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第51話

有用そうな素材の回収を終えると、僕たちを先導してきた霊が金属製の扉の中に入っていくのが見えた。

戦闘に集中していたから忘れていたけど、今まで何処に隠れていたのだろう…。


パーティーの疲弊を考えれば、ここで引き返すべきなんだけど、この霊は危険なら危険だとカリンさんを通じて伝えてくれそうではある。

そのくらいには僕も彼女を信用し始めている。

「もう少し、ついて行ってみようか。まだ敵との戦闘があるようなら、そのときは絶対に引き返すつもりだけど。」

「それで構わない。最終判断はユウに任せるぞ。」

「アチシらは、いつだってユウにお任せにゃ。」

トリスとメルディ、カリンさんが同意とばかりに頷くけど、それでいいのか…?


「それじゃあ、隊列を崩さないで警戒しながら進んでみよう。」

金属製の扉の先は、天井も高く横幅も広い。

あちこちに巨大な蜘蛛の巣が張られている不気味な空間を少し進むと、前方が淡く紫色に光っているように見え始めた。

進むにつれて、その紫の光がポスターカラーで塗られた紫の壁のように感じ始める。

得体の知れないものに不安を感じながら進み続けた僕たちは驚きの事実に直面することになった。

どんどん大きくなる紫の壁はダンジョンの出口だったのだ。


ダンジョンの外に広がっていたのは、紫色の草が生い茂る草原。星1つない紫色の空。草原の先には廃墟となった石造りの集落跡。

僕たちは皆が絶句し呆然としてしまう。


「なんなのじゃ、ここは?」

「空が変にゃ…。」

「夜、なのでしょうか…?」

「これは、理解不能だ…。」

この状況に答えを出せる者がいるとしたら、僕らを連れてきた霊だけだろう…。


「あ、あの、ここは何処なんでしょうか?」

カリンさんが霊に向けて動揺しながら問いかけると、何かの返答を得られたのか、体を震わせ始める。

「もう一つの世界、なのですか…。」

その衝撃の呟きを聞き漏らす者はいなかった。

僕以外はカリンさんのもとに駆けより、より詳しい説明を請う。


そんな混乱の様子を視界に収めながら、僕は薄れていた記憶を必死に思い出そうとしていた。

僕を転生させてくれた存在は何と言っていたか?

『ミスで繋げる予定のない2つの世界を繋げてしまった』と言っていなかっただろうか。

前世の世界が一時的に繋がったのがミスだったなら、本来は別の世界と繋げようとしていたってことになる。

つまり、どういうことだよ…。

坑道みたいなダンジョンだと思っていたものは、別の世界の本物の坑道に過ぎなかったということか?


混乱する頭で真実を探ろうと思考するが、そんなものわかるはずもない。

だったら、カリンさんを通じて彼女に聞くしかないよな。

少し出遅れたけど、僕もカリンさんのもとに駆け寄った。


カリンさんが受け取った情報によると、この世界の生ある者は皆、深奥で眠りについている魔神を信仰していて、力ある者ほど魔神の近くにいることを望み、深層を目指すらしい。

今いるところは最も空に近いところ、言い換えれば魔神から一番遠い場所で、最も虐げられているゴブリンの住まう地らしい。

大地には巨大な穴があいていて、その下には深層樹林と呼ばれる森が広がっているとのこと。

深層樹林は昆虫系の魔物の住処になっていて、力ある個体による勢力争いが絶えない危険な場所で、時折その争いに敗北した強個体が逃げるようにゴブリンの領域に上がってくることがあり、先ほど戦ったアラクネはそういう存在だったみたいだ。

目の前に見えている廃墟は、アラクネが坑道入口に住み着いてしまったことで放棄されたゴブリンの村であり、連れ込まれた人間や亜人を収監する牢もあったとのこと。

ゴブリンたちが村を捨てたときに置き去りにされた同胞は、鎖に繋がれ逃げることもできず、アラクネの胃に収められていったという。

そうして死んだ同胞の魂は、異世界のため天に還ることもできず、廃墟を彷徨い続けるしかないのだという。


自由を奪われ、一人ずつアラクネに捕食されていく光景を想像し、その過酷な死に際に僕は涙した。

他のみんなも一様に押し黙り、胸を痛めているようだった。


「メルディ、同胞の魂の浄化を頼めるだろうか。」

アーシアさんの頼みを、当然とばかりにメルディが頷いて応えた。

天に還すことはできないけれど、苦しみ続ける魂を無に還すことはできる。

28年前に非業の死を迎えた人々に、僕たちができることをしよう。

みんなも同じ想いだと想う。

そしてそれは、僕たちを導いてきた彼女も同じなのだろう。


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