セッション3 ツアー中 小さなハプニングと笑顔
アリーナツアー「What a beautiful memory」は、順調に進んでいた。
開幕から1ヶ月。
すでに15公演を消化し、
残り12公演。
動員数は20万人を突破し、追加公演の要望がSNSで溢れていた。
しかし、完璧すぎるツアーというのは逆に味気ない。
凛の小さなハプニングが逆に会場を温かく包みWIZARDの「人間らしさ」を象徴する名物になった。
ハプニング1
5月5日 広島公演 広島グリーンアリーナ。
1万2000人の客席が、白と黒のペンライトで埋め尽くされている。
凛は、ステージ中央に立ち、静かに歌っていた。
白いブラウスが、スポットライトに照らされ、
優しく輝く。
「雪解けの約束 この手を離さないで
全部溶けるまで 君と一緒にいる……」
サビの最後。
「全部溶けるまで……」
凛の声が、一瞬止まった。
「えっと……
全部溶けるまで……
君と……え?」
会場が、シーンとなる。
凛は、目をぱちくりさせて、マイクから顔を少し離した。
「……あれ?
溶けちゃった?」
客席から、
小さな笑いが漏れる。
凛は、慌てて、両手で顔を覆い可愛く叫んだ。
「待って!
頭真っ白!
雪解けすぎて、
ごめんなさい!」
会場が、爆笑に包まれる。
客席の大歓声と拍手に包まれた。
客席から、
「かわいい!」「大丈夫!」の声。
凛は、笑顔で、頭を下げた。
「ありがとう。みんなの温かさで、溶けなくなったよ」
ハプニング2
5月12日 大阪公演 大阪城ホール。
1万4000人の客席。
アンコール。凛は、
一人でステージ中央に立つ。
「Promise
この手を離さない
Promise
この声は君のもの
永遠に……
Promise!」
最後の「Promise」で、
凛は、
勢い余って、
「プロミス!」
と英語で叫んでしまった。
凛は、目を丸くして、
マイクを口から離した。
「……あ!」
会場が、爆笑の渦。
凛は、両手で顔を覆い、笑いながら叫んだ。
「ごめんなさい!
間違えちゃった」
客席が、大爆笑。
凛は赤面。
ハプニング3
5月18日 名古屋公演 名古屋ガイシホール。
1万人の客席。アップテンポの曲。
凛はステージを駆け回り客席に手を伸ばす。
「HOLD ME Tonight
この夜を一緒に……」
サビの途中で、
凛は、勢い余ってステージの端で足を滑らせ、
軽くよろけた。凛は、
バランスを取って、
そのまま、客席に向かって、「わっ!」と可愛く叫んだ。
会場が、笑いと歓声に包まれる。
凛は、すぐに立ち直り、マイクを握り直して言った。
「みんなに抱きしめられすぎて、浮いちゃった!」
客席が心配そうに
「今度は落ちないように!」
「がんばれ!」
のコールで埋め尽くされた。
20公演終了 5月20日 福岡公演マリンメッセ福岡。
1万2000人の客席。凛は、
ステージで、
全員と手を繋ぎ、
深く頭を下げた。
「……みんさん、ありがとうございます。
ここまで20公演、間違えたり、滑ったり、したけど……
それも、
みんなが笑ってくれて、
温かくしてくれたから、
私、
ここまで来れました」
客席が、
「WIZARD」のコールで埋め尽くされる。
凛は、笑顔で言った。
「これからも、
間違えても、
滑っても、
一緒に、
美しい記憶を作りましょう」
終演後、
楽屋。
凛は、ソファに座り汗を拭いていた。零が隣に座る。
「……凛、
今日も、
がんばったね。」
凛は、零を見て笑った。
「間違えちゃったとき、
みんなが笑ってくれてよかった。
怒らせちゃったりガッカリさせたらどうしようって。」
零が、凛の髪を撫でる。
「それが、WIZARDだよ
リンらしさがでてきたよ。」
ツアーは、まだ続く。
WIZARDは、
ハプニングさえ、美しい記憶に変えていく。
みんなに、いつも抱きしめられているから。




