第46話
正確な第一層の地図を作るという目的もあって、迷路は右手で壁に触れていれば最後は確実に出られるという前世の知識をもとに地道に探索を進めていった。
前にダンジョンに入った時よりゴブリンの遭遇率が高いような気がして、本当に大侵攻が近いのかもしれないと不安が募っていく。
それでも、カリンさんが加入したことで、戦闘は安定感がぐっと増したのを実感できているのはいい傾向ではある。
初めのうちは矢が敵に当たらないこともちょくちょくあったけど、今ではゴブリン相手ならほとんど命中するまでに上達している。
未来視を併用した場合の命中率は今のところ100%であり、末恐ろしいスキルだと思うけど、1回射るごとにMPを2消費しているらしいので、感覚を忘れないように1日に数回程度の使用に留めている状況だ。
ゴブリンの攻撃は、アーシアさんはほぼ確実に盾で弾いているし、ニーナもほとんど回避している。トリスは攻撃を受けることもあるけど、金属鎧のため当たっても無傷のことが多く、メルディのやることがないのが贅沢な悩みかな。
一日中歩き回っているので、結構疲れが溜まっていくため、3日ダンジョンに行ったら1日休むというサイクルが自然と定着した。
それもあって、トリスはたくさん火酒が飲めると3日目の機嫌がすこぶるいいんだよね。
一度だけ肝が冷えたのは、ゴブリンに挟撃されたときかな。
突き当たりで左右に通路が分かれる場所で、ゴブリン3体が左に逃げたのが見えたので追いかけたとき、通路の反対側にもゴブリンが3体潜んでいて見事に罠にかけられてしまった。
まぁ戦闘自体は、カリンさんの未来視併用射撃と僕の氷柱の魔法で接敵される前に2体を仕留め、メルディが盾で残る一体の攻撃を受けとめてくれたので、そこにカリンさんが弓を捨ててショートソードで斬りかかって事なきを得たけどね。
正直なところ、余裕で倒せていたから油断していたことが招いた失敗で、だいぶ反省することになったよ。
ゴブリンも知恵があるのだから、このくらいの罠は考慮するべきだったのに。
それからは警戒を一段高めて慎重に探索を進められるようになったので、無傷で終われたことを考えれば、いい経験になったとも言えるのかな。
探索を始めてから30日ほど経過すると、マップ作成もかなり進んできた。
入口から東と北はそんなにダンジョンも広がっていなくて、全て地図に書き表せたと思う。ただ、西方はどこまでも続いているのではと不安になるほど、延々と地図が拡張されていく。途中で偽装された壁も2カ所見つけたけど、危険を冒す必要もないと判断して地図に存在を書き込むだけにしておいた。
前回破壊した偽装壁の所も、それ以上は踏み込むのを止めておいた。
ゴブリンノーブルのような強敵に罠にかけられたらと思うと、今ではないよなと思えたし。
レベルのほうも順調に上がっていき、今ではアーシアさんがレベル9で、他のみんなもレベル8まで成長できた。
僕は『フォグ』という霧を範囲で展開する魔法と、『アシッド・レイン』という強い酸性の雨を降らせる範囲魔法、『サイレンス・フィールド』という無音の空間を作り出す魔法を覚えることができた。
メルディは『プロテクション』と『ホーリーウェポン』、『ホーリーライト』の3つの魔法を習得していた。
ホーリーライトはLED電球かと思うような強めの白い発光体を8時間ほど頭上に浮遊させる便利魔法で、ランタンがいらなくなったのはいい節約になっている。
灯りの魔法は魔法使いが覚えるものだと勝手に思っていたので、少しショックを受けたけど、光の範囲内ではアンデットモンスターが弱体化すると聞いて納得したよ。
意外だったのは、カリンさんがレベル5になったとき、『祝福』という魔法みたいなものを習得したことで、対象のSTRとDEXとAGIを引き上げるバフをかけられるようになった。
また、レベル8になったときには、『意思疎通(霊体)』というスキルを覚えた。
巫女という職業は謎が多すぎて分からないことだらけだけど、他の職業ができないことができるようで、今後の成長が楽しみではある。
前衛職は魔法を覚えないからMPの意味がないと思っていたら、ちゃんとMPを消費する技を覚えると聞いたときは驚いたよ。
今ではトリスが瞬発的にSTRを上げて攻撃する『パワーヒット』を使えるようになったし、ニーナは一定時間AGIを上げて素早く動けるようになる『ヘイスト』を使えるようになった。
アーシアさんは『シールドバッシュ』という盾で相手の体勢を崩してスタン効果を与える技を覚えた。これが強力で、硬直させた隙にトリスの攻撃を確実に当てたり、ニーナが急所を突き刺す連携ができるようになったのが心強い。
探索中に通路の壁に埋まる魔鉱石にトリスが気付くことも何度かあって、ピッケルで掘り出したりもした。地図の提供とゴブリン討伐、魔鉱石の換金と結構稼げているので、生活費以上に貯蓄も増えているのが嬉しい。
何かと順調に進んでいると思っていたとき、ダンジョン西方の奥地で久しぶりに霊体のアンデットに遭遇した。
半透明の体で浮遊する若い女性の霊は、過去に遭遇したアンデットのように憎しみに顔を歪めることなく、理知的な瞳でこちらを見据えていた。




