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秀吉の遺言  作者: 鳥越 暁
秀頼飛翔
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大阪冬の陣2

 戦局が動いたのは四国からであった。


 1614年2月4日


 島津家久率いる2万の兵は四国・讃岐の生駒正俊十八万六千石を、伊予の山之内一豊と共に攻め降し、降伏させた。降将の生駒正俊を先頭にたてて、藤堂高虎、蜂須賀至鎮の留守居隊を攻めた。2月12日には四国は豊臣の色に染まったのである。

 島津家久は四国の仕置を山之内一豊に任せ、生駒正俊を引き連れ、海路大阪へ寄せた。家久二万兵は秀頼の元へ出仕後に福島正則の後方に陣を構えた。生駒正俊三千兵は明石全登に預けられ、明石全途の前面に置かれた。


 また、島津家久と時を同じくして、加藤清正、宇喜多秀家も海路大阪城に着陣した。加藤清正は大阪城の北側の、平野川の更に北に陣を構え、池田輝政らに対する。宇喜多秀家は、城の西側の備前島に陣を構えた。大阪城は十万強の兵で守られることになった。


 徳川秀忠率いる攻城軍であるが、その元には近畿・東海の小大名が続々と集ってきたが、みな兵数は少ない。


 「うむ、これでは大阪城を囲むどころではないのぅ。対峙するのがやっとじゃ。やはりあれで攻めるか。」


 秀忠は誰に言うでもなく呟いた。秀忠はひとり言を言う癖がある。あれとは大筒である。徳川家康は軍船の取り壊しなどを各水軍に命じていたのだが、船に装備されていた大筒を取り外し献上させていた。

 秀忠は秀吉の小田原城攻めを見て、大阪城の攻撃に大筒を用いるつもりである。


 2月12日

 深夜に秀忠は大筒隊を大阪城の西側に密かに布陣した。秀忠は密かに大筒を配したつもりであったのであるが、真田忍びにより大阪城内に知らされており、防御態勢が整えられていた。

 夜明けとともに、秀忠の大筒隊が発砲を開始する。


 『ドドーンッ!! ドーンッ!! 』


 5台の大筒が大地を揺らす響きと共に、鉄の玉を吐き出す。五つの玉が城内に吸い込まれると、攻城軍から歓声が上がる。



 大筒を撃ち込まれた大坂城では、天守閣で秀頼が様子を見ていた。


 「いよいよ、はじまったのぅ。皆の者は大丈夫であろうの? 」


 豊臣秀則は真田昌幸と加藤嘉明に向かって言う。


 「はい、上様のご指示通りに穴に籠りますれば被害はなかろうと存じます。」


 嘉明が答えた。


 「そうか、それは良かった。あと半刻は続くじゃろうて、くれぐれも気を付けるように申してくれ。」


 「お伝えしておきますれば、ご安心を。」


 「しかし上様。徳川の面々は大筒の使い方を知りませぬな。あのように城内に打ち込むより、城門や施設に叩き込む方が良いのでござるのに……。」


 昌幸の言う通りであった。砲弾によって倒される兵は意外と少ないのである。大筒による兵への効果は砲撃音による心理的圧迫にある。いわゆる脅しである。しかし大阪城に籠る兵たちは昌幸に十分に教えを受けていたために慌てる者はいなかった。

 大筒の使い道としては城門を狙ってうち砕いたり、倉などへ撃ち込むことにより兵糧や煙硝などの物資への被害を狙うべきなのである。

 

 半刻後、攻城軍の大筒攻撃が終わった。

 平野口門に対峙する分部光信は、隣りに布陣する浅野幸長に言う。


 「幸長様、城内は静まり返っておりますなあ。ふふふ、肝を冷やして首をすくめておるのでしょう。」


 「ははは、そうであろうな。」


 「はい。首をすくめておる間に、私はあの平野口を攻めようと思いまする。後詰めお願いできますでしょうか。」


 「おお、光信殿は戦意が高うござるな。よいでしょう。後詰めいたしまする。上手くゆけば一番槍でございますな。」


 「それ! 者ども! あの門に取り付けーッ! 」


 幸長に一番槍と言われ、すっかりその気になった光信は軍配を振るった。


 『どどどどどっ……! 』


 百名あまりの足軽兵が門に寄せる。


 「それ、掛け矢を掛けよ! 」


 小頭が命じ掛け矢が城門に向けられたが…。


 『キンッ! 』


 金属音がして跳ね返される。


 「やや、この門には鉄板が貼ってあるぞ。」


 先程の小頭がどうしようか迷っていると


 『ダダーンッンンン……! 』


 大きな銃声がした。


 門横の鉄砲狭間から銃撃が襲ったのである。しかも、この時の鉄砲は大鉄砲であった。目の前にいた兵の首から上がいきなり吹き飛び、小頭は腰を抜かしてしまった。


 『ダダーンッ! ダンッダンッ! 』


 再び銃撃音がすると城門前に寄せた百名の足軽兵は壊滅した。

 慌てたのは分部光信である。慌てて突撃を止めさせた。


 「くそっ! そうは上手くいかぬか。仕方ない。ここは諦めて、陣を固めておくか。」


 と光信が城門に取り付くのをあきらめた時である。平野口門がハノ字に開くと、城内から騎馬隊が躍り出てきた。瞬く間に、押し寄せ光信の陣の柵に取りつく。


 「それ! 柵を引き倒せーッ! 」


 騎馬隊は僅かに八十騎ほどであったのだが、先程の門前での銃撃により兵達は戦意を削がれ、すっかり逃げ腰であった。柵は引き倒され、陣内に騎馬武者が突っ込んでくる。


 「やや。これは駄目だ! 幸長様の陣へ逃げ込めーッ! 」


 光信は兵を纏め、隣りの浅野幸長の陣へ逃げ込もうとしたのであるが、辿りつけなかった。


 「我は横浜茂勝なり。そこな御人、お覚悟! 」


 横浜茂勝は名を聞く事もなく光信をあっさりと討ち取ってしまった。


 「それひけ、幸長殿の兵が寄せてくるぞ! 引け引けーッ! 」


 茂勝は引き際も見事であった。分部光信は千兵を率いていたが、城門前で百兵を、騎馬隊の突撃で百五十兵あまりを減じていた。なにより光信本人が討ち取られてしまった。

 浅野幸長はすばやく光信の遺臣たちを纏めて、自らの隊に取り入れた。そのうえで改めて柵を構築し陣を固めた。



 「また茂勝が一番槍か。めでたいの。感状を与える。」


 秀頼は喜ぶと、感状を与えた。


 「はは、ありがたき幸せ! 更に励みまする。」



 籠城軍に暗い雰囲気は全くない。むしろ明るく生き生きとしている。豊臣軍ならではである。

 

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