プロローグ
朝6:30の生配信は、47日目。
視聴者はいつも0人。
でも、今日だけは違った。スマホの画面に、ぽつんと1人の“視聴中”。
名前は表示されない。
ただの灰色の点。
それでも、凛は知ってる。
「見られてる。」
ヴェール越しの黒髪が、朝の光に透ける。
カポ3のナイロン弦が、寝起きの掠れ声に寄り添う。
今日の曲は、まだタイトルもない。
ただの“朝の欠片”。
夕べ、ミキサーして仕上げた曲。
毎日の日課。
誰も聞かない曲を毎日作る。
クロゼットのなかで、生歌を配信。
自己満足の世界。
画面は静か。
視聴者は1人。
でも、コメントはない。
06:33
配信終了。
アーカイブは残さない。
記録は残さない。
誰にも届かない。
それが、凛の覚悟だった。
8時。
出社の準備を終える。
スマホが震える。
通知。
Xのフォロワー申請。
1人。
プロフィールは空。
アイコンは、朝の光に透ける黒髪のシルエット。
「申請……?」
凛は立ち止まる。
ヴェールの下で、息を白くする。
朝の欠片
【https://drive.google.com/file/d/1nJvKYL-IwtXx0Zlye4QhMSG0efx0hCYd/view?usp=drivesdk】




