなることを口にし、言い終わって初めて二人は言ってはいけないことだと認識しその話を誰に聞いた。という質問に対して正確な答えを知っていても簡単に説明できるはず無く最終的には呆れられて大きな問題以外を不問とされた。

「それと最後に1つだけ答えなさい。」

二人が同時に返事をする。

「君達も知っているだろう。秘密の場所にて世界の気象に関した会議が開かれていた事に。」

「はい。知ってます。僕達はそれに関連した調査の一環で駆り出されたと。認識してます。」

「そうだ。しかし、んん。」

何か言い淀む。

「何か、あったんですね。」

「今回の会議は西方沖に造られた絶海の島。その地下に造られた会議場で開かれていたのだ。」

「そうですか。でもどうして知っているんですか。終るにしても早すぎますよね。」

「・・・のだ。」

「はい。何でしょうか。」

「各国重鎮が全員、惨殺されたのだ。」

反応が遅れ短い言葉がどうにか出た。

「惨殺とは、穏やかどころではありませんね。犯人は解ってるんですか。」

「言えることは、理解しがたい何かだと。」

「それは何かの手段で姿を見た。と言うことですか。」

「見てみるかね。」

「見ます。」

「そうか。ではお願いできますか。」

「はい。」

控えていた一人が懐から石を取り出し机に置いた。

「これから見る映像に関したことは一切他言無用だ。破れば厳罰に処される。判ったかな。」

二人は首肯する。


石を叩くと中空に光が溢れ拡がり映像が映し出された。

それは聞いていた会議場で有名な重鎮が顔を揃えて険しい表情をしていた。

少し退屈な映像が続きしかし画面が次第に揺れ大きく揺さぶられるように乱れると画面は何かを映して消えた。

何かを言おうとして止められて、待っていると映像が再開され映し出されたのは重鎮達が無惨にも黒い何かに食い殺されていく場面。音は消されているのか聞こえなかったがその表情や仕草で危機的な状況だと理解はできた。

そして最後にこの会議の主賓が力を行使して笑いながら一飲みされて何も残されず静寂が続いて停止した。


「これが『何か』ですか。」

「そうだ。して見覚えはあるかな。」

「いえ、存じません。」

「自分もです。」

「では、次を見てもらおうか。」

同じ様に石を置いて叩く。

映し出されたのは複数の映像。その1つは海原を映していた。

暫くは何もなく海が映り続けていたが、何か遠くから向かっている影が現れたかと思うと画面が暗転した。

別の映像にはその場所が映し出され、映像が暗転した理由が克明に記録されていた。

その理由とは。

体長数百にも及ぶ巨大魚。その頭が記録装置に当たり破壊したのだ。

そしてその直ぐ後に長大で巨大な先の巨大魚を遥かに凌ぐ何かが姿を現し島の地表を破壊しながら地下へと潜っていった。


静寂。誰も喋らないが。切っ掛けは造られた。

「それと君達の話しが本当だとして。これを知っているかね。」

一枚の書類を受け取り二人が読み進めると顔色が悪くなっていく。

確認の意味を込めて顔を上げると。

「今見てもい詳細を読んでもらった通りだ。各国の重鎮方の気象に関した会議を。その秘中された場所を『何か』が襲い、食い散らかして生き残りは現在まで見つかっていないが飛び出したとされる何かが関連しているだろうと私は考えるが。」

「そ、その方角が」

「西方沖と言ったであろう。」

「正直に申し上げるなら。判らないです。二人とも方向を見失っていたので。確かに何かが飛びして行きました。ですが方向までは。」

「そうか。では退室を許可しよう。音沙汰あるまで自室で謹慎するように解ったかね。」

二人は頷いて部屋を後にした。

肩を落として自室へと向かう二人。しかし頭に風景が流れこみ、こみ上がる感情を抑えながらその風景の場所へと向かった。


一年ぶりくらいの場所。その場所には一人、顔を隠している者が立っていたが何者かは解っていた。

間髪いれず。

「お前ぇっ、あの言葉は嘘だったんだな。」

「アレ、とは。」

「惚けるなよ。学園が無くなるなんて言ってただろう。それを話したら呆れられたよ。」

「ああ、いや嘘じゃないぞ。現に手続きは終わってるからな。新年度から新しくできた学園で勉学に励むことだ。それとほらこれを持ってきた。」

持ってきたと言われて何をと返すしかない。

「郡家っゲゲゲ。げがぁぁあっ。」

視線など反らしてない。

ましてや動いてすらないのに、現れた何者かは手足を引きさかれたように無惨な姿で更に一部が溶けていた。

「好きにすると良い。知りたいことを知り尽くした粕だけど。それじゃこれで。とそうだ。君達。凄いね。正直、何も感じなくなるよ。」

「どういう意味だ。」

「なあに、君達が通った後には何も残さずか。ともしかして知らないのか、理事長も躊躇したのか、どうせ何処かの時点で知ることになるだろうに。全くつまらない情けを。」

「だからよ。一体何が言いたいんだ。」

「んん。おお話が反れ掛けた。つまりだな。君達が通った正確には送り届けた先は、現在。何もない。言葉通りに町1つが消えてるよ。歩いた後には何も残らず残すこともない。まさに歩く転災だね。疑うなら聞いてみるといいよ。学園の全員は知らないだろうけど、まあクラスメイトは知ってるだろうね。それと学園長や理事長とかな。」

「な、んで。」

「それと感謝してくれよ、色々と手筈を整えて送ったんだ。それに君達は忠告を無視した。まぁさ状況が状況だから無理もないけど。何もせず一直線に向かっていたら世界を敵に回さずに済んだものを。まぁ今更か。さてこれで今回はお別れだ。君達には最後に謝礼を用意した。寛大に喜びたまえよ。くはは。」

制止することも出来ず姿を消した。 残された二人は理解を得られず何も残らず途方に暮れるしかなかった。

壊れた人形の様な何かがけたたましく喋っていた。

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