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第52話

廃墟に足を踏み入れると、風化し始め崩れかけた石造りの家屋が無秩序に放置されていた。

簡素な作りの建物で、僕らと比べたら文化レベルがかなり低いことは一目瞭然だけど、それでもゴブリンは共同体をつくり低いながらも文化的な生活を送っていたのだ。


ダンジョン第1層がこのゴブリンの領域に繋がっているなら、第2層はどこかで深層樹林という領域に繋がっているのだろう。

その接続口から弱い昆虫系の魔物が入り込み、それを冒険者が狩っていると思われる。


ダンジョンが何層まであるのか今の僕にはわからないけど、下れば下るほど敵は強くなっていくことは理解できた。

問題は、ダンジョン攻略だと思っていたものが、実は2つの世界の戦争になっていることだと思う。

深層の魔物は今のところ上層に興味をもっていないかもしれないけど、冒険者たちが侵攻すれば当然反撃にでるはずだ。

そのとき懸念されるのは、前世でも厄介だった信仰の違いによる戦争の激化と一方の価値観を完全に破壊するまで終わりが見えない泥沼の展開だ。

魔物は魔神を信仰し、メルディたちは別の神を信仰している。

そうなると、お互いが正義の名の下に偽りの神を駆逐しようとするのではないか…。


考えれば考えるほど、気持ちが重くなる。僕は女の子たちとダンジョン・ハクスラを楽しみたかっただけなのに、どうして…。

現実逃避してゲームは楽しかったなと熱中したタイトルを思い返したとき、僕は気付いてしまった。

同じじゃないか…。どのゲームだって最後は魔王とか邪神とか邪竜とか、そんなラスボスを倒すために、地下へ地下へとゲームを進めていた。

変わった設定のものなら、魔王のような存在を操作して、地上へ逆に侵攻する内容のものだってあった。


楽しかったゲームは、結局のところ一方から見た正義の戦いであって、実際には2つの勢力の戦争だったのだ。

それに気付いたからといって、じゃあ僕に何ができる?

戦争だからダンジョンに関わらないと逃げることもできるけど、いつの日か侵攻を受けてフラワー・フラグメントのみんなやリップルさんが命を落とすようなことになったら、僕は逃げたことを後悔するに決まっている。

親愛の情なのか恋愛感情なのか、もうよくわからないけど、とにかく大事な人達なのだ。

結局、愛する人のため、祖国のために戦うしかないということか…。

平和な日本にいたから戦争なんて他人事だったけど、世界には逃げられない戦いが現にあったのだ。


小難しいことを散々考えたけど、心は決まった。

僕は愛するみんなのためにハクスラを続ける。

それ以上でも、それ以下でもない。

いつか僕の愛する人達を害する者ならば、悩むときがあってもいいけど躊躇してはいけない。

これが今の僕にだせる限界の答えだから、これからもフラワー・フラグメントの仲間と手を取り合って進み続けるのだ。



廃墟を移動しながら、苦悶の表情で襲いくる霊を、メルディがプリフィケーションで浄化していく。

そんなことが5回繰り返されたところで、先導してきた霊が僕らのほうに振り返り、頭を下げた。

そして、アーシアさんを優しく見つめたあと、姿が見えなくなってしまった。


「彼女にはプリフィケーションは不要だったのかな?」

僕の素朴な疑問にカリンさんが答えてくれた。

「あの、最後は感謝を述べていました。私たちの行く末を案じているとも。それと、いつかまた、より深い場所で会えることを願っていると…。」


より深い場所?ダンジョンの深層のことだろうとは思うけど、彼女はどういった存在なのかという答えは謎のままだ。

ただ、いつかまた僕らを導いてくれる日がくるのだろう。



それから僕たちは来た道を戻り始めた。

メンバー全員がMPをかなり消耗しているため、ちょっとしたゴブリンの小集団との戦闘さえ緊張で心をすり減らすことになったけど、なんとか無事に夜中を迎える前にダンジョンを出ることができた。


疲れ果てていたので、閉まりかけの屋台で肉串や魚の塩焼きを買い食いしてホームにもどり、風呂を済ませて眠ることにした。

明日はリップルさんに報告することがいっぱいある。

少し憂鬱だけど、今はとにかく眠ろう。明日を元気に生きるために。


こんにちは、作者の良狐です。

伏線も大量に未回収のままですが、話としては一区切りつきましたので、ここで休載とさせていただきます。毎回、完結まで書き切らず申し訳ありません。次はお気に入りキャラのトリスを主人公にユルイ恋愛ものを書いてみようと思います。第1話をアップしましたので、読んでみていただけると幸いです。

今後とも、よろしくお願いいたします。

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