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執事さんの日常

作者: 草月叶弥

「いや…だめぇ……」


熱を含んだ声が邸内の一室、微かに開いたドアの隙間から漏れ聞こえてくる。

丁度、階段を登りきった所だった私が駆けつけると、ドアの前には若手の使用人達が皆、顔を赤く染めて鈴なりになっていた。


「何をしているんだ?」


問いかけた声は自分でも分かるくらいに過分な冷たさを含んでおり、その場にいた者達は赤い顔を真っ青に変化させ凍り付いている。


「皆、仕事は終わったのだな?なら、裏の蔵の中身を全部出して虫干しと掃除をしてこい。今からここに居るもの全員でやれば夕暮れまでには終わるだろう。」


微笑みながら告げると、彼らは蜘蛛の子を散らしたように去っていった。


仕事が残っている者達も居たはずなので夕食には確実に間に合わずコックに叱られるだろうから、彼等へのお仕置きはこんなものでいいだろう。


「失礼いたします」


そっと中を覗きお二人の着衣に乱れがないのを確認してからノックと同時に室内に入る。

ガタンッ!と大きな音がして旦那様が奥様に投げ飛ばされているのが見えるが私には関係ない。


「旦那様、自警団の方が来られています。

 昨日の騒ぎの件について伺いたいと。」


「断る。」


即答ですね。さて、どうしたものか…


「あの…だんな様?お仕事はちゃんとしないとダメよ?」


おっと、奥様から援護射撃を頂きました。

これは便乗するべきですね。


「そうですね。大好きな奥様とイチャイチャラブラブを心ゆくまでしたいのであれば今日のうちにお話をしておく事をお勧めします。

 彼らは話を聞くまで毎日来られるでしょうし。」


「ちっ…いってくる。」


旦那様はそう言って立ち上がると、奥様の頬をするりと撫でてから階下に向かわれました。

機嫌の悪い旦那様と面会しなければならない自警団の方には同情いたしますが、こればかりは仕方がありません。


「あの…執事さん?

 …あの……そのぅ……………」


「アルフレッドとお呼び下さい。

 あと、声は盛大に漏れていましたが階下までは聞こえていないと思われます。

 これからはちゃんと部屋のドアが閉まっているか確認していただけると私の仕事が減りますし、この家のドアは全て防音加工が施されていますので声が漏れる心配もございませんよ。」


おっと、余計な事まで言ってしまった気がしますが笑って誤魔化しておきましょう。


「分かったわ…アルフレッド?」


「ありがとうございます。

 では私は下の方々にお茶お出ししてきますので、失礼いたします。

 奥様にも運ばせますのでここでゆっくりとなさっていて下さい。」


秘技、微笑逃げ!!


見習いの頃に叩き込まれたお辞儀を華麗にきめ、私は足早に部屋から退出しました。

あまり長時間奥様と同じ室内にいると旦那様がうるさくて仕方がないのです。


「さぁて、では行くか。」


奥様が嫁いで来られてからこの屋敷(主に私)は波乱万丈ですが、それを楽しいと思っているので辞めることは無いでしょう。


ありがとうございます、奥様。




お幸せに、旦那様。




FIN

その日の業務日誌より、抜粋


本日も旦那様と奥様はイチャラブ…いて、仲睦まじくお過ごしになられていました。

しかし、それを覗いている者達がいたのが残念でなりません。

使用人たるもの、主人の逢瀬は見てみる振りをするのが鉄則です。それを行えないという者達にはきつく指導をしていきたいと思っています。覚悟なさい。

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