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セッション6 東京ガールズコレクション

デビュー1週間前


13:20 

バックステージ到着

零と凛は、関係者専用通路から極秘で入る。

凛は黒コン+マスク+フードで完全に顔を隠し、零の後ろを小刻みに歩く。

通路では、他のモデルやアイドルが華やかな衣装で通り過ぎる。

甘い香水の匂い、ハイヒールの音、笑い声。

凛は完全に浮いている。

零は小声で、

「今回、急遽出演を決めた目的は三つ。

 1. 7月14日のライトを完全に確定させる。

 2. 凛に“数万人の視線”を一度味わわせる。

 3.バックバンドと本番でのステージ。」


幕張メッセ メインアリーナ

17:55 

会場最高潮。

有名モデルたちが次々に花道を歩き、ピンクの歓声が天井を突き抜ける。

八木アリサ、藤田ニコル、EXIT兼近……

会場は完全に甘い熱病。

17:58 

MC

「TGC 2026 、もう終わりたくないですよねーー!?」

会場「イエーーーイ!!」

MCが突然声を落とす。


「でも、本当のフィナーレは、ここからなんです。」


会場がざわつく。

完全暗転BGMが消える。

照明全滅。

スマホライトも一斉に消える。

3万5000人の息遣いだけが残る。

巨大スクリーンに白文字だけが浮かぶ。


I’ll never forget

WIZARD


18:00 

零のギターリフステージ左袖から、ストラトキャスター(ブラック+赤ピックガード)を肩に、

無言で登場。

会場スピーカーで大きく響く。

甘いTGCの空気が、一瞬で凍りつく。


BEGINNING Recordsが誇る一流セッションミュージシャン4人が無言で現れる。

・Drums:川口千里(日本最高峰の女性ドラマー)

・Bass:BOH(超絶テクニカルベーシスト)

・Keys:皆川真琴(零の全作品に参加)

・2nd Guitar:是永巧一(日本ロック界のレジェンド)

全員黒スーツ。

「Stellar Light」本番スタート零が静かなクリーンギターでアルペジオを弾き始める。

川口千里のブラシがスネアを優しく撫でる。

凛が、暗闇の中をゆっくり歩き出し、ステージ中央に立つ。

逆光が一気に立ち上がる。白い炎のような輪郭。

顔は完全に光に溶け、赤い瞳だけが、ぼやけた光の奥で、確かに、燃えている。

生歌唱開始

挿絵(By みてみん)

「遠くで瞬く星の欠片を

 掌に掬った夜を覚えてる……」

零のギターが、静かに、でも鋭く、凛の声を包み込む。

サビで、是永巧一がディストーションギターでオブリガートを重ね、

BOHのベースが低音で地を這う。

「Stellar Light 消えぬように

 この胸に焼き付けて

 どんな闇が来ても

 君だけは見失わない」

会場は、完全に、無音になる。

先ほどまで「可愛いー!」と叫んでいた観客が、誰も声を上げない。

ただ、口を開けたまま、凛と零とバンドを見つめている。

最後のサビ前で、零がギターソロを入れる。

歪んだストラトが、会場全体を切り裂く。

「Stellar Light 永遠に

 この瞳に宿して

 どんな未来が来ても

 君を忘れない」

最後の「君を忘れない」を、

凛は20秒伸ばす。

その間、零のギターが、静かに、フェードアウトしていく。

 曲終了。零が最後のコードを絞り殺すように消す。

会場は、完全無音。

5秒の空白後、爆発

「うわああああああああ!!!」

「WIZARDきたーーー!!」

「歌やばい……」

「泣いた……」

「赤い瞳とギターで死んだ……」

会場が、今までで一番大きな、でもどこか震えるような歓声に包まれる。



Stellar Light.

作詞 稲葉晃司 作曲 TAKU 編曲 織田零

【https://drive.google.com/file/d/1Exf7sRRjOWg8HGEbNSKPk8SzGNRXmQqs/view?usp=sharing】



バックステージ零がギターを下ろし、凛を抱きしめる。

「……やったよ凛。

 今日でライトは確定。

 あの逆光で、凛は燃え尽きなかった。」

凛は涙を堪えながら、零の胸に顔を埋めて笑った。

「零さんのギターが、私を守ってくれました……

 これからも、一緒にやってください」

零は凛の髪を撫でて、小さく頷いた。

「約束だよ」

あと7日。

凛と零と伝説のバンドは、確実にデビューへと向かっていた。



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