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片倉トーリの日常なる非日常  作者: 十ノ口八幸
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不条理と条理の日常~少年~寒気進行2

学園は平和だった。先の罰として課せられた調査や失敗に対する更なる罰は1人の犠牲によって学園は護られ冬季中盤へと季節は進んでいた。

森の主や直下の者共が学園を徘徊していたが、時も経てば見慣れた光景となり生徒達は普通に学園生活を楽しんでいた。

そんなある日の事である。

敷地内の全てが大講堂に集められざわついていた。

久方ぶりの集会とあり繋がりのある生徒同士が話しに花を添えていた。

壇上に教師陣が現れても誰も気にせず続けていると。

一言。

「調査が終わった。」

ピタリと喧騒は鳴りを潜め全員の視線が壇上に向く。

「んんっ。知っているだろうが近頃ある目撃が頻発していた。それに対しての無用な混乱を避けるために箝口令を敷くと共に調査を慣行し先程、調査終了と同時に資料が届いた。そして結論からいうと。有り得ない。そしてあれは確かに本物であり本人であると私以下生徒会や風紀委員、そして教師陣とSクラスの二人も見届けている。

森に設置した監視台の記録に偽証はなく完全に供物としての役目を果たしていた。故に有り得ない。」

悲鳴が挙がると数人がパニックを起こして暴れるが即座に拘束され外へ連れていかれる。

「さて事態は深刻である。

この時代において悪しき存在が数百年もの時をもって現れた。しかし臆するな。これに対処する方法は見つかっている。古文書に記された方法を先程試し、成功した。此より配るので皆も暗記するように。」

全生徒に配られた二枚の紙にはビッシリと文字が書かれており殆どが発狂した。


2日後にして職員生徒全員が森の入り口で陣を敷いていた。

有り得ない何かを討伐するために全員での参加を強制したのだが、認識率が低く結局は全体の五割を切った人員しか使い物にならず、仕方なしに編成を変更して討伐に望むこととなった。

では何故全員を動員しているのか。

理由としては森を結界で囲み対象を閉じ込めるためである。短期間でしか効果はないが。


短期決戦を望んでいる学園長や幹部達。しかしそう簡単に事が運ぶということは考えていない。

そう誰も。

だからこそ準備には資金を投じ周辺の調査も欠かさなかった。

森の地中から遥か上空に至るまでの調査も事と平行して行い結果をもって2日で陣を敷くことができた。

結界も特別に組ませた。

だからこそ短期を念頭に起きながら此度の討伐を目的とした森林の調査という名目で入る許可も取った。

緊張が全体を奮わせる。

学園長が台座に登る。


口に手をあてがい力を込める。

『諸君。今回の事態は幾つかの要因が絡み合い現出したことが先程、報告された。監視台からの報告も同じである。

さて、これより対象を追い詰め討伐を敢行するにあたり幾つかの注意事項を頭に叩き入れてもらいたい。』

学園長からの注意事項は長々として辟易しながらメモしたり詠唱のように頭に焼きたけたりして覚え準備は終わった。


配置に着いた生徒と教師。

各入り口に配して号令と共に森林へと歩いていく。そして詠唱して周囲を結界が覆っていく。


進んで直後に複数箇所から痕跡の発見が報告された。

痕跡はやはり映像の通りだった。

地面には乾いた血痕や干からびた何かの一部。中には岩に食い込む肉片まであった。

数人が吐いた。

慣れない光景に体調を崩す者が続出したが想定内であるので衛生班により森の外周付近へと撤退していく。

初手で包囲網の一部が瓦解したが即席の補強である土人形を作成。配置させる。

包囲網の穴は一時的に空いたがその隙を突いて内部の何かが外へと進行するも結界により阻まれ触れる前に消滅していった。

結界の効力は証明された。

これで不安要素の一つは解消された。

しかしそのような些細な事象は意味なく目的は討伐である。

残された教師生徒が進んでいく。森の中央へと。


同じ光景が続いていく。散乱する肉片と腐敗臭は体力だけでなく気力を奪う。

だが目に見えてその量は確実に増え、中央に何か知り得ない存在が居るのだと判る。


結界の外には等間隔で点在させているテントが設置されていた。

結界は発動すれば後は勝手に持続するという高等な技術ではなく、常に力を注がなければ維持もできない。

なので4交代制ををとっているのだ。

三交代目の出来事である。

切っ掛けは何か誰も知らない。

だけども、それは小さな出来事。


結界は、ただ張っているだけではない。

等間隔で内部を察知できる一種の監視機能を付加させ、さらには微細な音も拾えるように集音機能を持たせている。

その一部にて異変が感知された。

その部分を遡り全員を共有するように情報を開示する。

内容は不可解。

最初は一人の生徒が何の脈絡もなく転倒し何事もなく起き上がりそのまま奥まで進んでいく。

最初は取るに足らない小さい出来事。

それは次第に不可解から不明へと発展していく。

気付くと内部人数を把握していく過程で人数が変わっていた。

そう思い再度数えると合っていた。

数え間違いだとして処理されたのだが。

数刻後。定期連絡と人数合わせにて数が合わなくなっていたのだが、複数人で合わせると、やはり合っていた。

偽造も疑い其々のだが持ち場を回して数えても合っていた。

映像も何度か確認したが不可解な箇所を何度も見ていると一人の生徒を追うよう切り替えて突如として消えていた。

前後を調べて、何も得られず。ならばと似たような事柄が起きてないかを調べあげると出てきた。

そう前後で同じ様に消えていたのだ。

しかし数をかぞえても合ってるのだ。

だがある映像でその理由が判明した。


とある映像には複数の生徒が固まって捜索していた。

警戒しながらの捜索であり隙もない。

内の一人が何かの拍子に転倒したならどんくさい。として片付けられただろう。

映像には確実に映っていた。

全員が同時に違わず転倒した。

転倒して怪我をした。何かに怪我を負わされていた。

空気の淀みはその正体を映してたが淀みだけで正確な大きさまでは計れなかった。

映像は停まり次の映像へと移った。

淀みの正体を暴くためにこの数刻の間全てから当該である映像をピックアップし数々の視点や考え方からその正体が少しずつ見え始めた矢先に中央にて進んでいた中で本当に視線を外すということはなく、一人が消えた直後に別の場所でそれは酷い有り様で現れた。

端的にいってしまうと。

左右が内側に潜り込み頭部も部分的に消えていた。血は出ていない。

足は紙を折り畳むように付け根まで。

一見、命はないと見受けられるが良く見ると僅かに動きがあり、命は風前の灯だと判る。

緊急に近くの者を急行させ後方へと運ばせる。

生徒が一人、悲鳴を挙げていた。

どうやら恋人らしいく。泣き崩れ動けなくなっていた。

仕方なくその生徒も同じく後方へと下がらせる。

映像を何度見返しても消えた瞬間が記録されていなかった。

全ての視点をカバーするように配置していたにも関わらず。

消えて現れ、酷い有り様で現れ、風前の灯。

下手をしたなら失われる程の重症と精神的崩落まで招いていた。

事ここに至って緊急招集を掛け撤退を指示したが。一足遅く進行の一部が中央に到達していた。

問題の社である。

見えていた映像は現実と同期させていたので遅延はない。だが社には社以外の存在が見えていた。歪みと捻れが現れていた。

1つでなく複数もの歪みと捻れが広がって一つ一つには何か、というより体の一部分が生えていた。 死体かもと思われたが全てが均等に動いていた。

瞬間に撤退を指示する。が本当に遅く1つの歪みから何かが出てくるとそれに合わせて他の歪み等は引っ込みと消失をもって1つの歪みから上半身だけを表した何か。

化物が現れた。

その姿は恐怖の一言に尽きる。

人の形を成しているが外れている部位が大きく。一番に目を引くのはその頭部。

内部が露出している。と言うことは脳が見えているということであるが1つである。

いや元々1つだろう。というツッコミがされるだろうが、その脳には本当に1つ。

何が1つなのだ。と再度言われるだろうか。

その露出した脳は左右に分かれているのでなく1つの塊として頭部に収まっていた。

誰かが動いたその露出した脳を破壊するために。

と簡単に破壊できるならそもそも露出などさせてはいないだろう。

当然の結界として放たれた力は当たって跳ね返り足元へと被弾し霧散していった。

視線を外さず間合いをとり、間断なく力を放っていく。

前面から放たれた力は先ほどと同様に何のダメージも与えられていなかった。

唸る。誰が。目の前に存在する下半身を歪みの穴に隠していた化物が唸ったのだ。

悲鳴が聞こえた。


隣の生徒がその先の教師も悲鳴をあげて泣き叫んでいた。

何が起きているのか判らなかったが、唸りの直後に負傷者が出た。

力は見えていなかったが理解して撤退の指示を出した。

〜遅い。この様ナ無力を持って挑んでくるとは愚かナり。己が命を持って贖罪とせよ。〜

悲鳴は此処彼処から上がり途中で消えた。

見たくなかったが。見なくとも判っていた。

命が奪われた。即ち死。

脳裏に自身の未来が見えた途端、世界は暗転し灯火が一瞬で消えた。


結界の外は混乱していた。想定外の存在と想定外の損失。事前に聞かされていたモノと姿形が異なっている上に人語を介して攻撃していたのだ。

交渉という方法もなくはないが、それは相手の行動で殆ど不可能だと理解してしまった。

いやまだ余地は在るのだろうが、交渉に特化した者を用意するにしても時間はなく。ならば当初の目的通りに討伐しかないだろう。

短時間で討伐隊の編成が完了し結界内で残された攻撃力のある者を加えてその存在を逃がさないように囲み小さな多重結界を構築した。

「たのむぞ。二人とも。」

一人は不安感があったがもう一人は自信ありげに返してきた。


指示の通りにその化物を中心にして部隊を展開させ結界を発動させた。

内部には化物と二人。

手加減はせず全力で排除する。


打ち貫け。

思考は脳髄を走り全身へ命令する。

世界に循環するエネルギーを体内エネルギーと混ぜ合わせ魂の一部を使用して燃焼させる。

エネルギーは思考の奥に隠された存在を世界に具現化させる。

創造能力と呼ばれる特殊な力。

世界へ干渉する危険な力でバレた場合は国の厳重な管理の下で飼い殺し。良くて幽閉。


飲み砕け。

自身の感情を材料にして絶大な力を世界に顕現させる絶対兵器能力。

形状は獣であり基本は単一種である。

だが希に一種以上を混合させて世界に顕現させることが出来る存在が確認はされているが秘匿中の秘匿であり、存在さえ知られることはない。

知られたなら先と同様、国の下に置かれ徹底した監視と管理を持って一生を終える。


二つの世界干渉能力者がこの時代、同世代で同時出現。

結界を張っているとはいえその二つの力は強弱に関係なく世界に干渉するため全ての存在に良し悪しの影響を確実に与えていた。

結界を張っていた者達にも影響が当然にある。

最たる現象は記憶の混乱と思考の停止である。ゆえに結界の維持も難しくなり意図せず崩壊させてしまった。

しかし二人は冷静であった。

化物との距離を保ちながら視線を合わせず合図すらなく攻撃を展開していったのだ。

二つの力は相乗効果をもって本来以上限界以上の現象を発揮させ、化物を蹂躙させた。

ように見えていたが笑いが世界を伝播し二人の放つ力は捻れの穴に食らい尽くされた。

世界に干渉する程の力をもってしても化物は以上の力を有していると二人は理解した。

この光景を見ていた結界外の者達は何処かへ連絡していた。

厳しい表情をしていたが安堵の表情をして全員へと指示を出した。

結界を弱め配置を変更し森を封印するための儀式に入る。

森1つの封印は世界の事象に干渉する程の規模であり簡単に使用するものではない。

しかし今回は想定外の存在が現れ二人の世界干渉能力をもってしても倒すことは出来なかった。

なら森の封印しかない。

中の人もろともに。

一度封印してしまえば向こう数百年から数千年は解くことはできない。

絶対封印。

それらを中に伝え絶望して納得もできていなかったが諦めしかなく。

諦められない者は必死に森の外へと走っていた。

だが外周付近ならいざ知らず、森の中央からは遠いため間に合わないだろう。

〜くく我ごと封印、か。くはっ無駄ナ。〜

と前触れなく森全体を覆う揺れが発生した。

〜ナ、んだこれははあぁっ。〜

化物がいた周辺が大きく割れ次には化物の展開していた歪みや捻れの穴諸とも周辺ごとまた前触れなく消えた。

突如の事であるから二人は動くことができず。さらに周囲にいた生徒や教師も同じく動けなかった。

残ったものはなく()()()()()()()()()()()()()()()社の前であった。

と全員が耳にした呻き声。気付くといつの間にか社の前には件の存在が立って呻き声を発していた。

目まぐるしく変化する状況に二人は何とか気を取り直してその存在を簡単に実にあっさりと倒してしまった。

これにて騒動の原因である幽霊は討伐されたのである。

しかしそれは兎も角として安堵の暇なく外へと急いで連絡し討伐と調査の報告をして封印の儀式は中止された。

片付いた後には残された幽霊の残滓は森が浄化するだろう。二人を含めた生徒は教師の指示に従って森を出る準備をし、死体も回収して完了後、速やかに撤退していった。

疑問を残して。


数刻後でなく撤退した直後にその不可解な物体はその場に鎮座するように社の上を浮いていた。

か細い声を発しながら小さく揺れて森の更に奥へと消えていった。

静寂が戻り、その時を待っていたように空から雪を降らせていた。

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