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秀吉の遺言  作者: 鳥越 暁
秀頼飛翔
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織田秀則、高砂城奪取!

 織田秀則は、城を攻め版図を広げるには五百兵ではどうにもならないことを知っていた。秀則は秀頼の家臣であるので、兵の貸し出しは依頼すれば可能であるが、できる限り自分の兵だけでやっていきたかった。それが秀頼の期待に応えることになると感じていた。


 そこで織田秀則は船戦でよく使われる大鉄砲に目を付けた。大鉄砲は文字通り口径の大きな鉄砲で、重量は重いが、城門の破壊には特に優れ、また殺傷能力も非常にある。晩年の信長も城攻めによく大鉄砲を用いた。大鉄砲には色々なサイズがあるが、秀則は五十匁玉を使用するのが良いとした、それは人が一人で抱えられ、戦場での移動も十分に可能と見たからだ。

 秀則は秀頼の許可を得て、豊臣方の銃器生産地である向島に百丁の大鉄砲の生産を依頼した。本来は半年で生産できるかどうかということであったが、頼み込んでなんとか三カ月で生産してもらえることになった。


 大鉄砲を生産している間、秀則は少し無理をして兵数を増やす。村々に兵を出した者の家には今年の年貢を免除する旨の触れを出し二百名ばかりを雇った。年貢を免除すれば来年は苦しくなるが、その前に版図を広げればよいと前向きに考えたのである。また銃器に秀でた伏見城の真田幸村に、兵五十を預け、訓練を依頼した。


一六一三(慶長十八)年二月二日

 織田秀則はすべての準備が整い、城攻めを決めた。

 狙うは加古川の河口に建つ高砂城である。ここを狙うのは二つの理由がある。一つは海に近く城下が発展していること。二つ目は豊臣方の三木城と近く連携が取れることである。


 秀則は二百の兵を庄山城に置き、残りの五百兵を率いて高砂城に向かった。大鉄砲は五十丁、鉄砲は五十丁である。物見によると守兵は千兵でこちら側の倍する人数がいる。城攻めは籠城兵の三倍は必要だと言われている。

 姫路城に悟られぬように夜明け前に出陣し、明け六つごろに着く。

 高砂城は海運を通した重要な補給基地であるため、さすがにこちらの動きを察知して戦支度を整えているようである。

 

 『ズダーンッ!!!』 

 早朝の静けさを引き裂くように大きな砲撃音がこだまする。

 秀則の兵が城門に向けて大鉄砲を放ったのだ。

 

 『ズダーンッ!!!』

 続けて砲撃音が響く!城内で慌てている様子が伝わってくる。さらに二発の砲撃を加えたところで、城門は壊された。そこに足軽隊が飛び込んでいく。

 守兵は慌てており、あたふたとしている間に次々と秀則兵の槍の錆になっていく。

 守将が慌てる兵を纏めて陳形をとる。将の激励で城兵たちも次第に落ち着きを取り戻してゆく。守将の言う通り、なるほど攻城兵は少ない。


 「敵は寡兵ぞ! 憶するな! それ! 一斉に槍を付けよ! 」


 城の守兵たちが、槍先を合わせて突きだすと、秀則の兵十数人が討ち取られた。


 「いかん、一旦引け! 」


 秀則の隊の小頭が叫び、少し引いて距離を取る。

 兵が引いて間を取る間、大岡左馬介が奮戦し城兵を押しとどめた。

 大岡の働きでなんとか距離を取り陣形を整える。


 「よし槍隊は左右に散り、前を空けよ。」


 という秀則の声で、左馬介もさっと引いてくる。

 前方が開けたので、城兵たちが押して出ようとした時、大鉄砲隊が進み出た。


 『ズダダーンッ!!!! 』


 再び空気をつんざく砲撃音がして、城兵を打ち砕いた。その数三十名ほどである。

 城兵たちは、すさまじい砲撃音と、目の前で打ち砕かれた仲間の姿を見て、完全に戦意を喪失している。そこに左馬介が槍隊を率いて突っ込んでいく。


 こうして大鉄砲を駆使した怒涛の攻撃で三の丸、続けて二の丸を攻め落とした。


 二の丸までは、さしたる被害もなく秀則達が占拠し、いよいよ本丸攻めである。


 本丸には天守などはないいわゆる昔の館風であるが、なかなか堅固そうであった。


 「本丸内の守兵はいかほどか? 」


秀則が尋ねる。


 「は、七百ほどかと思われまする。」


 「なんと、まだ七百もいるのか。」


 じっと本丸の門を見ながら秀則が呟く。


 やがて……


 「よし。攻めよ!」


 と秀則が短く攻撃を命じた。

 先ほどと同じように、大鉄砲の砲撃により本丸の門は打ち砕かれた。


 「それ! 突撃~ぃ! 」


 足軽たちが我先にとばかり飛び込んでいく。30名ばかりが飛び込んだ時、前方、左右から『ダンッダダンッ! 』と銃声が響いた。


 次の瞬間、先陣を切って飛び込んだ足軽兵三十名は物言わぬ骸と化した。待ち伏せを食らったのであった。

 大岡左馬介が思わず叫ぶ


 「いかん! 者ども、とまれ! 飛び込んではいかんっ! 」


 その言葉は遅かった。勢いの止まらない十数名が再び飛び込んで行ってしまった。先程討たれた足軽兵の上に覆いかぶさるように彼らもまた骸と化した。そこで、やっと突撃しようとしていた者たちの足が止まる。

 

 「よし! 槍隊は敵を押し返せ! 」


と城将の声が聞こえる。と同時に、本丸の門から二の丸郭の秀則達に向かって、槍を突き出した城兵たちが飛び出してきた。

 たちまち乱戦となる。乱戦では大鉄砲も鉄砲も使えない。

 

 この時、秀則は兵を三百五十名まで減らしている。大鉄砲隊、鉄砲隊が合わせて百兵であるので、城兵に対しているのは二百五十兵である。対する突撃してきた城兵は五百兵。

 秀則率いる織田兵たちも必死に戦っているが、数に劣り、数を減らしていく。織田家に雇われたばかりの兵達は熟練度も低く戦慣れしていない。とうとう奮戦むなしく、百兵ほどにまで数を減じてしまった。


 【これまでか……。】


 と敵兵に囲まれた秀則が覚悟した時である。


 「殿! 伏せて下され! 」


と後方から声がした。大岡左馬介の声である。

 声のする方に顔を傾けると、なんと大岡ら数名がが大鉄砲を構えている。


 「よし! 皆の者伏せよ! 」


 秀則が叫び、慌てて伏せた時


 『ドンッ!ドドンッ! 』  


 という砲撃音が響き、辺りが濃い紫煙に包まれ視界が奪われた。


 紫煙がはれて視界が戻った時、数名の城兵が吹き飛ばされていた。中には右足を失いもがき苦しんでいる兵もいる。


 「あれにやられたらたまらんぞ! 逃げろ~っ! 」


 惨状を目のあたりにした城兵の足軽兵の一人が叫んだ。

 それを合図にしたように城兵たちが我先にと本丸の中に逃げ入ってゆく。実際に大鉄砲で命を落としたのは僅か数人であったのであるが、大きな砲撃音と撃たれた者の惨劇を目のあたりにして、城兵たちは冷静さを失ってしまった。狭い門に殺到した兵たちは、もみ合いになり、味方の兵に踏みつけられ命を落とした者もいた。


 「それ! 逃げし兵を討ち取れ! 」


 ここぞとばかりに秀則が叫ぶ!


 「そいやーッ!! 」


 足軽たちが背を向けた城兵に槍をつけて、どんどん討ち取っていった。これがこの戦の山場であった。


 「大将・中村主殿助殿、討ち取ったりーッ! 」


と声がした。


 「殿! 終わりましたなぁ。」


 大岡左馬介が秀則に言う。


 「うむ、激しかったのぅ。そちの働きのおかげである。」


 そういわれた左馬介は嬉しそうな顔をしていた。

 秀則達五百兵の内生き残ったのは僅かに八十名ほどという激し戦であった。


 多くの雑兵達の犠牲を出した城攻めで織田秀則は高砂城を手に入れた。


 また織田家の版図が広がり、秀則は四万二千石を領することになったのである。


 経済収益の良い高砂城を手にれ、織田家の経済状態も良い。たちまち二千兵を擁するようになる。

 秀則は高砂城を居城と決め、すぐに高砂城下の産業の発展を促進し、特に播州そろばんを生産に力をれた。数年後には播州そろばんは、そろばんの国内で一番の生産地として発展していく。特産品がある国は経済の地力がついていく。




 庄山城には二千兵の内千兵を配し、高砂城に入るまでの秀則の居館・天神山城跡は天神山砦として造り変え、守将に塩川孫作を置き、五百兵を配した。本城には五百兵である。


 また織田家は大きくなった。


 

 


 


 

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