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セッション2 織田テツロー

凛と零は、二人きりで、鎌倉へ向かっていた。

凛は窓際。

零は通路側。

「零さん……

 織田さんに、会うの、

 私、初めてで……

 すごく緊張してる」

零は、凛の手を握った。

「私もだよ。ホントに久しぶりだから」

凛が、驚いて零を見た。

「……久しぶり?」

零は、遠くを見るような目で呟いた。

「19のとき、

 テツローさんの家に、

 1年間、住み込みで弟子にした。

 朝から晩までギターを弾かされて、

 夜はIzumiさんのレコードを聴かされて、

 『魂を込めろ』って怒鳴られて……

 でも、あの1年が、今の私を作った」

凛は、零の手を強く握り返した。

「だから、

 織田さんは、

 零さんの……

 音楽の師匠なんだね」

零は、初めて笑った。

「そうだな」


【午後2時03分 鎌倉・織田テツロー自宅】

門をくぐると、雪が残る庭。

古い日本家屋。玄関の引き戸が、自分で開いた。

織田テツロー(63歳)は、そこに立っていた。白髪交じりの長髪。


挿絵(By みてみん)




黒タートルネック。

背筋はまっすぐで、瞳だけが、まだ燃えている。零が、一歩前に出て、深く頭を下げた。

「……テツローさん。 お久しぶりぶりです」

織田は、零を見て、ふっと笑った。

「俺の唯一無二の弟子が大きくなって、再び現れた、零、こんな幸せなことはないな。」

零は深く頭を下げる。

そして、凛を見た。

凛は、息を呑んだ。

織田の瞳に、Izumiがいた。

織田が、静かに言った。

「……キミが、凛ちゃんか」

凛は、震える声で答えた。

「……はい。

 初めまして……

 織田テツローさん」

織田は、凛に歩み寄り、ゆっくりと手を差し出した。

「Izumiに、そっくりだ」

凛は、その手を、両手で包んだ。

織田は、凛の頭に、そっと手を置いた。

「Izumiは、泣き虫な子は嫌いだった」

凛は、必死に涙を堪えて、言った。

「……織田さん、私… Izumiさんの続きを歌わせてください」

織田は、

強く頷いた。

「ああ。 だから、 2曲、書いてやる」

零が、もう一度頭を下げた。

「お願いします」

織田は、二人を奥の部屋に通し、古いアップライトピアノの前に座った。

「タイトルは、もう決まってる」

鍵盤に指を置いて、ゆっくりと弾き始めた。

「新曲Aは、 『雪解けの約束』」

凛の肩が、震えた。

「新曲Bは、『君が笑うまで』」

織田は、二人の反応を見て、静かに言った。

「Izumiはお前たちを待ってたんだよ」

その日、三人は、夕陽が沈むまで、ピアノの前で、新しいメロディを、紡ぎ続けた。

帰り道、雪が溶け始めていた。

凛は、零の手を握りしめて、静かに呟いた。

「……私、

 織田さんに会えて、

 やっと、

 Izumiさんに会えた気がした」

零は、凛を抱き寄せて、答えた。

「私もだよ」

WIZARDは、izumiの続きを、凛の声で、零のギターで、織田テツローのメロディで、紡いでいく。



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