セッション8 光と魂
12月1日 午後6時 テレビ朝日 ミュージックステーション控室白石美波は、純白のドレスを纏い、控室のソファに静かに座っていた。
プラチナブロンドの髪が照明に輝き、水色の瞳は感情を排したまま、しかし奥に深い揺らぎを宿している。マネージャーがドアをノックして入ってきた。マネージャー
「WIZARD側は生配信らしいです。
凛さんが、YouTubeと公式チャンネルで同時配信で初披露するって。
同じ12月1日、違う舞台で、ぶつかる形になります。」美波は、鏡の中の自分を見つめた。
美波(小声で)
「凛さん……あなたは、家から歌うのね。
私は、ここで、完璧に。」控室のモニターに、リハーサルの映像が流れる。
美波の声が、スタジオを満たす。──Break the darkness
永遠の光で 闇を砕け──最後のフレーズで、わずかに揺らぐ声。
黒崎が意図的に残した、亀裂。美波は、深く息を吸った。美波
「黒崎さん……私は、まだ聖女でいられますか?」
12月1日 午後7時 BEGINNING本社 プライベートスタジオ凛は、黒のロングコートを脱ぎ、白いブラウスと漆黒のロングスカート姿で、カメラの前に立っていた。
部屋はシンプルにセットされ、背景は黒いカーテンだけ。
マイク一本、カメラ三台、照明は柔らかく。零はカメラの後ろに立ち、静かに見守っている。
神崎龍一は、モニタールームで配信準備を確認中。九条悠里が、最終チェック。九条悠里が
「凛、準備OK?
20時ちょうどにYouTubeと公式サイトで生配信スタート。
『君がいない夜に』をフルで初披露。
視聴者数は、もう予約だけで50万超えてる。」
凛が小さく微笑む。
「ありがとう、悠里さん。
神崎社長も、ありがとうございます。」
神崎龍一がモニタールームからインカムで、
「凛ちゃん、緊張してるか?
Mステで美波が歌うのと、ちょうどかぶる時間帯だぞ。
黒崎の仕業だ。」
凛
「大丈夫です。
私は、ここで、零さんと一緒に歌います。」
零が静かに、
「凛、私がそばにいる。」
凛はカメラに向かって、軽く頭を下げた。
凛は、
「みんなに見てもらえるのが、嬉しい。
テレビじゃなくて、直接届ける。」
12月1日 夜8時 二つの舞台が交差するテレビ朝日 ミュージックステーション
生放送
司会者
「続いては、10周年を迎えた永遠の聖女、白石美波さん!
新曲『Break the darkness』をテレビ初披露です!」スタジオに、冷たく輝く照明。
美波がステージ中央に立つ。
イントロを奏で始める。
黒崎の完璧なサウンドが、テレビから全国に流れる。
美波の声が響く。
Break the darkness
視聴者数は、数百万。
完璧なボーカル、完璧なビジュアル。
しかし、最後のサビで、わずかに揺らぐ声。
それが、視聴者の心を掴んだ。SNSが爆発。「美波ちゃんの声、今日なんか違う……泣ける」
「黒崎の新曲、神すぎる」
「聖女が、初めて人間に見えた」
同時刻 BEGINNING公式生配信画面に、凛の姿。
凛、静かに、カメラに向かって、
「こんばんは、WIZARDです。
今日、12月1日0時にリリースした新曲『君がいない夜に』を、初めて、みんなに届けます。」
零が、カメラの外から軽く合図。
プレイバックが始まる。
黒崎のトラックが、静かに流れる。凛の声が、配信に響く。
視聴者数は、急上昇。
100万、200万、300万超え。コメント欄が、涙の絵文字で埋まる。
「凛さんの声、魂が直撃する」
「黒崎の曲に、こんな声が乗るなんて、神の悪戯」
「Mステの美波と同日って、運命すぎる」
凛は、歌い終わって、静かに頭を下げた。
凛「聞いてくれて、ありがとう。
この曲は、私のすべてです。」
夜9時
Mステ控室
美波は、モニターで凛の生配信を見ていた。
美波は小声で呟く。
「凛さん……あなたの声、届いたよ。
私の完璧を、また揺らした。」
LUXE最上階
黒崎は、二つの画面を並べて見ていた。
左 Mステの美波
右 凛の生配信黒崎(微かに微笑む)
「よくやった、美波。
凛、お前もだ。
同じ日に、違う舞台で、
私の二つの頂点が響き合った。」
BEGINNINGスタジオ
配信終了後。凛は零の胸に顔を埋めた。
凛が
「零さん……歌えた。
みんなに、届いたかな。」
零、
「届いた、凛。
間違いない。」
神崎龍一(部屋に入ってきて)
「視聴者数、最終500万超えだ。
悔しいが黒崎の曲だがあっぱれだ。」
凛が、
「神崎社長……ありがとうございます。
生配信でよかった。
零さんと、一緒にいられて。」
12月1日は、美波はミュージックステーションで完璧な光を、凛は生配信で静かな魂を、それぞれの舞台で初披露した日として、永遠に記憶された。
光と魂。
同日、異なる舞台で、新たな火花を散らした。




