セッション5 2人でしっぽり曲作り
夜10時過ぎ。
都内のスタジオ。エアコンは効いているのに、部屋の中は熱気で満ちている。
机の上にはノートパソコンが2台、MIDIキーボード、ギターアンプ、そして凛が手書きした「Rise With The Sun」の詞のプリントアウト。
零はTシャツ一枚でギターを抱え、凛は零の大きめの白シャツを羽織って椅子に座っている。
凛の瞳に強い光が宿っている。
いつもは零が先にトラックを作って、そこに凛が詞を乗せる流れだった。
でも今回は違う。
凛が先に詞を書き上げてきた。
だから、曲を詞に合わせる変則制作。
零はプリントアウトを何度も読み返しながら、ギターで短いフレーズを弾いている。
零
「このサビ……『Rise With The Sun』って、絶対にスタジアムでみんなが拳上げて叫ぶやつだよな。
BPM178で、Aメジャーから最後にBメジャーにキー上げて、フルバンドが一気に爆発させるイメージしかない」
凛は微笑みながら、
「はい。朝日が昇る瞬間みたいな、希望がぶわっと広がる感じにしたくて。
だからイントロは明るいツインギターリフで始まって、ドラムカウントで1-2-3-4! って入ってほしい」
零は頷いて、ギターで候補のリフをいくつか弾き始める。
明るく、キャッチーで、短くて覚えやすいリフ。
凛は目を閉じて聴き、首を振ったり頷いたり。
凛は、
「もうちょっと……上昇感が欲しい。
『立ち上がろう』ってところで、みんなの心が一緒に持ち上がるような」
零「わかった。こう?」
零が弾いたリフ。短くて鋭く、ポジティブなコード進行で上へ上へと駆け上がる。
凛の顔がぱっと明るくなる。
凛「それ! 零さん!」
零は笑って、
「よし、イントロ決まり。
次、Verse 1のコードどうする?
詞が静かめだから、最初はギターアルペジオと軽いハイハットだけでいいかな」
凛は、
「はい。でも『君の声が響く』で少しベースが入ってきて、『もう大丈夫だって』でスネアがポンって入ってほしい。
胸が軽くなる感じを、音で表現したい」
零はDAWを操作しながら、ドラムトラックを打ち込んでいく。
零はボーカルトラックを仮で録音し始める。
凛がメインボーカルを歌い、零がバックを重ねていく。
まだ仮だけど、すでに厚みが出ている。
零はヘッドホンを外して、
「凛、Bridgeのhalf-timeからビルドアップ、ここが大事だよな。
『そっと息を吸って』で一旦静かにして、ドラムフィルとギターの上昇で大爆発。
最後のChorusはキーアップしてBメジャー、コーラスで締める」
凛は立ち上がって、零の隣に座る。
二人の肩が触れ合う。
凛が、
「最終サビの『君がいるから 強くなれる』……このフレーズ、すごく大事にしたくて。
私が零さんに、いつも支えてもらってる気持ちを込めたの」
零は少し照れくさそうに、でも真剣に凛を見つめる。
零は、
「私も、凛がいるから強くなれた。」
凛は零の手をそっと握る。
二人は再びDAWに向かい、Bridgeのビルドアップを調整し、Final Chorusのキーアップを何度も試す。
深夜1時過ぎ。
最後のミックスを聴きながら、二人は並んでソファに座る。
スピーカーから流れるのは、
178BPMの疾走感、明るいツインギターリフ、巨大なスネアとタンバリンが鳴り響く中、凛の透き通った天使のようなボーカルと、
厚いコーラスが朝日と共に爆発する。
まさに「full arena sunrise live vibe」。
凛は零の肩に頭を預けて、
「……できたね、零さん」
零は凛の髪を撫でながら、
「完璧だよ、凛。
この曲、きっと朝日をバックに歌おう」
凛は目を閉じて、微笑む。
Rise With The Sun……
太陽と一緒に、ずっと前を向いて
零と凛は、二人だけで未来のアンセムを完成させた。




