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秀吉の遺言  作者: 鳥越 暁
徳川家の衰退
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秀頼一行、江戸へ

 黒田如水こと黒田官兵衛は、鍋島直茂に徳川秀忠から徳川家康の葬儀に参加されたしとの書状が届いたとの報告を受けた。官兵衛は私が名代として行くと直茂に直訴した。直茂も家康の葬儀に興味はなかったので、それを了承したのだった。

 周防・山口城を出立し、江戸に向かっていた黒田官兵衛の元に、江戸からの使者と言うものが訪れた。使者から書状を受け取り、読み下した官兵衛は、承知した旨を使者に伝えた。



【ふむ、本多正信か。根暗で陰湿な奴か。家康の葬儀の前に相談したい事があるとな。家同士の話とすれば鍋島直茂と話をするのが、本来の筋。それを儂と話をするという。

 ははあ、奴も直茂と同じか。儂の智を求めておるのじゃな。とすれば、対豊臣に関する智じゃろう。

 ふむ、今は豊臣が押しておる。して今回の家康の葬儀……。】


 黒田官兵衛は本多正信の真意を考えながら東に向かう。


【そうか。正信は儂を引き込んで、毛利、鍋島を徳川の方に引き入れるか。ふふふ、ならば引き込まれてやろう。…… となると鍋島を完全に我がものとせねばならぬの。手土産の一つもやらねばなるまいて。】


 官兵衛は同行していた黒田家当主であり息子の長政を呼びつけた。


 「長政。そなたはすぐに引き返し鍋島家を治めるのじゃ。手筈は鍋島茂賢が分かっておる。」


 と黒田長政に命じた。長政もにやりと笑いながら、踵を返し去って行った。


 黒田官兵衛はすでに鍋島家の主だった家老達や宿老の鍋島茂賢を懐柔していた。

 直茂を隠居させ、鍋島茂賢を直茂の養子とし家を継がせる。その上で、黒田家に従臣させる手筈になっていた。官兵衛は織田家と手を結び、その後に鍋島家を手中に治めるつもりであったのだが、織田秀則は此方の書状に何の返答も寄こさなかった。


【織田秀則がその気であれば、徳川と手を結ぶのも良い。したが徳川に飲み込まれぬようにせねばならぬな。それにしても徳川に与する大名は小粒ぞろいよな。ならば儂が力をつけ徳川をも飲み込んでやるわぃ。これは黒田家の好機じゃ。】


 と官兵衛は本多正信との談合を見据え、思案に耽るのであった。


★      ★      ★      ★      ★

 

 一方、豊臣秀頼は、横浜茂勝、真田幸村、真田幸昌、前田正虎を供周りとし、それぞれが5千兵を率い江戸へ出立した。徳川秀忠からは、馬揃えは49日法要で行うつもりであるので、最小限の供周り衆でとのことであった。前田利長は『天下の関白様の護衛である』との名分で、それぞれの将に兵をつけたのである。

 更に、秀頼はなぜか相撲取り300人を集め供周り衆に加えた。また供養の品として荷駄7台を引き連れたのだが、荷駄隊350名の他、荷駄の護衛と称し騎馬兵1万、長槍兵1万、そして鉄砲隊5千、大筒5台の大筒隊50兵、総勢4万強にも及ぶ軍勢を引き連れてのものであった。前田利長には大阪城の留守居役を命じた。。


 秀頼一行の行く街道では、人々の見物が絶えなかった。

 相撲取り300人が先導し、横浜茂勝率いる鉄砲隊5千が、まず人々の目を引く、どれも艶光りしている鉄砲を持っている。それに続くのは豊臣秀頼。白馬にまたがり金色の袴姿で背筋を伸ばし顔立ちも凛々しい。続いて真田幸昌の長槍隊、この槍が九尺と長い、その上に上品な藍色で柄が統一されている。その後は真田幸村が続く、幸村率いるのも槍隊だが、長さは六尺と先程より短い、しかし赤色の具足で統一された一隊は精強さを物語っているようであった。その後は前田正虎、彼が率いるのは騎馬隊である。驚くことにはじめの方の千ほどの騎馬兵は短い鉄砲を携えている。その後に黒光りした鎧をつけた騎馬兵が続く。その後に荷駄が7台、また長槍、騎馬、鉄砲、そして最後に大筒と続く。漆黒の大筒には桐の紋が白く浮かびあがるように見える。

 この行列を見た者達は『さすがは関白様じゃ』と囁き合ったのであった。 




 徳川秀忠、黒田官兵衛、そして豊臣秀頼…… それぞれが思惑を胸に秘め江戸城で対峙することになる。   

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