表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秀吉の遺言  作者: 鳥越 暁
秀頼飛翔
50/127

腹黒の高虎、白旗を揚げる

 津山城の前に陣を敷いて丸二日が経った。

 攻める織田・福島勢は総勢一万五千。守る藤堂高虎勢は伯耆・因幡勢を合わせて六千まで数を減じている。織田家自慢の大鉄砲隊により大手門を打ち破りはしたものの、高虎勢の激しい抵抗で門内に入り込めずにいる。高虎は大手門の内側に強固な柵をこしらえて鉄砲隊を配している。


 「さすがに高虎殿でござるな。一日で落とせると思っておりましたがなかなかでござる。」


 秀則は正則に呟いた。


 「ふん、高虎めが強いのでございませぬ。この城に守られておるだけの事。」


 正則はよほど高虎が嫌いなのであろう。鼻息が荒い。


 「ははは。そうでござるな。」


 秀則もわざわざ正則の言うことを否定したリはしない。


 「されど、どう攻めますかな。手の者の調べによると、秀忠殿ははるばる若狭から京極殿を援軍に差し向ける気配だそうでござる。」

 

 「うむ、長引くのは得策ではござらんのう。」


 「殿、手前にお任せ下され。」


 いつも秀則の傍に居る大岡左馬介が口を挟んできた。


 この大岡左馬介は織田家の家老を務めている。秀則が家を再興してからいつも傍にいて影のように付き添っている。家老でありながら本人は旗本を持とうとはしない。秀則があちらこちらで戦をするので、秀則の身を守るのは自分しかいないと思っているのだ。秀則が旗本の一人や二人、持つように諭すのだが、秀則の盾となるつもりの自分が旗本を持てば、自分が死した後で旗本が困ると言って頑として聞き入れないのである。大岡は兵達に人気があり、旗本を募ればすぐにでも人は集まるのであるが……。


 「左馬介、どの様な手立てか申してみよ。」


 秀則が促した。


 「は、どうと言うことはございませぬ。大鉄砲隊を率い、正面突破でござる。今までの戦では大鉄砲は主に城門を打ち砕くのに用いてまいりましたが、鉄砲のように敵兵に向けて放ち続けまする。」


 「ふむ、したがな。左馬介よ。大鉄砲は弾込めに少々時間がかかろう。その間に寄せてこられる。寄せるのに大鉄砲を使うのには無理があるのじゃ。」


 「大丈夫でござる。僭越ながら、手前は大鉄砲隊を鍛えてまいりました。四人一組とし進ませまする。三人が順番に撃ちかけるのでございます。さすれば弾込めの時に間が空くことはございませぬ。後の一人は弾の運びでござる。」


 左馬介の策は信長の考案した『三段打ち』の応用と言えよう。織田家の家風であろうか。その左馬介の話を興味深そうに正則が聞き入っている。


 「なかなか面白そうではござらぬか。秀則殿、試してみてはいかがですかな。手前の鉄砲隊も援護に出しますれば。」


 「…… そうでござるな。よし、左馬介、やってみよ。だが無理は行かぬぞ! 激しい抵抗にあったらすぐに引くのじゃ。高虎殿相手にそなたを失っては大きな痛手じゃからな。」


 「は、ありがたきお言葉。それでは手前は準備いたしますれば。」


 こうして大岡左馬介率いる大鉄砲隊による城攻めが決まった。



 左馬介の策は見事に決まり、半刻後には大手門内に織田勢が雪崩れ込んだのである。

 大手門内の城兵を駆逐し、二の丸攻めをしようとした矢先である。白旗を掲げ若武者が躍り出てきた。見たところ武具は身につけていない。


 「正則様! 福島正則様! 手前、主・藤堂高虎よりの使者でござる。撃たないで下され。話しをお聞きいただきとう存じまする! 」


 おどおどとした使者であった。正則は秀則の許可を得て話を聞くことにした。その場にはもちろん秀則も同席する。


 「申してみよ! 」


 仏頂面で使者にきつく当たる。


 「は、主・藤堂高虎は福島正則様に降伏いたす決意をいたしました。何とぞ降伏をお認め下され。」


 「何!高虎めは降伏いたすと!? それも儂にじゃと? たわけ! この軍勢の大将はこちらの織田秀則殿じゃ! 出直してまいれ! いや時間の無駄じゃ! そんなふざけた事を申す高虎の息の根を止めてやるわ! 」


 「も、申し訳ございませぬ。で、では秀則様にお願いいたします。何とぞ降伏をお認め下され。後生でございます! 」


 使者も必死である。


 「これ! 何ぞ企んでおるではおるまいの。腹黒でしられる高虎殿であるからな。それに中には援軍の諸将もおられるであろう。加藤殿、山崎殿も降伏されると申すか? 」


 「いえ、御両所は主が降伏を決めた際に、怒って裏門より出ていかれました。この城には我が軍勢のみでございまする。」


 秀則、正則は呆れてしまった。援軍を頼み来てもらっていながら、どうやら勝手に降伏を決めたようである。普通は援軍の将と話をして決めるべきものである。

 

「そなたの主はなんとも情けないのぅ。」


 正則は気の毒そうに使者に声をかけた。


 秀則、正則は話し合った結果、高虎の降伏を認めた。


 「これは正則殿、久しいの。こたびは済まなんだ。清正殿は息災か?儂も本多正信なんぞの口車に乗せられ家康に与してしもうた。内心ずっと悔んでおった。したがやっと故・太閤様の恩に報いる決心をしたのじゃ。遅くなってすまぬ。」


 のうのうと高虎は正則に笑顔で話しかけた。


 「高虎。そちは全く分かっておらぬの。使いの者にも申したはずじゃ。この軍の大将は織田秀則殿じゃ。それに軽々しく豊家に戻るような事を申しておるが、それを決めるのは関白・秀頼様じゃ。貴様はただの敗戦の将じゃ。それを忘れるな! たわけが! 」


 正則は怒りで顔を真っ赤にしながらはき捨てた。秀則は冷めた目で高虎を見据えている。

 高虎は慌てて秀則に向き直り口を開きかけたが、秀則はそれを手で制した。


 「藤堂高虎殿。今はそなたの言うことを聞くつもりはない。左馬介! この者を縛り上げ引き立てよ! それから将の身分の者も同様にいたせ。足軽たちは纏めあげ我が織田家に従臣する者は迎え入れよ。どこぞの国元に帰る者や帰農を願う者は認めて放り出すのじゃ。正則様、足軽たちの取りまとめに海老名伊賀殿をお貸し願えますかな? 」


 「おう、ようございます。伊賀よ、秀則殿に従え! 」



 藤堂高虎は小手高々に縛りあげられ、大阪城に引き立てられていった。高虎の将以上の身分の者達も同様である。兵達は千兵あまりが織田家に、五百は福島家に引き取られた。



 美作国であるが福島正則の援軍のお陰で、織田家が治めることになった。

 日上山城は改めて廃城とし、小田草城にはを織田秀勝を入れ三万石で治めさせ、津山城には丹波八上城から兄・秀信を移動し残りの美作領の大半十万石を治めてもらうことにした。残りは秀則直轄領である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ