セッション7 レコーディング終了
「……カット。完璧」
凛はブースの中で、22歳の幼さが残る姿で立っていた。
コントロールルーム側、ガラス越しに12人が固まっている。
稲葉晃司が最初に立ち上がり、静かに拍手を始めた。
TAKUが続き、全員が立ち上がり、拍手が雪崩のように鳴り響く。
神崎龍一が叫ぶ。
「動け! あと2ヶ月で世界を落とす!」
佐藤(宣伝部長)
「ティザーは5月21日から毎週1本!
#WIZARD714
で世界トレンド1位必ず取る!」
高木(A&R)
「MVは蜷川実花×零で6月中に撮影! ぼかしライト完全版!」
藤井(マネージャー部長)
「7月14日CDTVトップ、全部確定!
で完璧に仕上げる!」
全員が一斉に動き出す中、零だけが動かなかった。零はゆっくり立ち上がり、ブースの扉を開け、凛の前に立った。
零は小声で、
「凛、ちょっと来て」
凛は驚いた顔で零を見上げる。
「はい……?」
15:40 エレベーターの中
二人きり。
「今の凛の声は、もう22歳じゃない。
でも見た目はまだ子どもすぎる。
あと2ヶ月で、見た目も“永遠”にしなきゃ」
凛は不安そうに頷いた。
15:50
3階 スタイリングルーム
零が鍵をかけ、関係者全員を締め出した。
零が凛を鏡の前に立たせた。
零は静かに、
「清楚で、ロックで、永遠。
それが7月14日のWIZARD」
・上着:マットブラックのウールカシミア マキシ丈ロングコート(前全開で羽織るだけ)
・インナー:純白のシルクブラウス(首元まで詰め、第一ボタンだけ外して鎖骨をわずかに覗かせる)
・ボトム:同素材・同色のブラック マキシロングスカート(床に10cm引きずる長さ)
・靴:黒レザーショートブーツ(ヒール4cm、くるぶしギリギリ)
・髪型:清楚なハーフアップヘアー
上半分だけをタイトにまとめ、黒ベルベットリボンで小さく結ぶ
下半分は艶を殺したストレートロングで背中までまっすぐ流れる
前髪は眉が全部見える長さ、センター分け気味
・メイク:
ベース完全マット、チーク・リップはヌーディ
瞳:透明感のあるルビーレッドのカラコン
上瞼にだけ鮮烈な深紅のアイラインを一本、鋭く跳ね上げ気味に引く
・アクセサリー:一切なし零が最後に自分で赤いリキッドライナーとカラコンを入れ、
凛の瞳に赤を宿した。鏡越しに目が合う。
「黒で永遠を包み、白で透明を残し、
赤い瞳とアイラインで“忘れない”って刻む。
これが7月14日の凛」
凛は鏡の中の自分を見て、静かに微笑んだ。
「……あと2ヶ月で、ここまで行けるんですね」
「うん。 毎日少しずつ、この姿に近づけていく」
18:55 スタジオに戻る扉が開いた瞬間、全員が凍りついた。全身を黒で包んだ清楚なシルエット。
白い首元だけが浮かび、
瞳とアイラインが鮮烈な赤で燃える。佐藤が呟く。
「……あと2ヶ月でこれ……?」
高木が震える。
「赤い瞳……完成形すぎる……」
稲葉晃司が静かに笑う。
「……零、また伝説の始まりだな」
神崎龍一が笑った。神崎
「よし。 この姿で、世界を黙らせろ」
零は凛の横に立ち、全員に向かって告げた。
「これが、7月14日からのWIZARDです。
清楚で、ロックで、永遠。
あと2ヶ月で、誰も触れられない存在にする」
凛は、黒い上着の隙間から白いブラウスが覗く姿で、赤い瞳とアイラインだけが静かに燃える瞳で、
初めて、完全に大人の微笑みを浮かべた。
19:40
零は最後に、凛の耳元で囁いた。
「凛、あと2ヶ月、泣かないでね」
凛は振り返り、赤い瞳で零をまっすぐ見て答えた。「はい。
もう泣きません。
零さんを守るのは、私ですから」
零は微笑み、凛のハーフアップのリボンをそっと整えた。
「……約束」
WIZARDは、黒と白と、燃える赤い瞳で、世界を貫く準備を、静かに、確実に、始めていた。




