日常・合同部活紹介からの
翌日、トーリ含め全校生徒は大きな会場にいた。
此処は、トーリが一日で用意した箱で(正確には他者の力のお陰だが)、収容スペースも充分にあり、数えきれない部活の勧誘が犇めきあっていた。
体育会系から文学系、さらには言葉に出来ないような部活まであり、多種多様な部活が軒を連ねている。
そして、トーリは何処にいるのかというと、受付に腰を下ろしてパンフレットを来場者に配っていた。
本来なら生徒会やそれに準ずる委員会が受け持つのだが、急遽用意された大きな会場に受付まで手が回らず、詳細を熟知しているトーリに白羽の矢が立ったのである。
迷惑な話だ。
次第に人が捌けてきて、受付の慌ただしさにも一段落着いた頃に一人の生徒が近づいてきた。
「あの、すみません」
「んあ、あ、はい、パンフレットですねどうぞ」
「あ、いえ。それもですけど。違うんです」
「ん。何かな。別の用でも」
「あ、はい。あの。どうして他校の部活含めてこんな大掛かりな事をするのかなと」
「ああ。それかい。それは、まあ、パンフにも書いてあるけどね。実はこの合同には幾つかの理由と利点があるらしい。詳しくはこれを読んで下さい」
「はあ、そうなんですか。」
「そうだよ。だから説明しなくても良いよね」
「え、してくれないんですか」
「うん。そこまでしてほしいなんて言われてないからね。僕は只の受付係なだけだから、会場内で手一杯と言われて手伝っているだけだし」
「そ、それでも知っていますよね。」
「多少はね、でも、説明する理由がないだろう。」
「え、でも。」
「だって、君、中等部二年生だろ。」
驚いた表情。
「どうして判ったのか。それは、君が初等中等と毎年この行事に参加しているからね。その事は知らされていた。後、どうして他校のとも思うよね。それもね一覧を渡されていてね。君に関する詳細な情報を見ていたんだ。」
「それでも、毎年、顔と制服を変えて。」
「そうだね。でも、表面を変えても内部までは変えられない。判る、この意味。」
頭を振る。
「実は、此処に来る迄に幾つかの感知装置を設置していたんだよね。それはある目的で設置させたんだけど。ふふ。上手くいって良かった。」
「その、目的は。」
「簡単な事さ。未来ある有望な新入生を椨らかし、犯罪に巻き込む。その手引きをしている者の尻尾を掴むために用意したのさ。」
「まさか、こうも簡単に掛かるとは思いませんでしたけれど」
「ほう、案外、間抜けなのだな」
「あ、やあ、会長さん方。漸く来てくれましたか。ほれ、これが貴殿方が話していた人でしょ。」
歯軋りの音。
「こんな事をしても無意味ですよ。直ぐに釈放されますからね」
「素直に認めるんだ。確かに君の上の方は結構太い繋がりがあるらしいね。でも、まあ、何だかね。お悔やみ申し上げる。としか言えないかな」
「君、それは失礼じゃないのかね。」
「え、そうですか。まあ、でも事実ですしね。」
「そうだが、しかし、だね。」
「で、何処が受け入れてくれるんですか。これでも昨日の事はまだ完了とは言えないんですけど。」
「ほう、そうだな。どうするかは終った後で集まるとしてだ。それまではこの者をどうするか、だな。」
「ちょ、ちょっと待ってください。話が見えないですが。」
両肩に手を置いて、
「そうだね。先ずは気をしっかり持ってほしい。」
二人に目配せをして、
「あのね、君がいた組織は昼頃に摘発を受けて、それに関連した会社、土地、施設は全て押さえられてね。君の居場所は無くなったんだよね。」
「は、そんなまさか。冗談でしょ。」
「ああ、嘘だと思うんなら連絡してみれば。」
懐から携帯を取り出して何処かへと連絡を入れた。
「あ、あの先輩。え、あれ。だ、誰です、か貴方は、は、はあ、え、そ、それはつ、つまり、そ、そうですか。あ、はい。それでは失礼します。」
通話を切り、そのまま震え出す。
「どうした。」
「な、何ですか今の人は。」
会長さん達は首を傾げて視線をトーリに向ける。
トーリは両手を挙げて、手をテーブルの上に置く。
「あれはな、知り合いのまあ、なんて言えば良いのかな。特別な事や問題に対処するために組まれた部隊、みたいなもので、随分と前から張っていたんだって。で、僕が昔、手に入れた情報を提供したら、なら協力しろとか言われて、組織を壊滅させたわけ」
余りの衝撃に膝が振るえ、地べたに座り込んでしまう。
「なんだね。御愁傷様でした。」
馬鹿にした様な態度をする。
震えが増し、決壊したダムのように泣き叫び、暴れだす。そしてそのまま逃げてしまった。
「呆気に取られる前に早く捕まえた方が賢明ですよ。」
三人が携帯で連絡を取り、指示をする。
連絡直後に確保の情報が入り、会長三人はトーリに礼を言って移動した。
「退屈だ。」
トーリのその言葉の意味するものは何なのか、本人はおろか周囲も判らないだろう。
が、それでも時間は過ぎていく。
生徒達の知らないところで事件は起き、知らないまま解決されていた。
これは後に生徒総会で公表され、注意喚起も促された。
が、トーリは当事者の一人にも関わらず知らぬ存ぜぬを貫き、その後も普通に生活している。
そして、どうしてなのか、生徒会も風紀委員もそれに準ずるなにかも以降、暫くの間だけ関わることをしなくなった。
合同開催が無事に終わり、静かな日常がトーリに穏やかな時間を過ごさせる。
事もなくと、言いたいが。本当に変化なく過ごしていく。
それは、トーリが認知するしないに関係なく世界が回っているという証拠である。
トーリは普通に起きて、朝食を用意、食し、学校へと行き、授業を受け休み時間には雑談を交えながら馬鹿な事にも関わり、当たり前に教師からの説教を受ける。
そんな事をしながらも授業を受け、放課後には部活には参加していないが、校内を歩きながら一通り見て回る。
人の疎らな校舎には異様な空気が漂っているもので、人の寄り付かない場所には得たいの知れない存在が真しやかに囁かれている。
それは学校の七不思議として語り継がれている。
でも、トーリにしては関係なく、それらに対する知識は有ったとしてもただ、そのまま放置していた。
この事で後にどんな被害が出たとしても、トーリには一切関係ないものとなる。
そして、一通り見回りを終えるとトーリは帰る準備をするために自分の教室に向かっていく。




