セッション5 そばにいるのに
BEGINNING本社
メインスタジオAスタジオのドアが開いた瞬間、爆音のような笑い声が響いた。
「よぉぉぉー! 凛ちゃん、久しぶりー!!」
TAKU(Dz)が、いつもの黒の革ジャンにダメージジーンズ姿で飛び込んできた。
手には愛用のギターケース。肩にはタオル。すでに汗ばんでいる。凛はブースの前でヘッドフォンを調整しながら、ぱっと顔を上げて笑った。
「TAKUさん! お久しぶりです!」
TAKUはケースをドンと床に置き、凛に駆け寄ってハイタッチ。
「てか、凛ちゃんマジで可愛くなったな!
零に食われてんのか?」
凛は頬を赤くしながらも笑って、
「もう、TAKUさんったら! 零さんに言いつけますよ?」
コントロールルームのガラス越しに、零が静かに座っている。
今日は立ち入り自由。
零は肘をつき、穏やかな目で二人を見守っていた。
TAKUはガラスに向かって大声で、
「零! 悪い悪い! 冗談だって!
お前が一番大事にしてるの、俺が一番知ってるから!」
零ほ小さく手を振って、口元に笑み、エンジニアの皆川真琴(Keyboards)が笑いを堪えながらマイクをチェック。
是永巧一とBOHもスタジオに入ってきて、軽く挨拶。
TAKUはギターケースを開け、愛用のレスポールを抱える。
TAKUが、
「今日は生ギターでいくぜ!
凛ちゃんの声に合わせて、俺がリアルタイムで弾く。
一緒に暴れよう!」
凛は目を輝かせて、
「嬉しいです! TAKUさんのギター、生で聴けるなんて!」
賑やかなリハーサルトラックはTAKUらしいヘヴィで攻撃的なビート。
歪んだリフ、爆発的なドラム、轟音のベースライン。
でも今日のメインは、生ギターと凛のボーカル。
TAKUはアンプの前に座り、凛はブースでマイクに向かう。
ギターを軽く鳴らしながら、
「凛ちゃん、『そばにいるのに』ってタイトル、めっちゃエモいよな。
すぐ隣にいるのに、触れられない距離。
エモいな。」
「TAKUさんの音に乗ったら、きっともっと大きな距離に。
壊したくなるくらい、近くて遠い。」
TAKUは興奮して、
「それだよそれ!
俺のギターで、その痛みを全部ぶちまけようぜ!」生ギターと声のセッションプレイバックはトラックのみ。
TAKUの生ギターは別チャンネルでリアルタイム録音。
1テイク目。凛の声が響く。
TAKUのギターが即興で絡む。
歪んだコードが凛の声を包み、突然のアドリブリフで煽る。
凛の声が自然に熱を帯びる。
TAKUは弾きながら叫ぶ。
「いいぞ凛ちゃん! もっと怒れ!
触れられないなら、壊せって叫べ!」
凛は笑いながら歌う。
「壊したい! この距離、全部!」
零はガラス越しに、静かに微笑む。
テイク終了。TAKU
「最高! でもまだ甘い!
凛ちゃん、もっと俺のギターに食らいついてこい!」凛
「はい! TAKUさんのギター、めっちゃ美味しいです!」
皆川真琴はコントロールルームで笑い崩れている。
「美味しいって(笑)」
Beginning同士の共感休憩タイム。
TAKUと凛はブースの外でジュースを飲みながら話す。
「凛ちゃんさ、俺らBeginningだからわかるけど……
黒崎さんって、ほんとスゲーだよな。
『凛ちゃんの可能性見たい』って、あの人本気で言ってるぜ。」
凛はくすくす笑う。
「知ってます。
でも、嬉しいんです。
TAKUさんも、Beginningでよかったって思いました?」
TAKUは真顔になり、少し照れながら、
「……まあな。
実は若いころ、黒崎さんのバックで弾いてたことがあってね。
あの頃から、あの人のビートは輝きまくってた。
だけど、俺も稲葉と出会って自分の音楽見つけちまったから。
ここなら、好きに暴れられる。
凛ちゃんの声も、自由に飛べる。」
凛は優しく返す。
「TAKUさんのギター、ほんと自由です。
今日、すごく楽しいです。」
TAKUは急に照れて、頭をかく。
「お、おう……
じゃあ、もう一回暴れるか!」
最終テイク午後6時。
何十テイクも重ねた後。
TAKUが叫ぶ。
「これでラスト!
凛ちゃん、全部出せ!
俺も全部出す!」
プレイバックスタート。
凛の声が、最初は静かに、徐々に熱を帯びて。
そして、TAKUのギターが狂ったように絡む。
ディストーション全開のソロ。
凛の声に合わせて、泣き、叫び、爆発する。
最後のサビで、凛の声が最高潮に。
TAKUのギターが最後に一発、フィードバックを残して終わる。
静寂。
TAKUは息を切らして、ガッツポーズ。
「……やべえ。
マジでやべえ。
凛ちゃん、最高だった。」
凛がヘッドフォンを外して笑う。
「TAKUさんも!
ギターが、ほんとにそばにいてくれました。」
コントロールルームから拍手。
零がゆっくり立ち上がり、静かに親指を立てる。
TAKUが零に向かって叫ぶ。
「零! お前の大事な凛ちゃん、ちょっと借りたぜ!
返してやるから、感謝しろよ!」
零は小さく笑って。
「感謝している。」
と呟いた。
凛はブースから出て、TAKUとハイタッチ。
「TAKUさん、ありがとうございました。
Beginningで一緒にできて、ほんとよかったです。」
「また呼べよ。
次はもっと暴れようぜ。」
スタジオは笑いと熱気に満ちていた。
「そばにいるのに」は、フレンドリーで賑やかで、Beginningらしい熱量で完成した。
「そばにいるのに」
【https://drive.google.com/file/d/1nRSq1FnyGB824tk7xYXz-KNQJvpFOHvA/view?usp=drivesdk】




