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秀吉の遺言  作者: 鳥越 暁
新たな日本の形
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伊達政宗

 織田家が独立し、徳川家が実質的に豊臣に屈するようになった時、伊達政宗は己がどうすべきか思い悩んだ。黒田官兵衛に江戸城内に捕えられ、それを解放してくれた上杉景勝の器量の大きさを見た。冷静に判断して己よりも器が大きいと感じていた。共に捕われていた義宣は豊臣家に帰参した。地理的にも経済力でも武力でも豊臣家には伊達家が遠く及ばないのは分かっていた。

 しかし、政宗は秀頼を知らない。景勝ほどの人物を従えるのであるから、それなりの器量はあるのであろうとは思うが、豊臣家に従うのを躊躇していた。

 そうこうするうちに南部利直、津軽信枚が政宗と手を結びたいと言ってきたのであった。気付けばそれらの家々の盟主となっていたのである。

 

 元々、野心家の伊達政宗であったが年齢を重ねるごとに己の限界と言うのを感じるようになっていた。世が世なら天下を……と素直に思えなくなっていたのである。


 政宗は片倉重綱を呼びよせた。


 「小十郎。その方は今後の伊達家の進む道をどう思うか。」


 唐突な問いかけであったが、重綱には政宗の心中が分かっていた。


 「は。豊臣と対抗し得るようになるには時がかかりましょう。それ以前に殿は豊臣と対するお気持ちが御有りなので? 」


 「うむ。そこなのだ。儂にもよう分からぬのじゃ。儂がどうしたいのかが。南部や津軽は何を思うて儂を担いだのかのぅ……。」


 「殿が分からぬことを私が分かろうはずもございませぬ。殿はご自身で見聞きされたことしか心に留め置かれませぬお方でございます。迷っておられるのなら、ご自身でお確かめになられた方がよかろうと存じます。」


 「ん!? 何をじゃ? 儂が何を確かめるのじゃ? 」


 「ははは。それは殿がよう分かっておいでではござらぬか? 殿は野心家でござる。しかし民の事を思っておられる。その民の事を思うて、我ら家臣の事を思うて悩んでおられます。豊臣に従うとなれば、今まで治めてきた地がどうなるか分かりませぬからな。かといって豊臣と刃を交えるには少々分が悪い。違いますかな? 」


 重綱の言う事は図星であった。


 「ふふふ。その方、景綱に似てきたのぅ。よし! 儂は秀頼に会ってくるわ! 秀頼の器量を見て参る。儂の方が上であらば、儂が天下を貰うわ。」



 伊達政宗は豊臣秀頼に会う事を決め、器量を認めた上杉景勝に使者を送り間に入ってもらうことにしたのである。景勝も政宗の意を理解し、秀頼と政宗の面会の段取りをつけたのであった。

 政宗は大阪に出向くことになるであろうと思っていたのであったが、景勝の示した面会の場は江戸城であった。



 こうして江戸城で豊臣秀頼と伊達政宗は面会する……。

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