セッション1 ツアースタート直前
ツアー初日 東京・有明アリーナ
開演1時間前 バックステージ楽屋
有明アリーナのバックステージは、静かだった。
開場まであと1時間。
1万5000人の観客が、すでに会場に集まり始めている。
楽屋の扉が閉まっている中、凛は、鏡の前に立っていた。
白いブラウスに黒のロングスカート。
首元に淡いブルーのリボン。
悠里のスタイリングは完璧だった。
でも、凛の手は、微かに震えていた。
初めてのワンマンツアー。
初めての1万5000人規模の会場。
初めての、「WIZARD」としての本格的なスタート。凛は、鏡の中の自分を見つめ、小さく息を吐いた。
「……緊張する」
声は、誰にも聞こえないほど小さかった。
扉が開き、メンバー全員が入ってきた。
零が、最初に気づいた。
「……凛」
凛は、慌てて顔を上げ、笑おうとした。
でも、唇が、うまく動かない。
千里が、駆け寄って、凛の両手を握った。
「凛ちゃん!
大丈夫だよ!
私たち、いつも一緒にいるじゃん!」
是永が、煙草をくわえながら、静かに近づいた。
「初ワンマンなんて、 誰だって緊張する。」
BOHが、無言で、凛の頭を優しく撫でた。
その大きな手が、凛の肩を、温かく包む。
真琴が、凛の隣に座って、静かに言った。
「凛ちゃんの声は、もう、みんなの心に届いてる。
緊張するのは、本気だからだよ」
悠里が、凛の肩に手を置き、
微笑んだ。
「凛ちゃん、今日の衣装、完璧だから。
あなたは、一番綺麗だよ」
零が、凛の前に跪き、凛の瞳をまっすぐ見た。
「……凛。
緊張するのは、悪いことじゃない。でも思い出して。
私たちは、いつも、お前を抱きしめてる」
だから、凛は、一人じゃない」
凛の目が、潤んだ。
でも涙は、こぼれなかった。
凛は、全員を見回して、静かに言った。
「……ありがとう
私、緊張してるけど、みんながいるから歌える」
零が、立ち上がり、凛の手を取った。
メンバー全員が、円陣を組んだ。千里が、拳を突き上げる。
「いくよ!
凛!
みんなで、
日本を抱きしめよう!」
全員の拳が、重なる。
凛は、深呼吸して、静かに言った。
「……行こう」
扉が開く。
開演まで、あと30分。
凛は、震えを抑え、ステージへ向かった。
背中には、メンバー全員の温かい視線があった。
初めての大きなステージ。
でも、凛は、一人ではなかった。
みんなにいつも抱きしめられているから。




