第48話
「一層にも蜘蛛の魔物がいるなんて聞いたことがないのじゃ。」
「どうしますか?」
メルディが不安そうに僕を見てくる。
「判断はユウに任せるにゃ。」
ニーナは討伐したい目をしているが、僕に判断を委ねてくれるみたいだ。
「約束したからな、ユウが引き返すべきと判断するなら従うぞ。」
「あの、私もユウさんの判断にお任せします。」
「我も同じじゃ。方針はユウに一任と決めておるのじゃ。」
みんなが僕の判断を待っている。
さて、どうしたものか…。
ただの一般人だった僕はアラクネに恐怖し何もできなかったけど、今は頼りになる仲間がいる。それにレベルも全員8以上だ。
ただ、あの蜘蛛の巣の張り巡らされた大部屋で戦うのは明らかに不利だと思う。
通路に出てきてくれれば十分に勝機もあるはずだ。
「条件付きではあるけど、討伐してみようか。」
「やるにゃ!」
やっぱりニーナは挑みたかったんだな。
「条件とは何ですか?」
「うん、まず扉を少しだけあけて蜘蛛を探す。見つけたらカリンさんが未来視併用で急所に矢を放つ。僕らは通路で迎え撃つ準備をする。これで蜘蛛が扉から通路に出てくるなら戦うけど、出てこないなら諦めよう。わざわざ相手に有利な場所で戦ってやる必要はないからね。」
「扉の先は敵に有利なのか?」
「あ、うん、多分ね…。蜘蛛の巣を張っていたし…。」
「上手く当てられなかったら、すいません…。」
「これまで全て当たっているのだから自信をもつのじゃ。」
トリスに気合いを入れるために背中を叩かれ、「うぅ、痛いです。」とカリンさんの泣きそうな声がもれた…。
おかげで少し緊張が解けたよ。よし、前世の僕の敵討ち、やってやろうじゃないか!
「この作戦でいい?」
僕の問いかけに全員が頷いた。
トリスに扉を10cmほど開けてもらい、僕とカリンさんが隙間から中の様子を窺う。
前と同じなら上に張られた蜘蛛の巣にいるはずだ。
予想と違わず、上空から僕らを見下ろすアラクネを発見した。
「カリンさん、上にいる!矢を!」
僕の声に反応して上を見たカリンさんが「ひっ!」と悲鳴を漏らした。
巨大な蜘蛛に人間の上半身が生えた魔物は、初見なら恐怖で身が竦むのも無理はないが、そんなことも言っていられない。
「放って!!」
「は、はいっ!」
放たれた矢は、上半身の胸部目掛けて飛んでいったが、ギリギリで動かれて腕に刺さった。
「そんな!?」
未来視と違う結果になったのか?矢が放たれたことに気付いて動いたぶん、未来が変化しているのか?でも今は考えても仕方ない。
「みんな下がって!迎撃準備を!」
素早い動きで扉から5mほど後退し、僕らはいつもの陣形を形成する。
「メルディはニーナにプロテクション!」
「はい!」
「カリンさんはトリスに祝福を!」
「わかりました。」
「ニーナはヘイスト!」
「了解にゃ!」
「パワーヒットとシールドバッシュは惜しまず使って!」
「やってやるのじゃ!」「わかった!」
一通りの指示をとばすと、アラクネは怒りに顔を歪めつつ、扉を強引に潜り抜けようとしている。
なんか網戸を無理矢理ぬけてくる蚊みたいで気持ち悪い…。
でも、少し時間が稼げた。
カリンさんは続けてアーシアさんに祝福をかけようとしているし、メルディはトリスにプロテクションを唱え始めた。
ほんと、みんな頼りになるよ。
なら、僕がやることは魔法でHPを削っておくことだ。
アラクネは体が扉を潜り抜けたとき、僕の魔法をもろに受けて不快な悲鳴をあげる。
アシッドレイン、強酸で2倍のMP消費8だけど、巨体であるが故アラクネは全身で雨を受けとめるしかなく、痛みに身もだえた。




