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セッション8 Stellar Light

東京ドーム 

DZ  ライブツアーファイナル 開演


闇が落ちた瞬間、世界が爆発した。

白い稲妻が横に走り、

轟音が肉体を貫く。

ステージ中央に、稲葉晃司が降臨する。


挿絵(By みてみん)


「東京――!!」

5万5千の咆哮が返る。

床が跳ね、天井が悲鳴を上げ、

空気が焼け、心臓が、文字通り殴られる。

1曲目からフルスロットル。

重低音が腹の底を抉り、レーザーが夜空を切り裂く。

ペンライトの海は、もう銀河だ。

銀河が逆さに落ちてきて、観客を呑み込む。

稲葉は激烈な熱唱。

ただ叫ぶだけで、5万5千の胸が焦げる。

2曲目、3曲目、MCなし。

曲が終われば即次の曲。

息つく暇すら与えない。

5曲目、最新曲のイントロが鳴った瞬間、5万5千人が一斉にジャンプ。

衝撃でドーム全体がビリビリ震える。

照明が赤に染まり、稲葉がステージ前端まで走る。

観客の手が伸びる。

指先が触れて、

電流が走る。

中盤、静かなバラード。照明が白に変わる。

5万5千のペンライトが、一斉に白へ。

雪が降る。本物の雪が降る。

稲妻の稲葉が、静かに歌う。

誰も声を上げない。

ただ、涙だけが頬を伝う。

最後のサビで、稲葉が手を掲げる。

5万5千人が跳ぶ。

大地が跳ね、星が落ちる。

そのまま怒涛のロックチューン3連発。

TAKUは汗を飛ばし、観客は声を枯らす。

ラスト曲。

稲葉がマイクを客席に突き出す。

5万5千人が、完璧に、歌詞を揃えて歌い返す。

TAKUが笑う。

最後のコードが鳴りきる。


21:42照明が落ちる。

完全な闇。

地獄のようなアンコール。

「稲葉さーん!!」

「TAKUもう一回ー!!」

「アンコール!!」

声は波になり、波は津波になり、ドームは生き物の咆哮となる。

5分間、歓声が止まらない。

巨大スクリーンに、静かな白い文字。


《Special Guest WIZARD》


ざわめきが、凍りつく。

WIZARD 21:47~21:58闇の底に、たった一本の、

冷たく青白いスポットライト。

シルエットだけ。

黒いコート。裾が闇に溶ける。

ショートパンツから伸びる脚。

黒いブーツが、ステージに深く根を張る。

誰も顔を見ていない。

ただ、漆黒の影が、そこに立っている。

TAKUの声が生で響く。

「お待たせ。

 今夜、特別な星を呼んだ。

 ――WIZARD!!」

静寂。零の指が、ギターの弦を、祈るように撫でる。

最初の音が落ちた瞬間、5万5千の鼓動が、同時に止まった。

リンの声が、腹の底から、震えることなく、闇を真っ直ぐ貫く。


光が、少しずつ強くなる。


挿絵(By みてみん)


黒いコートの襟が風を孕み、横顔が、月が雲を割るように浮かび上がる。

誰も、息をしていない。

声が高まり、空に昇る。


Final Chorus 半音上げ。

その瞬間、

5万5千の心が、同じ場所で、同じ痛みで、

同じ光で、震えた。


光の奔流が降り注ぐ。

最後の1音が、天の果てまで届いて、

ゆっくりと消える。


静寂。


10秒。

そして、

爆発。

5万5千の魂が、一斉に叫ぶ。

照明が上がる。

リンは、すべてを見せた。

黒いコート。

ショートパンツ。

ブーツ。

汗で濡れた髪が頬に張りつき、瞳だけが、燃えるように輝いている。

5万5千のライトが、白く灯る。

無数の星が、彼女に向かって降る。


そしてフェードアウト。


零の感情 今後のデビューに向けて共に戦う決意零は、リンのすぐ後ろで、ギターを下ろし、涙をこらっていた。

でも、それは悲しみの涙ではない。

(リン……これが、始まりだ)

胸が熱い。

痛い。

でも、これまでにないほど、力が満ちている。

(もっと大きなステージが待ってる)

(単独アリーナ、

 単独ドーム、

 世界の果てまで)

(私は、あなたのすぐ後ろにいる)

(ギターを弾いて、

 コーラスを重ねて、

 時には厳しく、

 時には優しく、

 ずっと、ずっと、

 あなたを支える)

共に戦う。

零はリンをきつく抱きしめた。



挿絵(By みてみん)




東京ドームは、新しい伝説を、2人の夢と共に、永遠に刻んだ。

星は、もう落ちない。昇ったまま、永遠に輝く。


挿絵(By みてみん)


Stellar Light.

作詞 稲葉晃司 作曲 TAKU 編曲 織田零

【https://drive.google.com/file/d/1Exf7sRRjOWg8HGEbNSKPk8SzGNRXmQqs/view?usp=sharing】

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