セッション2 神崎の情熱
BEGINNING本社 最上階
神崎龍一のプライベートルーム
重厚な扉が静かに開き、零が入室した。
部屋は薄暗く、壁一面のガラス窓から東京の夜景が広がり、神崎龍一は大きな革のソファに深く腰を沈め、グラスを傾けていた。
神崎龍一は振り返らず、笑みを浮かべた声で、
「遅かったな、零。
凛ちゃんはもう寝たのか?」
零はコートを脱ぎ、向かいのソファに座る。
黒のシャツの袖を軽くまくり、静かに答えた。
「凛はスタジオで詞の最終確認をしていた。
私が先に上がれと言いました。」
神崎はグラスをテーブルに置き、ゆっくりと立ち上がる。
神崎龍一
「いいか、零。
お前に直接伝えておきたかったんだ。」
零は無言で神崎を見据える。
神崎龍一は満足げに、しかしどこか興奮を抑えきれない声で、
「三週連続シングルリリース、決まったぞ。
全曲凛の作詞。
作曲は……黒崎、TAKU、小林尊だ。」
零の瞳が、わずかに細められた。零
「……黒崎が一方的に送ってきた『君がいない夜に』も含めて、ですか。」
神崎龍一は大きく頷き、笑う。
「ああ、もちろん。
あの曲を一番最初に持ってくる。
黒崎が仕掛けてきたゲームを、真正面から受け止めて、さらに叩き返す。
業界中が息を呑むぞ。」
神崎は窓際に歩み寄り、夜景を見下ろしながら続けた。
神崎龍一は
「記者会見は3日後。
出席は、お前と凛ちゃんと、私の三人だけだ。
他のメンバーはレコーディングに集中させる。
これが一番、メッセージが強い。」
零はゆっくりと立ち上がり、神崎の隣に並んだ。
二人は肩を並べて、東京の光の海を見下ろす。
零が問う。
「神崎さん……あなたは、どこまで楽しんでいる?」
神崎龍一はくつくつと喉の奥で笑い、零の肩を軽く叩いた。
「全部だよ、零。
黒崎がどんな顔をするか。
凛ちゃんの声がどこまで届くか。
お前がどれだけ冷たく笑うか。
全部、楽しみで仕方ない。」
少しの沈黙。
零は静かに、しかし確かな声で!
「私も、です。
凛の詞が、黒崎の完璧を内側から壊す瞬間を、
見届けるのが待ち遠しい。」
神崎龍一ほ満足げに頷く。
「そうだ。
それに……『Never Forget That Smile』だろ?
小林尊との曲。
あれは、Izumiさんへの、ちゃんとした答えになる。」零の表情が、ほんの一瞬、揺れた。零
「……ええ。
凛が、【あの笑顔を忘れない】と言った。
私たちも、忘れない。」
神崎は再びグラスを手に取り、零に向かって差し出す。
「じゃあ、乾杯するか。
三週連続で、業界をぶち抜くために。」
零はグラスを受け取り、軽く合わせた。
「凛の魂が、届くまで。」
神崎龍一は、
「黒崎が微笑みをやめるまで。」
二人のグラスが静かに触れ合った。
夜はまだ深く、光と魂の最終戦争は、確実に、新たな火蓋を切り落とそうとしていた。




