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セッション6 父への想い

2025年11月18日(火) 深夜3:27

新宿・ワンルーム6畳凛は、完全に枯れていた。

残業で23時の帰宅。

そのままギターを抱えて床に座り込んだまま、もう6時間。机の上には、赤ペンで真っ赤に染まったメモ帳が山積み。

iPhoneのボイスメモは87テイク目。

誰かを泣かせる曲。

@rainy_earに出された、最難関の宿題。

最初は「バラードにすれば」と思って、

優しいコードで書いてみた。

でも、全部嘘っぽくなった。

甘ったるいだけ。

誰の心も揺らさない。

凛は、ふと父の写真を見た。

スマホの待受。

2021年、交通事故で亡くなった日の直前に撮った、

父と二人で地元の無人駅を歩く写真。

父はいつも言っていた。

「凛、お前の声は優しいね。」

でも、凛はそれをただ「優しい」という意味だと思っていた。違った。

本当の意味は、痛みを共有できる、ってことだった。

凛は、ギターを膝に置いたまま、

コードを全部捨てた。

指が自然に動いたのは、

Dm → Bb → F → C

父がよく弾いていた、昔のフォークの定番進行。

そして、歌詞が降りてきた。

一度書いたら、もう止まらなかった。


録音終了。

再生した瞬間、

凛は自分でもびっくりするほど 号泣した。

そして、涙を流しながらミキシング。

それは完成した。


YouTube Live タイトル

「宿題提出:誰かを泣かせる曲」

視聴者:1,247人(開始5分で)凛は、画面の前で深く一礼した。

「今日は……とても大事な曲です」

「私にとって、一生に一度の曲かもしれません、天国の父へ…」

そして、静かに歌い始めた

再生後10分で、コメント欄が涙文字で埋まった。

「死にたいって思ってたけど…ありがとう」

「父を亡くして5年…初めて泣けた」

「隣で旦那が号泣してる」

「歌い終わった後の沈黙が辛い…」

スーパーチャットが雪崩のように降り注ぐ。

そして、最後に現れた一行。


@rainy_ear「……宿題、合格。」


凛は、画面越しに頭を下げた。

涙が止まらない。

窓の外、2025年の東京の冬の夜空に、小さな星が一つ、涙のように瞬いた

挿絵(By みてみん)


If This Winter Never Ends

【https://drive.google.com/file/d/1WvMdBE3ctiGMTJAEjt_uWR8L9lqHN_XA/view?usp=drivesdk】

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