セッション1 本当の始まり
【2026年7月15日 午前3:17 Studio ZERO】
零がノートPCの画面を全員に見せる。
YouTubeの再生回数が、たった8時間で1,200万回を突破していた。
零が静かに微笑みながら、
「凛……見て。」
画面に映るコメント欄(リアルタイムで流れる英語・日本語・韓国語・中国語・スペイン語……)
「これが人間の声……? 神が降りてきたのかと思った」
「名探偵アガサのEDで号泣してしまった……誰だこの子」
「CDTVの最後、瞳をアップにした瞬間、世界が止まった」
「女と赤い瞳……まるで闇から這い出た天使だ」
「プロデューサーがR.Oって……まさかあのR.Oなのか!?」
是永巧一がソファに深く沈み、煙草をくわえたまま、
「……俺たちの、歴史がまたはじまった」
BOHは無言でスマホを見せびらかす。
→ Spotifyグローバルチャート 急上昇1位(日本アーティスト史上最速)
川口千里も興奮してドラムスティックを振り回し、
「凛ちゃん! Twitterのトレンド上位が『WIZARD』で埋まってるよ!!やったー!!!」
皆川真琴が静かにピアノの鍵盤を撫でながら、
「魂が……届いた。間違いなく届いた」
凛は、シャツの裾を両手で握りしめて、少し震えている。
瞳はルビーレッドのまま、涙が一筋だけ頬を伝う。凛は小さな声で、
「……私、本当に、歌ったんだね」
零が凛の後ろからそっと抱きしめる。
零が耳元で、優しく絶対的に、
「うん。でも、まだ始まりの始まりだよ」
そのとき、スタジオのモニターに一通のメールが届く。
【送信者:黒崎哲也(LUXE ENTERTAINMENT)】
件名:おめでとう、零。
そして本文
「素晴らしいデビューだった。
さすがは俺がかつて欲した“闇”だ。
だが覚えておけ──
次のシングルで、白石美波が“光”で世界を取り戻す。
楽しみにしているよ。
──光の皇帝より」
零はメールを読んだ瞬間、静かに笑った。
その笑みは、まるで獲物を見つけた獣のようだった。
零は、
「ていうか、闇ってなに?
あの人はすぐに光と闇とかわけわかんない線引きするのよ。
まぁいいわ。世界はまだ、私たちの本気を知らないから」
凛は小さく頷く。
「……はい。零さんが決めるなら、私、どこまでも堕ちていく」
スタジオの時計が、午前4時を告げる。
外では、まだ夜明け前。
だが、もう誰もが知っている。WIZARDの物語は、
本当の意味で、今夜から始まったのだ。




