セッション1 What a beautiful memory
【2027年1月15日 午後1時12分 BEGINNING本社 最上階会議室】
東京の空は冬の色を残していた。
ガラス張りの会議室は、冷たい光で満たされている。
長テーブルには、零と悠里が並んで座っている。
零は黒シャツ一枚、ギターケースを椅子の横に立てかけている。
テーブルには、まだ誰も触れていないA4用紙が一枚。
白地に、10個の曲名。神崎龍一社長が、ゆっくりと席に着いた。
62歳とは思えないほど、背筋はまっすぐで、瞳は鋭い。
「全員揃ったな」
絶対的スタッフが揃っている。
神崎が、静かに口を開いた。
「デビューから3作連続オリコン2位。
素晴らしい記録だ。
しかし、同時に呪いでもある。
次はアルバムで1位を取らなければ、
永遠に『2位のWIZARD』で終わる」
神崎が続ける。
「だから今回は、本気でいく。
アルバムは10曲構成。
レコーディングは期間は1ヶ月。
構成は決まっている。零が最終決定した」
全員が息を呑む。
「1. I’ll never forget デビュー曲
2. HOLD ME Tonight 2ndシングル
3. IN YOUR ARMS 3rdシングル
4. Stellar Light Dz提供曲
5. 夜に駆ける炎 配信者時代自作曲
6. 雪が溶ける前にぎゅっと抱きしめて 同上
7. If This Winter Never Ends 同上
8. 新曲A 作詞:私 作曲:織田テツロー
9. 新曲B 作詞:私 作曲:織田テツロー
10. タイトル未定 作詞:私 作曲:零」
沈黙が落ちた。織田テツロー。
誰もが息を呑んだ名前。
悠里がびっくりした表情で言う。
「……テツローさんに、頼むの?」
零が、静かに頷いた。
「私と凛で、
直接お会いする。
2曲は、テツローさんのメロディで凛が歌う」
神崎が、最後に告げた。
「ツアー名も決まった。零が昨夜、決めた」
全員が顔を上げる。零が、ゆっくりと口を開いた。
零が皆に告げる。
「WIZARD -What a beautiful memory -
私たちは、スキャンダルも、2位の呪いも、全部“美しい記憶”に変える。
だからこのツアーは、過去を全部抱きしめて、未来へ歩くための、公演になる」
神崎が、静かに微笑んだ。
「織田さんには、
昨夜、零が電話した。
返事は一言だった」
全員が息を呑む。
「『Izumiの続きを、凛ちゃんに歌わせてやるよ』」
会議室に、静かな、
でも確かな勝利の予感が満ちた。
2027年、WIZARDは、過去の自分たちを全部抱きしめて歩み始めた。




