セッション7 大爆発
翌日の朝 2027年8月11日
BEGINNING Inc. 本社ビル
朝8時30分。
まだ夏の陽射しが柔らかい時間帯に、社内はすでに爆発していた。
エレベーターのドアが開くたびに、歓声がロビーに響き渡る。
社員たちがスマホを片手に走り回り、ハイタッチを交わし、誰彼構わず抱きついている。
「オリコン1位キター!!!」
「ダブルミリオン突破だって!! 朝イチで認定!!」
社長室の前では、神崎龍一が珍しくネクタイを緩め、白髪交じりのオールバックを乱しながら、秘書に囲まれて大声で笑っていた。
「社長! おめでとうございます!!」
「いや、これは凛と零の勝利だ! スタッフ全員にボーナス出すぞ!!」
地下の「黒のアトリエ」では、サポートメンバー全員が朝早くから集合していた。
是永巧一がギターケースを振り回しながら叫ぶ。
「やったぜ零ちゃん!! 命賭けた甲斐があった!! オリコン1位だよ1位!!」
BOHはいつもの無口を破り、珍しく拳を握りしめて大きく頷いている。
川口千里はドラムスティックを両手に持ち、天井に向かって叩く真似で大喜び。
「凛ちゃんの朝が来た!! 日本中の朝が凛ちゃんの声で始まるんだよ!!!」
皆川真琴はピアノの前に座り、感動して目を潤ませながら笑っていた。
九条悠里は凛の次回衣装のスケッチを広げながら、涙を拭いている。
「凛ちゃんの白Tが……あんなに似合うなんて……もう、次の衣装も白基調でいこうかしら」
そして、部屋の中心。
零は黒いレザージャケットのまま、壁に寄りかかって静かにスマホの画面を見つめていた。
オリコンデジタルチャートのスクリーンショット。
1位 WIZARD / Rise With The Sun
認定:ダブルミリオン(200万DL突破)
零の口元に、珍しく満面の笑みが浮かぶ。
その横で、凛は両手を顔に当てて、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
「零さん……本当に……1位で……ダブルミリオン……?」
零がゆっくりと凛に近づき、後ろから優しく抱きしめる。
「ああ。本当だ。
凛の詞が、凛の声が、日本中の朝を変えた」
凛は零の腕の中で、肩を震わせながら泣き笑いした。
「私……初めて……誰かの太陽になれた……」
そこへ、神崎龍一が社長室から降りてきて、部屋のドアを勢いよく開けた。
「おーい! 全員集合だ!!
今日の午後、緊急記者会見開くぞ!
凛、一人で出ろ! 白Tのままでいい!!」
社員たちが一斉に歓声を上げる。
是永が叫ぶ。
「凛ちゃん、表舞台完全制覇だ!!」
千里が飛び跳ねる。
「凛ちゃんが日本一の朝を届けた!!」
BOHが珍しく声を出した。
「……姫、おめでとう」
真琴が凛の手を取って、優しく言った。
「沙月も、きっと今頃テレビの前で大喜びしてるわ」
凛は涙を拭い、みんなを見回した。
そして、敬語のまま、でもこれまでにないほど強い声で言った。
「みんな……ありがとうございます。
この歌は、みんながいてくれたから……
沙月ちゃんが笑ってくれたから……」
零が凛の髪を撫でながら、囁く。
「凛。これで、お前はもう完全に太陽だ」
社内はしばらく狂喜乱舞が続いた。
シャンパンのコルクが飛び、社員たちが歌い始め、
誰かが「Rise With The Sun」のサビを大合唱し始めた。
Rise With The Sun
太陽と一緒に 立ち上がろう
君がいるから 強くなれる
BEGINNING Inc. 本社ビルは、朝からまるでスタジアムのような熱気に包まれていた。
「Rise With The Sun」は、ただの曲ではなく、日本中の新しい合言葉となった。




