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第47話

「プリフィケーションで除霊しますか?」

敵意を感じないうえに知性を感じる存在となると、メルディも通常の対応をしていいのか困ったようで、判断を僕に委ねてきた。

これはどうするのが正解なんだろう…。迷宮に囚われ続ける魂を浄化するのはいいことだと思うのだけど、明らかに理性とか知性を残しているように見える。

そうなると、霊体とはいえ消滅させるのは悪いことのような気もしてしまう。

すぐに結論をだせず悩んでいると、カリンさんが口を開いた。


「あの、なんとなくしか分かりませんけど、ついてきてほしいみたいです。」

「スキルの力でわかるものなのか?何にしても死者が何かを思考して訴えかけているとは信じがたいが…。」

「カリンは凄いのにゃ。いいアンデットか悪いアンデットか、わかるにゃ。」

いいアンデットって、そうそういないと思うんだけど…。

でもまぁ、現実に目の前にいる霊体からは嫌な感じはしないんだよなぁ。

「よく見るとアーシアに似ているのじゃ。」

そう言われて顔に注目してみると、確かにアーシアさんの面影があるような気もする。

「確かに他人のような気がしないが…。」

「アーシアさん、何か心当たりはありますか?」

メルディも完全に除霊の対象から外したみたいだな。

「父上から聞いた話では、私の叔母にあたる父上の妹は、ゴブリンとの争いの渦中に行方不明になってしまったらしい。もしかすると、その方かもしれないな。」

もしそうなら、ゴブリンによってダンジョンに連れ去られて、その後に亡くなったということになるのかな?

真実はわからないけど、僕らに何かを伝えたいのかもしれない。

悪い霊でないなら、ここはのってみてもいいように思う。

ゲームだったら大事なフラグが立っているのをスルーしていい訳がない。


「ついて行ってみようか。もしかしたら大きな発見があるかもしれないし。」

「そうしていただけると嬉しいです。」

カリンさんはこの霊にシンパシーを感じているみたいだな。

「虎穴に入らずんば何とやらなのじゃ。」

なんでそんな言葉を知っているんだよ…。

「お宝の匂いがするにゃ!」

「こういうときのユウさんの勘を私は信じています。」

「そうだな、もし叔母上であるならと思うと、ここで無視しては後悔しそうだ。」


僕たちの意見がまとまったのが分かるのか、霊体は頷くような仕草をすると浮遊しながら奥へと進んでいく。

慌ててマッピングをしながら後を追っていくと、途中で行き止まりの壁をすり抜け見失ってしまった。

すぐに偽装壁だと判断してトリスに壁を破壊してもらうと、霊は壁の先で僕らを待っていてくれた。

この行動をみるに、明らかに意思をもって行動していると確信できた。

ただ偽装壁の向こうは完全にゴブリンの領域だ。

このまま進んでいいものか不安がよぎる。


そのとき、僕の迷いを察知したアーシアさんが僕の目をまっすぐ見つめてくる。

「どうか、ここは私のわがままを通させてほしい。」

こんなお願いの仕方をされたら、僕には断りようもないのだ。

「わかりました。でも本当に危険と判断したら引き返しますよ。」

「わかった。そのときは素直に従おう。」


霊の後を追うように奥へ奥へと進んでいくけど、ゴブリンとの遭遇がないことを不思議に思い始めた。もしかしたら、この辺りは放棄されたエリアなのかもしれない。

緊張で神経がすり減り、時間感覚もおかしくなっていく。

疲れから思考が滞っていて気付かなかったけど、最後に曲がってから随分経つな…。


まっすぐ続く坑道のような通路を進みながら、僕は既視感のようなものを覚えていた。

こんなダンジョンの奥地に来たことなんてあるはずないのに…。

馬鹿な妄想だと切り捨てようとしたとき、僕の頭に1つの可能性が浮かんだ。

この感じ、やっぱり覚えがある。ここは、前世の僕が死ぬ前に彷徨った坑道じゃないのか?


そうだとしたら、この先にいるのは…。

どうか僕の勘違いであってくれと祈りながら進み続けたが、その祈りは見事に裏切られる。

先導していた霊は、行き止まりに取りつけられた金属製の扉の前で止まり、僕らを待っているようだった。


僕らをアラクネの巣に案内して、この霊はいったい何がしたいんだよ。

やっぱり、いいアンデットなんかいないんだよ…。

この先にはアラクネという危険な魔物がいることを説明して、みんなに引き返すよう促したいけど、それをするには転生とか信じてもらえなさそうな話をしないといけない…。

僕がどう説明したものか迷っていると、カリンさんが霊を見つめて険しい顔をした。


「この先に危険な魔物がいるそうです。その先へ進んで、哀れな同胞の魂を浄化してほしいと。」

「そんなに具体的に訴えてきているのか?」

「は、はい。」

「危険な魔物って、どんな奴にゃ?」

「えっと、蜘蛛の魔物だそうです。」

普通に霊と対話しているのも驚きだけど、その霊がアラクネの存在を僕たちに伝えようとしていることのほうが衝撃を受けた。

この霊は、僕たちを騙そうなんて思ってない。

だとしたら、『哀れな同胞の魂を浄化してほしい』という願いも本当なんだろうな。


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