庇を貸して母屋を取られる?
山口城の黒田如水こと官兵衛は、城内を纏めあげ、城下を整備すると、鍋島直茂には無断で織田秀則に密書を送った。
密書の内容は、我は織田家、豊臣家に反目する意思はないとの事であった。
官兵衛は、なぜ豊臣秀頼では無く織田秀則に密書を送ったのか。
官兵衛は、関白家としての基盤ができつつあると読み、今更、過去の人物とみなされている自分の入り込む余地はないか、難しいであろうと踏んでいた。島津が重きを置かれていることもある。
しかし、織田家であれば、一応豊臣の旗下にあるが、天下の野望を秀則が抱いているのではないかと思っていた。そこで、まずは反目する意思のない事を告げておいたのである。
地力をつけ、好機が訪れたら秀則に取り入るつもりであった。
官兵衛の兵を統率する能力は非常に高く、彼の鍛えた軍勢は精強になる。
また、官兵衛の戦は電光石火のごとく速く、降将を素早く取り入れる。その上で、その軍勢を意のままに操り次の戦に向かうのである。
今回も山口城を戦わずして治めた官兵衛は、すぐさま頒図を黒田家単独で周防半国12万5千石にまで伸ばした。
鍋島直茂は下関港を抑え官兵衛と連携が取れるようにしている。
官兵衛を中心とした鍋島家が長門に侵攻すると、さすがに毛利輝元も黙ってはおれなくなった。
官兵衛率いる軍勢の怒涛の攻撃で、半年にも及ぶ戦の末、なんと毛利方は敗れてしまったのである。
毛利輝元は降伏し、鍋島家は長門、周防を治めた。以前の周肥同盟の頒図がそのまま鍋島家となった。
鍋島家の石高は何と120万石にもなったのである。
【黒田官兵衛】
ふむ。とりあえずはこれでよい。
次は鍋島の家を我がものとせねばなるまいのう。
輝元をこちらに引き込み、動くか。
【毛利輝元】
儂はやはり戦下手よの。祖父・元就公に申し訳が立たぬが、これも儂の器量が足らぬゆえじゃ。
【鍋島直茂】
官兵衛がおれば天下とまでは行かなくとも、頒図を広げられるわい。
官兵衛は東に登りたいようじゃが、儂は九州の頒図を広げたいものじゃ。
が、しかし当面は官兵衛の意のままにやらせてみるか。
思惑は三者三様であったが、先に動いたのは官兵衛で鍋島家の家老達を懐柔していった。
直茂の重臣である鍋島茂賢をも懐柔したのである。
輝元は官兵衛に鍋島家にではなく黒田家に仕えるよう説得され、これを受けた。
直茂の知らぬ間に、鍋島家は黒田官兵衛が実権を握りそうである。




